晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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2017-01-01から1年間の記事一覧

『ノルウェイの森』:村上春樹【感想】|多くのものを喪失しようとも生き続けなければならない

「ノルウェイの森」は、過去に一度読んでいます。高校生か大学生くらいの時です。内容はあまり覚えていませんでしたが、性的描写が際立つ恋愛小説だという認識だったように記憶しています。今回、数十年ぶりに読み返しました。 「ノルウェイの森」の内容 「…

『終の住処』:磯﨑憲一郎|言いたいことは何だったのか。よく分からない。

第141回芥川賞受賞作です。30歳を過ぎて結婚した夫婦の20年間を描いた作品。20年間という長い期間を描きながら、あまり時間の経過を感じませんでした。何だか時間が一定のスピードで進んでいないと感じる小説です。 「終の住処」の内容 「終の住処」の感想 …

映画「BLAME!(ブラム)」を観た

少し前の話ですが、映画「BLAME!(ブラム)」を観ました。私は「BLAME!」というマンガがあることも知らなかったので、全くの白紙の状態で映画を観ましたが、面白かった。映画館で観て良かった。というのが率直な感想です。 映画を観た後、原作を読み、ネット…

『下町ロケット』:池井戸 潤|最後まで諦めなければ夢は叶う

読み始めると止まらない。一気読みでした。ドラマを先に見ていたので、ストーリーは分かっていました。それでも面白い。ドラマは、ほぼ原作に忠実に再現されていたように感じます。 同じ池井戸潤の作品でも、半沢直樹と比べられることが多いです。半沢直樹の…

『聖の青春』:大崎善生|村山聖九段の壮絶な人生が余すところなく描かれる

知り合いに薦められて「聖の青春」を読みました。私は、村山聖九段(九段は追贈)という棋士を知りませんでした。村山九段は、私よりも4歳年上です。彼が29歳で死去した時に、私は25歳。村山九段が将棋界で活躍していた当時、私は十分に彼の存在を知る…

『影裏』:沼田真佑|色彩豊かな自然が現実の切なさを際立たせる

第157回芥川賞受賞作です。主人公である今野の日常を、時間の経過とともに淡々と綴っていく。そんな小説です。淡々と語っているに過ぎないような小説であったとしても、著者には明確な意図があって作られた小説であることには間違いありません。ただ、多くの…

『ちょっと今から仕事やめてくる』:北川恵海【感想】|追い詰められた時、逃げると言う選択肢を選べるだろうか

ブラック企業に勤める青山 隆が主人公。タイトルが「ちょっと今から仕事やめてくる」。タイトル通りの内容で、特に意外性もなく、淡々と読み進み、あっという間に読み終わってしまいました。テーマは、とても深いです。社会問題となっているブラック企業で働…

2004年本屋大賞受賞作

2003年10月〜2004年4月にかけて実施された第1回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『博士の愛した数式』小川 洋子 【得点:202点】 2位 『クライマーズ・ハイ』横山 秀夫 【得点:148点】 3位 『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂 幸太郎 【得点:111点】 …

『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』

宇宙に興味を持っている人・持っていた人は、結構いるはずです。私も子供の頃に夜空を見上げ、宇宙の壮大さに心を奪われました。宇宙に関わる仕事にも多種多様なものがあります。物理的見地から宇宙を研究する科学者。天文学者。その中でも、実際に宇宙に行…

『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』:堀江貴文

堀江貴文さんの本を読むのは初めてです。私は、堀江さんと同い年です。彼が球団買収やニッポン放送買収、衆議院総選挙など世間を騒がせていた当時、とても同い年だとは思えませんでした。賛否ありますが、バイタリティ溢れる人で時代の寵児としてマスコミを…

『空の中』:有川 浩|与えられる愛情で、頑なな心が溶けていく

「塩の街」「海の底」と並び、自衛隊三部作の航空自衛隊編「空の中」です。三部作の中では、この「空の中」が一番読み応えがありました。ページ数からも分かる通り、一番ボリュームがあったということもあります。 「塩の街」よりは多少ましですが、非現実的…

『異類婚姻譚』:本谷有希子|オカルトのような結末に、理解が追い付かない

主人公の「サンちゃん(妻)」が、夫とそっくりの顔になっていくところから始まります。夫婦間の関係性を描いた作品なのかな、と思いつつ読み進めていきました。結末に至ると「もしかしてオカルト?」なのかな、と感じます。読後は、ボンヤリとした気持ち悪…

『1973年のピンボール』:村上春樹【感想】|僕は探す。3フリッパーのスペースシップを。

前作「風の歌を聴け」の続編です。この後に発表される「羊をめぐる冒険」と併せて鼠3部作とも呼ばれています。前作は、1970年の夏が舞台でした。「1973年のピンボール」は、タイトルどおり1973年の9月から11月までの物語です。 登場人物は「僕」と「鼠」の…

『仏陀を歩く 誕生から涅槃への道』:白石凌海|仏陀の足跡を辿り、仏陀の生涯を知る

以前、キリスト教の書籍の感想を書きました。そこで日本人に一番馴染みのある仏教についても知ろうと思い、この書籍を手に取りました。 日本では、仏教と一口に言っても多くの宗派があります。しかし、その教えを切り開いたのは仏陀です。仏陀と書きましたが…

『重力ピエロ』伊坂幸太郎【感想】|本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだ

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「重力ピエロ」の感想です。 読み終えた時に涙が出そうになりました。伊坂幸太郎の作品は面白いという印象がありましたが、この作品を読んで面白いだけでなくこんなにも感動的な作品もあるんだと思い知らされました。 と…

『告白』:湊かなえ|一体、誰が救われたのか。そこに救いはあったのだろうか?

