晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
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2017-01-01から1年間の記事一覧

『ソードアート・オンライン3 フェアリィ・ダンス』:川原 礫|仮想世界から生還しないアスナを探しに・・・。

ソードーアート・オンラインの第3巻です。副題は「フェアリィ・ダンス」。第2巻はアインクラッドにおける短編集でしたので、第1巻の続編です。第1巻は病院で目覚めたキリトがアスナを探すため、痩せ細った体を引き摺り歩き出すところで終了しました。続編…

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』:東野圭吾|過去と現在が繋がり奇蹟が起こる

ミステリー小説でなく、心温まる人間ドラマです。その言葉に尽きます。もちろん、謎はあります。その謎は解かなければならない謎でなく、謎のままで存在していることが望ましい。それを追及することは意味がない。大事なのは、謎が多くの人々の人生を動かし…

『町長選挙』:奥田英朗|三度登場!とんでも精神科医「伊良部一郎」

精神科医「伊良部一郎」シリーズの第3弾。さすがに三作目になると、伊良部のインパクトは一作目ほどはありません。短編集なので、長編のように複雑なストーリー展開ができません。簡潔な起承転結に落ち着かざるを得ない部分が出てきます。それを、伊良部一…

『日の名残り』:カズオ・イシグロ|理想の執事を求め続けた人生を振り返る

カズオ・イシグロ氏が、ノーベル賞を受賞したので読みました。恥ずかしながら、そういうことです。おそらくノーベル賞がなければ、読む機会はなかったと思います。 文章がとても美しい。と言っても原文は英語なので、日本語訳が素晴らしいということになるか…

『死神の精度』:伊坂幸太郎【感想】|俺が仕事をするといつも降るんだ

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「死神の精度」の感想です。 普通の人が考える死神は、死を運ぶ不吉な存在です。しかし、伊坂幸太郎が考える死神は、まるで会社員です。取り扱う商品が「死」であり人間と異質な存在として描かれていますが、死神としての…

『君の膵臓をたべたい』:住野よる【感想】|桜良の本心を知った時、彼の心を満たしたものは一体・・・

本屋大賞第2位。2017年8月時点で累計発行部数は200万部。インパクトのあるタイトル「君の膵臓をたべたい」。さらに映画化。気になっていた小説です。あまり詳しい内容は知らなかったのですが、ジャンルとしては恋愛青春小説なのかなと思っていました。 物語…

『十角館の殺人』:綾辻行人|新本格ブームを巻き起こした「館シリーズ」の第一作

本格的ミステリーの秀作です。孤島に閉じ込められた7人の人物が、順番に殺されていく。「犯人は誰なのか?」「次は誰が殺されるのか?」緊迫感のあるストーリーに一気読みしてしまいました。ただ、30年前に発表された作品です。それを理解した上で読む必…

『アルケミスト』:パウロ・コエーリョ|夢を追い求めた少年が手に入れたものとは・・・

タイトル「アルケミスト」とは、錬金術師のことです。主人公は錬金術師ではなく少年サンチャゴです。錬金術師は、彼を導く役割を担っています。少年サンチャゴが、夢を追い求め旅をする。一言で言えば、それだけの物語です。しかし、それを通して生きること…

『関ケ原』:司馬遼太郎|天下分け目の合戦はいかにして起きたのか

映画「関ケ原」を観た後に、原作の「関ケ原」も読んでみようと思いました。本格的な歴史物を読むのは久しぶりでしたが、思い切り引き込まれてしまいました。かなりの長編なのですが、息をつく暇がないという言葉がぴったりです。小説は秀吉の死が近づいた頃…

映画「オリエント急行殺人事件」を観た

アガサ・クリスティの名作「オリエント急行殺人事件」を観てきました。 実は、私は原作を読んでいません。過去に映像化された作品も見ていません。なので、犯人はもちろん知りませんし、ストーリーもあまり知りません。 その状況で観に行ったことを前提に感…

『スロウハイツの神様』:辻村深月|最終章まで読み終えた時、感動が心に溢れる

最後まで読み終えた時、驚くほどの感動を心に刻まれました。この小説においては、物語が面白いとか上手に組み立てられているとかを論じるのは、全く意味のないことだと感じさせられます。 感動を与える。そのために書かれた小説です。 その感動は、最終章で…

定期「2017年11月(霜月)」の読書本

読書の秋も終わり、寒さが日ごとに厳しくなる11月(霜月)が終わりました。11月の読書本は、12冊でした。 11月の読書本に、自分勝手なおすすめ度を付けてみました。あくまで、個人的感想です。本の面白さは、人それぞれですので、参考程度に見てください。 …

『ソードアート・オンライン2 アインクラッド』:川原 礫|キリトは何故、ソロで挑むのか

「ソードアート・オンライン」第2巻は、4つの短編エピソードで構成されています。第1巻でアインクラッドはゲームクリアされ、一応の終結を迎えています。そこでこのような形になったのでしょう。本筋の続編は、第3巻以降です。 第1巻は74層からゲームク…

『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』:川原 礫|これは、ゲームであっても遊びではない

5年ぶりくらいの再読です。初めて読んだライトノベルが、「ソードアート・オンライン」です。これを読んで、ライトノベルを読み始めるようになったと言っても過言ではありません。小説より先にTVアニメを見たのがきっかけで「ソードアート・オンライン」…

『グラスホッパー』:伊坂幸太郎【感想】|死んでるみたいに生きたくない

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「グラスホッパー」の感想です。 復讐と非合法組織と殺し屋の思惑が交錯するストーリーです。前回読んだ「チルドレン」の心温まる物語から一転、憎悪と悪意が渦巻く重苦しい話です。 小説に描かれている組織、職業(殺し…

