晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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2018-01-01から1年間の記事一覧

『夜は短し歩けよ乙女』:森見登美彦【感想】|現実と非現実的の境目が曖昧になる

京都を舞台にした恋愛小説かと思えば、ファンタジー要素を随所に散りばめた不思議な小説です。現実的な出来事と非現実的な出来事が混然と混じり合い、何とも言えない読み心地を感じさせます。クラブの後輩に恋をしている大学生の物語ですが、彼の恋心を弄ぶ…

『ぼくのメジャースプーン』:辻村深月【感想】|復讐は誰のため?

「あることをしなければ、あることが起きる」 物語の鍵となるのが「条件ゲーム提示能力」。この能力が、どれほど恐ろしい能力なのか。一見するとよく分かりません。冷静に考えると、人の心に直接影響を及ぼすのはとても危険です。読み進めていくと、徐々に気…

『きみにしか聞こえない』:乙一【感想】|彼女たちの苦しみは救われたのだろうか

乙一作品を読むのは、本作が初めてです。表題作を含む3篇の短編です。短編の中でも、かなり短い部類に入ると思います。登場人物は少なく、それほど複雑なストーリーでもありません。それぞれの短編に関係性がある訳でもないので、読み応えはそれほどないと…

定期「2018年11月(霜月)」の読書本

そろそろコートが必要になってきた11月。日が一層短くなり、寒さが日に日に身に沁みます。11月の読書本は7冊でした。あまり読めなかった印象です。11月のおすすめ度合いです。 おすすめ度★★★★★ 蜜蜂と遠雷 恩田 陸 おすすめ度★★★★ 夜の国のクーパー 伊坂幸…

『村上海賊の娘』:和田 竜【感想】|武士とは違う海賊の生き様

第11回本屋大賞受賞作。和田 竜の小説は「忍びの国」「小太郎の左腕」を読みました。それらに比べ、村上海賊の娘は超長編です。単行本で上下巻、文庫だと4巻に及びます。超長編ながら、気が付けば一気読みでした。 戦国時代の歴史小説だと、主人公は有名な…

『凍りのくじら』:辻村深月【感想】|「少し・不思議」が彼女を変えていく

藤子・F・不二雄作品に対する敬愛が伝わります。本作では、「ドラえもん」に対する著者の思い入れが、随所に散らばっています。主人公の芦沢理帆子が抱く藤子・F・不二雄への思いは、著者の思いを代弁しているのかもしれません。 ドラえもんの物語には、人生…

『フーガはユーガ』:伊坂幸太郎【感想】|だけど僕たちは、手強い

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「フーガはユーガ」の感想です。 伊坂幸太郎の1年ぶりの新作長編。私はまだ、彼の小説を全て読んでいません。未読の作品があるにもかかわらず、新作が出ると嬉しい。出版順に読んでいるのですが、新作ということで我慢で…

2016年本屋大賞の受賞作

2015年11月〜2016年4月にかけて実施された第13回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『羊と鋼の森』宮下奈都 【得点:372.0点】 2位 『君の膵臓をたべたい』住野よる 【得点:327.5点】 3位 『世界の果てのこどもたち』中脇初枝 【得点:274.0点】 4位 『永…

『のぼうの城』:和田 竜【感想】|日本三大水攻めに耐えた城

小説より前に映画を観ています。鑑賞したのは数年前ですが、小説を読み進めると映画の記憶も蘇ってきました。映画の記憶と小説が微妙に違うのは原作からアレンジされたのか、私の記憶違いなのか。ただ、小説にかなり忠実に製作されていたのだと感じます。も…

『夜の国のクーパー』:伊坂幸太郎【感想】|これは猫と戦争、そしてなにより、世界の秘密のおはなし

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「夜の国のクーパー」の感想です。 猫が言葉を話す。物語の始まりから非現実的です。空想の国を舞台にしたファンタジー的な物語と思いながら読み始めました。舞台も現実には存在しない「この国」と「鉄国」です。しかし、…

『PK』:伊坂幸太郎【感想】|時を超えて、勇気は伝染する。

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「PK」の感想です。 「PK」「超人」「密使」の3つの中編で構成されています。読み進めるほど時間軸や各話の関係性に混乱し、二度読みしました。二度読みしても全ての繋がりを理解し納得できたかと言うと、疑問点も多…

『本日は、お日柄もよく』:原田マハ【感想】|職業小説でなく、お仕事「サクセス」小説

以前から気になっていた1冊です。タイトルと装丁が印象深く、書店で見かけてから頭の片隅に引っかかっていました。スピーチライターという職業を焦点を当て、そこに関わる様々な人生を描いた作品です。 職業としてスピーチライターがあることは知っています…

定期「2018年10月(神無月)」の読書本

10月に入り、朝晩が肌寒くなってきました。秋の夜長、読書の季節ですがあまり読めていません。10月に読んだ本は8冊でした。それでは10月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ マリアビートル 伊坂幸太郎 おすすめ度★★★★ 一瞬の風になれ 佐藤多佳子 …

『蜜蜂と遠雷』:恩田陸【感想】|文字から音楽が溢れ出る

史上初の直木賞・本屋大賞のW受賞作。ピアノコンクールの物語なので、引き込まれるかどうか疑問を感じながら読み始めました。何故なら、私はクラシックが詳しくありません。正直、ほぼ知らないと言っていい。曲のタイトルを聞いてもイメージできない。単行…

『みかづき』:森 絵都【感想】|学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になる

第14回本屋大賞第2位受賞作。単行本で460頁超の長編作品です。著者の作品は、「カラフル」と「風に舞いあがるビニールシート」の2作品しか読んだことがありません。「カラフル」は中高生向けですし、「風に舞いあがるビニールシート」は短編集なので、読み…