ひとつの事件を、5人の視点から描く小説です。この手法は、宮部みゆき氏の「模倣犯」を思い出させます。「模倣犯」と同じく、事件の概要と犯人は最初に語られます。犯人捜しのミステリーではなく、復讐劇とそれに関わった人々の心象の物語です。被害者と加…

映画「三度目の殺人」を観た

福山雅治・役所広司のW主演。監督は「そして父になる」で福山雅治と組んだ是枝裕和監督。日本のみならず世界でも評価されている是枝監督作品ということで、期待して観に行きました。役所広司、福山雅治はもとより、出演者全ての圧倒的な演技力に、久しぶりに…

『海の底』:有川 浩|潜水艦の中で交錯する二人の気持ちがもどかしい

「海の底」の内容 「海の底」の感想 非現実の中の現実感 危機管理能力 閉ざされた空間 個性溢れる人物たち 終わりに 「海の底」の内容 4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わってい…

『塩の街』:有川 浩|塩害が愛する二人を引き離していく

有川浩氏のデビュー作で第10回電撃小説大賞“大賞”受賞作です。受賞作は文庫で刊行されましたが、その後、ハードカバーの単行本で再刊行されています。 受賞から文庫、単行本に至る変遷は、単行本のあとがきに著者が書き記しています。私は単行本を読みました…

映画「関ケ原」を観た

私は、司馬遼太郎氏の書いた「関ケ原」を読んでいません。なので原作との比較は出来ませんが、映画の「関ケ原」を観てどうだったか。その感想を記します。 実はかなり期待して見に行きました。予告編もかなり迫力でしたし、岡田准一主演 の作品は「永遠の0…

『風の歌を聴け』:村上春樹|「僕」と「鼠」の物語が始まる

村上春樹氏が、1979年に発表したデビュー作です。村上氏は独特の感性や文章表現で、他の作家とは一線を画しています。その感性が、このデビュー作において既に確立されているように感じました。ただ、著者は、「自身が未熟な時代の作品」と評価しているよう…

『死んでいない者』:滝口悠生|通夜の一晩が永遠のようでありながらも淡々と過ぎ去っていく。

第154回芥川賞受賞作です。「死んでいない 者」は、生きている人のことを言うのだろうか。それなら、この小説の中では通夜に集まった人々のことになります。「死んで いない者」と読むと、85歳で大往生を遂げた故人ということになります。 おそらく両方の意…

『小太郎の左腕』:和田 竜|雑賀衆の真髄が戦の趨勢を決する

1556年というと、織田信長が今川義元を桶狭間の合戦で破る4年前です。戦国時代初期の設定です。舞台は戦国時代ですが、物語自体はフィクションなので、歴史上の戦国武将が登場するわけではありません。しかし、まるで史実に基づいているかのような錯覚に陥…

『Op.ローズダスト』:福井晴敏|臨海副都心で交錯する彼らの宿命

福井晴敏は好きな作家ですし、文庫3冊に及ぶ長編なので期待して読み始めました。読み終わった感想は「とにかく長かった」(どちらかと言うとあまりいい意味ではなく)というものでした。超長編を最後まで読み込ませるには、余程の力量が必要だと実感しまし…

『空中ブランコ』:奥田英朗|あの伊良部一郎が再び!相変わらずのムチャクチャ精神科医

伊良部一郎シリーズの第2弾です。前作の「イン・ザ・プール」は、かなり笑わせていただきました。この「空中ブランコ」も前作に負けず面白かった。伊良部一郎は、前作よりもかなり活動的になっていました。今回は診察室から飛び出して、周りを振り回します…

『スクラップ・アンド・ビルド』:羽田圭介|コミカルに描いているが老人介護を真剣に考えざるを得なくなる

第153回芥川賞受賞作です。又吉直樹氏「火花」と同時受賞により、ちょっと影が薄くなってしまった気がします。 「超高齢化社会」と「老人介護」という現代社会の喫緊の課題を扱った小説でありながら、あまり悲壮感漂う作品ではありません。どちらかと言えば…

『キリスト教入門』:山我哲雄|キリスト教の歴史がここにある

イスラム過激派によるテロの脅威が全世界で広がっています。一般のイスラム教徒にとってみればイスラムという名を利用した単なるテロリストであり、イスラム教徒に対する偏見に繋がることを懸念しているようです。テロのニュースやイスラムの世界については…

『ジョーカー・ゲーム』:柳 広司|スパイの本質は「死ぬな、殺すな」

スパイといってまず思い浮かぶのが、007の「ジェームズ・ボンド」とミッション・インポッシブルの「イーサン・ハント」です。どちらもフィクションの話ですが、世界で最も有名なスパイの内の二人でしょう。アクション映画なのでエンターテイメント性が高…

『星を継ぐもの』:ジェイムス・P・ホーガン|月面から現れた謎が人類の起源に迫る壮大なミステリー

30年以上前に発表された作品ですが、現在に至っても全く色褪せることのないハードSFの傑作です。謎の解明が物語の主眼なので、ミステリー・ハードSFと言った方が適切かもしれません。その謎が、とてつもなく壮大です。 ほとんど現代人と同じ生物であるに…

『しんせかい』:山下澄人|淡々と描かれる日記のような小説。芥川賞の理由はどこに?

第156回芥川賞受賞作。著者である山下澄人氏は、倉本 聰氏主宰の富良野塾の第2期生です。「しんせかい」は、山下澄人氏が富良野塾第2期生として過ごした1年間を記した自伝的小説と位置付けられるでしょう。 「しんせかい」の内容 「しんせかい」の感想 小…