晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
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2018-01-01から1年間の記事一覧

『氷菓』:米澤穂信【感想】|古典部シリーズの原点。登場人物の個性が溢れ出す

「古典部」シリーズの第一作。高校一年の折木奉太郎を主人公にした学園推理小説です。当初、角川スニーカー文庫から刊行されていますので、ライトノベル系のミステリー小説という位置付けなのでしょう。推理小説と言っても、高校が舞台なので人が死ぬことは…

『君にさよならを言わない』:七月隆文【感想】|願いを叶えた時、切なさとともに暖かい感情が心を満たす

「ぼくには、幽霊が視える。」 心残りのある幽霊の願いを叶え、成仏させる。物語の設定としては有りがちです。ありふれた設定で、オリジナリティ溢れたストーリーを作り出すのは難しい。本作もストーリーの組み立て自体に、それほど目新しいものはありません…

2013年本屋大賞の受賞作

2012年11月〜2013年4月にかけて実施された第10回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『海賊とよばれた男』百田尚樹 【得点:278.0点】 2位 『64』横山秀夫 【得点:266.0点】 3位 『楽園のカンヴァス』原田マハ 【得点:238.5点】 4位 『きみはいい子』中…

定期「2018年8月(葉月)」の読書本

8月も後半になると、朝晩は少し暑さも和らいだ気もします。昼間は相変わらずの暑さでしたが。台風などの自然災害も平年よりも多い印象でした。 8月に読んだ本は8冊でした。それでは8月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ ジェノサイド 高野和明…

『横道世之介』:吉田修一【感想】|過ぎ去った大学生活をふと思い出す。そこにあるものは・・・

読みやすい文章に、軽快でテンポの良いストーリー展開。笑えるシーンが多くありながら、最後には心に響くエンディングが用意されています。主人公「世之介」は、取り立てて特徴のない大学生です。周りに流され、自分の意見を押し通すほど強気な部分はありま…

『崩れる脳を抱きしめて』:知念実希人【感想】|彼女と一緒に過ごした時間は幻だったのか

2018年本屋大賞第8位の作品です。医療現場を舞台にしたミステリー作品。現役医師の著者だからこそ描けると言っても過言ではありません。また、医療現場だけで物語が完結する訳ではありません。ミステリーの主軸は病院内から、病院外へと移っていきます。 恋…

『かがみの孤城』:辻村深月【感想】|居場所はひとつではない。どこにでも・・・

2018年本屋大賞受賞作です。 「かがみの孤城」は本屋大賞を受賞し、様々なメディアで高い評価を受けています。もともと彼女の作品は注目されますし、その分、世間の評価のハードルは高くなります。そのハードルの高さを一気に飛び越えるほどの素晴らしい作品…

『銀河鉄道の父』:門井慶喜【感想】|父でありすぎる政次郎と息子でありすぎる賢治

宮沢賢治の著作で思い浮かぶのは、「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「雨ニモマケズ」と言ったところです。「注文の多い料理店」は学校の教科書で読んだ記憶があります。タイトル「銀河鉄道の父」から想像していたのは、宮沢賢治の伝記です。確かに彼の…

『余命10年』:小坂流加【感想】|死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯、生きてみるよ

こんにちは。本日は、小坂流加さんの「余命10年」の感想です。 医者から余命を宣告されたら、どうなるだろうか。自分に置き換えてみても実感できません。生まれたからには、誰にでも等しく訪れるのが「死」です。誰も逃れることはできません。 私たちはいず…

『バイバイ、ブラックバード』:伊坂幸太郎【感想】|おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「バイバイ、ブラックバード」の感想です。 6話から成る連作短編集です。5人の女性と付き合っていた主人公「星野一彦」が、ある事情から、その女性たちに別れを告げに回ります。太宰治の「グッド・バイ」の内容をオマー…

『暗幕のゲルニカ』:原田マハ【感想】|ゲルニカに込めたピカソの思い

原田マハの小説を読むのは、「たゆたえども沈まず」に続いて2作品目です。私は美術史に詳しくありません。アートに対する造詣も深くありません。ピカソの知識も教科書レベルです。それでも「ゲルニカ」は知っていますし、彼が美術界に大きな影響を与えたこ…

『ジェノサイド』:高野和明【感想】|未知の存在が表れた時、人類は果たして。

読み始めたら止まらないくらい、面白く読み応えがある作品です。出来の良いハリウッド映画を観ているようです。もっと言えば、それ以上の奥行きがあります。小説なので視覚的な迫力はありません。その代わり、文章を読んで想像する世界は限りなく広がります…

『夜行』:森見登美彦【感想】|彼女はまだ、あの夜の中にいる

こんにちは。本日は、2017年本屋大賞8位、森見登美彦氏の「夜行」の感想です。 ファンタジーの要素を軸にしていますが、ホラーに近い部分もあります。単行本の表紙からは想像出来ない怖さを含んだ小説です。徐々に空気が重くなり、圧迫されていくような息苦…

定期「2018年7月(文月)」の読書本

暑さが尋常じゃなかった7月。仕事や外出から帰ると、ぐったりと疲れ切ってしまいます。それでもクーラーを効かした部屋にしばらくいると、本を読んでしまいます。7月に読んだ本は、9冊でした。それでは7月の読書本のおすすめを。 おすすめ度★★★★★ たゆた…

『ダンス・ダンス・ダンス』:村上春樹【感想】|喪失の物語が向かう先は・・・

「羊を巡る冒険」から四年後の「僕」の物語。「風の歌を聴け」から始まり「1973年のピンボール」、「羊を巡る冒険」を三部作と言うなら、「ダンス・ダンス・ダンス」の位置付けは難しい。四部作としてカウントすべきなのでしょうか。ただ、鼠を付けると「鼠…