『利休にたずねよ』:山本兼一|茶人「利休」だけでなく、人間としての「利休」が描かれる

第140回直木賞受賞作。戦国時代から豊臣秀吉の天下統一にかけての小説や映画・ドラマでは、必ずと言っていいほど千利休は登場します。利休は、秀吉を描く上で重要な人物です。もちろん、秀吉以外にも当時の武将や商人など多くの人々に対しても影響力を持った…

2005年本屋大賞の受賞作

2004年10月〜2005年4月にかけて実施された第3回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『夜のピクニック』恩田 陸 【得点:374点】 2位 『明日の記憶』荻原 浩 【得点:302点】 3位 『家守綺譚』梨木 香歩 【得点:274点】 4位 『袋小路の男』絲山 秋子 【得点…

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』:七月隆文|タイトルの意味が分かる時、物語が違って見える

映画化された恋愛小説という知識だけで、詳しい内容は知らずに読み始めました。 前半部分は、大学生の主人公「南山高寿」と、同い年の「福寿愛美」の甘くてベタベタな恋愛模様が描かれており、いかにも恋愛小説といった趣です。しかし、中盤に彼女の秘密が明…

『羊をめぐる冒険』:村上春樹【感想】|鼠三部作が、ここに終結する

ご覧いただきありがとうございます。今回は、村上春樹氏の「羊をめぐる冒険」の読書感想です。 鼠三部作の3作目です。この後に「ダンス・ダンス・ダンス」という続編が刊行されます。それが、どのような位置づけになるのか別にして、鼠三部作としては完結と…

『チルドレン』:伊坂幸太郎【感想】|俺たちは奇跡を起こすんだ

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「チルドレン」の感想です。 各話は独立した物語として完結しています。しかし、どの話にも登場する人物が一人います。彼は、各話において主人公ではないのですが最も重要な人物です。 それが「陣内」です。 彼が、大学生…

『稼ぐが勝ち』:堀江貴文

堀江貴文氏がライブドア代表取締役で、大阪近鉄バッファローズを買収しようとしていた頃に出版された本です。当時、彼は時代の寵児であるとともに『ホリエモン=金』というイメージが拭えない時期でもあったように思います。成功者でありながらも、生意気で…

『私の消滅』:中村文則|人間の本質とは記憶の積み重ねなのか

文学的ミステリーと表現すればいいのでしょうか。一度読んだだけでは、よく理解できません。著者の表現したいことが何なのかということだけでなく、ミステリーとしてのストーリーについても同様です。 混乱する要因は、誰の視点で物語が語られているのか分か…

『マルドゥック・スクランブル 排気〔完全版〕』:冲方 丁|結末を迎えた時、バロットとウフコックに何が残るのか

「燃焼」は、カジノでの負けられない闘いの途中で終わっています。「排気」は、その闘いの続きから始まります。「排気」は前半部分が「カジノ」での闘い。後半部分で最終局面を迎えます。「圧縮」「燃焼」「排気」と続いた物語が、どのような結末を迎えるの…

『マルドゥック・スクランブル 燃焼〔完全版〕』:冲方 丁|楽園で、バロットは何を得たのか

「圧縮」では、視覚的に派手な戦闘や銃撃が物語の主軸を占めていました。もちろん、その対照として登場人物の内面の動きを際立たせることも主軸です。その両軸をもって、物語を組み立てていました。「燃焼」においては、大きくふたつの構成で物語が描かれて…

『マルドゥック・スクランブル 圧縮〔完全版〕』:冲方 丁|何故、彼女は死ななければならなかったのか

冲方 丁氏の作品で最初に思い浮かぶのが、この「マルドゥック・スクランブル」です。サイバーパンク系のSF小説として支持を集め、映像化・漫画化など小説以外のメディアでも発表されています。サイバーパンク系と言わせていただいたのは、私がサイバーパン…

『アヒルと鴨のコインロッカー』:伊坂幸太郎【感想】|一緒に本屋を襲わないか

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「アヒルと鴨のコインロッカー」の感想です。 複数の違うストーリーを絡ませながら伏線を張り、それらを結末で一箇所に収束させます。全く関係のないように思える出来事が実は繋がっており、全てが偶然でなく必然で引き起…

『また、同じ夢を見ていた』:住野よる【感想】|心が満たされて温かい気持ちが溢れだす

読後に感じるのは、「心が何かに満たされて温かい気持ちになる」ということです。主人公の小学生・小柳奈ノ花が、授業の宿題である「幸せと何か」を考える物語です。 「また、同じ夢を見ていた」の内容 「また、同じ夢を見ていた」の感想 奈ノ花 奈ノ花の口…

映画「ブレードランナー2049」を観た

1982年に公開された前作「ブレードランナー」から35年の時を経て、公開された「ブレードランナー2049」です。前作は、SF映画の未来に多大な影響を与えた名作として語り継がれるほどです。その続編が制作されるとなれば、当然期待は高まります。しかもリッ…

『銀翼のイカロス』:池井戸 潤|シリーズ史上、最大最強の敵に挑む

「半沢直樹」シリーズの第4作目です。今までのシリーズの中では一番スケールが大きく、手に汗握る展開に引き込まれました。前作の「ロスジェネの逆襲」では、バブル世代の半沢とロスジェネ世代の森山の両方の活躍を描いていました。そのため半沢の存在が薄…

『ロスジェネの逆襲』:池井戸 潤|失われた世代とバブル世代が世代間の確執を乗り越える

「半沢直樹」シリーズの第3弾です。前作「俺たち花のバブル組」の最後で出向させられた半沢の活躍を描いた作品です。3作目になると、どうしてもマンネリ化を隠し切れない感じがします。この小説の基本的なスタンスは「勧善懲悪」です。敵や戦いの舞台が変…