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』:リリー・フランキー【感想】|大切な人を失うことは誰もが経験する

第3回本屋大賞。リリー・フランキーが、母親との半生を描いた自伝的小説です。ドラマ・映画・舞台と映像化されています。私は映像化された作品を見ていませんし、小説も初読です。小説の帯には、福山雅治・みうらじゅんなどの著名人が感想を寄せています。…

2015年本屋大賞の受賞作

2014年11月〜2015年4月にかけて実施された第12回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『鹿の王』上橋菜穂子 【得点:383.0点】 2位 『サラバ!』西加奈子 【得点:310.0点】 3位 『ハケンアニメ!』辻村深月 【得点:309.5点】 4位 『本屋さんのダイアナ』柚…

映画「虐殺器官」を観た

こんにちは。本日は、伊藤計劃氏原作小説の映画「虐殺器官」の感想です。 「虐殺器官」は、彼の名を一気にメジャーにした作品です。伊藤計劃のオリジナル長編は3編しかありません。「虐殺器官」「ハーモニー」「屍者の帝国」です。「屍者の帝国」は執筆中に…

『よるのばけもの』:住野よる【感想】|昼の俺と夜の僕。本当のばけものはどっちなのだろうか。

主人公の安達は、夜になると8つの眼・足が6本・4つの尾がある真っ黒なばけものになる。物語としては完全なフィクションであり、非現実的な設定が前提になっています。夜の学校に忍び込む同級生の矢野さつきについても、どうやって忍び込んでいるのか明確…

『消滅』:恩田 陸【感想】|閉じ込められた空港。果たしてテロリストは?

単行本500ページ超に及ぶ長編です。入国を拒否された11人が、閉じ込められた日本の国際空港の別室で繰り広げるテロリスト探し。クローズド・サークルを舞台にしたミステリーです。11人の中に高度なヒューマノイドロボットのキャスリンが登場し、SF的要素も加…

『一瞬の風になれ』:佐藤多佳子【感想】|仲間を信じて、バトンをつなぐ

第4回本屋大賞受賞作。中学校までサッカーをしていた「神谷新二」が主人公。彼の一人称で描かれる春野台高校陸上部が舞台の青春物語です。 序章は、新二と彼の友人「一ノ瀬連」の生い立ちと、彼らの関係性の紹介のための章です。物語は、高校一年生から三年…

『ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ』:川原 礫【感想】|ユウキとの邂逅がアスナの現実を変える

前作「ファントム・バレット」の数週間後。アスナを主人公にしたスピンオフ作品です。前作はキリトとシノンの物語であったことから、アスナを始め旧アインクラッドの面々の影は薄かった。全く出番がなかった訳ではないですが。そもそも物語の視点がキリト以…

定期「2018年9月(長月)」の読書本

9月に入り、日が短くなってきた実感があります。台風が猛威を振るい多くの被害が出ました。 9月に読んだ本は7冊でした。それでは9月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ かがみの孤城 辻村深月 横道世之介 吉田修一 おすすめ度★★★★ 氷菓 米澤穂…

『容疑者Xの献身』:東野圭吾【感想】|論理と感情。どちらに従うことが正しいのか。

第134回直木賞受賞作。ガリレオシリーズの第三作目で初の長編です。「探偵ガリレオ」「予知夢」は短編集なので、トリックに様々な仕掛けが施されていますが流れは一直線です。登場人物たちも立ち位置が明確で、あまり予想外の動きをしません。トリックは予想…

『マリアビートル』:伊坂幸太郎【感想】|物騒な奴らが再びやって来た!

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「マリアビートル」の感想です。 位置付けとしては「グラスホッパー」の続編です。続編と言っても、直接的なストーリーの繋がりはあまりありません。グラスホッパーで登場した人物が数人登場していますが、前作を読んでい…

『Twelve Y.O.』:福井晴敏【感想】|日本は国家として大人になれないのか

福井晴敏のデビュー作。本作より先に「川の深さは」を執筆しています。ただ発刊されたのは本作が先なので、世間的なデビュー作ということになります。次作「亡国のイージス」も含めたところだと、発刊順は「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」「川の深さは」。…

2014年本屋大賞の受賞作

2013年11月〜2014年4月にかけて実施された第11回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『村上海賊の娘』和田竜 【得点:366.5点】 2位 『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉 【得点:332.0点】 3位 『島はぼくらと』辻村深月 【得点:299.0点】 4位 『さような…

『コンビニ人間』:村田沙耶香【感想】|自分と社会にとって「普通」とは何か?

第155回芥川賞受賞作。日常生活のどの場面でも「普通」は存在します。「普通」の圏内にいる人々にとっては意識しないことでも、そこからはみ出した人にとっては意識せざるを得ません。無言の圧力に止まらず、面と向かって「普通」を強制する。本作を読めば、…

『君にさよならを言わない2』:七月隆文【感想】|幽霊たちとの出会いが切なさと温かさを溢れさせる

「君にさよならを言わない」の続編。続編なので登場人物や設定は引き継いでいますが、短編集なので前作を読んでいないと理解できないということはありません。ただ、前作を読んでいるのといないのとでは、受け止め方が変わってくるはずです。前作を未読の方…

『愚者のエンドロール』:米澤穂信【感想】|「古典部」がビデオ映画の謎に迫る

「古典部」シリーズの第二弾。前作「氷菓」は高校1年の入学から夏休みくらい(最終章は夏休み後、文化祭直前になってますが)までです。本作は、夏休みの終盤を舞台に描かれています。「古典部」シリーズは、高校生の学内ミステリー小説です。「愚者のエンド…