2012年本屋大賞の受賞作

2011年11月〜2012年4月にかけて実施された第9回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『舟を編む』三浦しをん 【得点:510.0点】 2位 『ジェノサイド』高野和明 【得点:355.5点】 3位 『ピエタ』大島真寿美 【得点:324.0点】 4位 『くちびるに歌を』中田永…

『教養としての宗教入門』:中村圭志

私は、普段、積極的に宗教に関わっている訳ではありません。ただ、葬式や法事になればお寺にお世話になりますし、正月には神社に初詣にも行きます。取り立てて深い信仰心はありませんが、宗教と無関係に生きていくことは難しい。そう考えると、少なくとも身…

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』:辻村深月|チエミとみずほは救われたのか

主人公は、幼馴染の神宮司みずほと望月チエミ。この二人を軸に、母娘の関係・女友達の関係を生々しく重苦しく描いています。30歳のみずほとチエミが感じる感情に共感できるかどうか。彼女たちが歩んできた今までの人生に共感できるかどうか。また、登場する…

『たゆたえども沈まず』:原田マハ|フィンセントとテオ。離れられない関係だからこそ・・・

画家「フィンセント・ファン・ゴッホ」の物語。2018年本屋大賞の第4位に輝いています。フィンセントの物語ですが、彼の視点で彼の人生が描かれている訳ではありません。フィンセントの弟「テオドルス・ファン・ゴッホ」とパリ在住の美術商「加納重吉」の視…

映画「空飛ぶタイヤ」を観た

池井戸潤作品は数多く映像化されていますが、映画化は初めてのこと。意外な気もします。 原作の空飛ぶタイヤは、結構な長編です。登場人物も多いし、人間関係も状況も複雑に進展していきます。それを2時間という枠内で、どれほど表現できるのか。原作を読ん…

『池上彰と考える、仏教って何ですか?』:池上 彰

普段、宗教について意識することは少ない。「家の宗教は?」って聞かれると、仏教と答えます。「宗派は?」と聞かれれば、檀家となっているお寺の宗派を答えます。ちなみに、私は西山浄土宗です。檀家と言っても法事やお盆や葬式の時にお世話になり、毎年会…

『仮面病棟』:知念実希人|ピエロの真の目的は何なのか

知念実希人の作品を読むのは初めてです。「崩れる脳を抱きしめて」が、2018年本屋大賞8位になるなど注目の作家です。仮面病棟は、一気読み必死の本格ミステリー×医療サスペンスという触れ込みです。閉ざされた病院内は、読み手に手に汗を握る緊張感を与えて…

『クジラの彼』:有川 浩|自衛官の恋愛に心が引き寄せられる

自衛隊を舞台にしたラブコメ。有川浩の持ち味がたっぷりと楽しめる作品です。6編の短編から成る短編集。登場人物は自衛隊員。自衛隊員という縁遠い世界の人々の恋愛模様を、甘く描いています。まるで、高校生のような初々しさすら感じさせるほどです。ドロ…

『オー!ファーザー』:伊坂幸太郎【感想】|家には父親が四人いる!?

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「オー!ファーザー」の感想です。 ゴールデンスランバー以降、作風が変化している伊坂幸太郎。しかし「オー!ファーザー」は、以前の伊坂幸太郎らしさが前面に出た作品です。 読者をニヤリとさせる会話の応酬。 伏線を張…

定期「2018年6月(水無月)」の読書本

梅雨の季節。蒸し暑い環境の中で読んだ本は、7冊でした。部屋の中で、冷房を効かせて本を読む。そんな環境でないと、なかなか本に集中できない。集中力のなさが際立ちます。それでは、6月の読書本のおすすめを。 おすすめ度★★★★★ ハーモニー 伊藤計劃 空飛…

映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」を観た

「ローグワン」に続く、スター・ウォーズのスピンオフ作品。「ハン・ソロ」は、監督交代やアメリカでの興行成績の苦戦などマイナスイメージが強い。スター・ウォーズというブランドがあるから、興行成績が全く振るわないということはないでしょう。しかしそ…

『旅猫リポート』:有川 浩【感想】|サトルとナナの最後の旅

勘のいい人なら物語のかなり早い段階で、主人公の悟がナナを飼えなくなった理由に気付きます。遅くとも「Report-03 スギとチカコ」の章でのトラマルの台詞で、確実に気付くでしょう。ナナを飼えなくなった理由が単なるリストラでないことを。 悟とナナを待ち…

2011年本屋大賞の受賞作

2010年11月〜2011年4月にかけて実施された第8回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉 【得点:386.5点】 2位 『ふがいない僕は空を見た』窪美澄 【得点:354.5点】 3位 『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦 【得点:310…

『風に舞いあがるビニールシート』:森 絵都|人にとって大切なものとは何なのか

第135回直木賞受賞作。森 絵都の作品は「カラフル」を読んで以来、2作目です。カラフル」は中高生向けの印象でした。本作は6編から成る短編集です。それぞれが独立した話であり、全く関係性がありません。しかし、6編には共通するテーマがあると思います…

『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』

本格ミステリ。この言葉の定義は、一言で言い表すには難しい。物語中に提示された謎を解くことに重きが置かれた小説のことだろうか。その謎の難解さと、それが明かされた時の納得感が見事な作品が本格ミステリーなのかな。 この本に掲載されている7人の作家…