晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
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2019-01-01から1年間の記事一覧

『名もなき毒』:宮部みゆき【感想】|毒は人の心に潜み、飽和する

杉村三郎シリーズの第2作目。会社員でありながら探偵のような行動、今多コンツェルン会長の娘婿という立場が及ぼす職場での微妙な立ち位置は変わっていません。それが面白みを増します。彼が所属するグループ広報室の面々も個性的で引き込まれていきます。 …

『天地明察』:生方 丁【感想】|暦は天と地を繋ぐ

第7回本屋大賞受賞作。史実を基にした時代・歴史小説です。主人公の渋川春海は囲碁棋士であり、天文暦学者でもあります。算術にも没頭します。自身の興味のある分野に関しては、とても探求心のある人物です。 渋川春海(安井算哲)の名前を教科書で見た記憶…

『スプートニクの恋人』:村上春樹|あちら側にあるものは・・・

「スプートニクの恋人」を読むのは2度目です。1度目は相当に前なので、かなりの部分が記憶から抜け落ちていました。 長編作品ですが、それほどボリュームはありません。一方、起こった事象に対して、原因となるものはあまり詳細に描かれません。読者の解釈…

『ソードアート・オンライン14 アリシゼーション・ユナイティング』:川原 礫【感想】|アリシゼーション・人界編が完結

アドミニストレータに記憶を奪われ、整合騎士ユージオ・シンセシス・サーティツーとなったユージオ。キリトとの再会と決闘の火蓋が切られたところからです。最上階を目前にして、親友と死闘が始まります。元老長チュデルキンの行方も気になるところですが、…

『まほろ駅前多田便利軒』:三浦しをん【感想】|戻らない過去を抱き、未来へ向けて

三浦しをんの作品は「舟を編む」以来2作目です。瑛太と松田龍平で映像化されていますが、読後の印象としてはキャスティングに違和感はありません。 便利屋という職業は、それほど特殊ではありません。便利屋で検索すれば、星の数ほどの検索結果が出ます。掃…

『首折り男のための協奏曲』:伊坂幸太郎【感想】|殺し屋×泥棒

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「首折り男のための協奏曲」の感想です。 7つの短編から構成されており、それぞれ独立した物語でありながら緩やかな関連性があります。首折り男で繋がっていて、黒澤で繋がっていて、若林夫妻で繋がっている。全てが一点…

定期「2019年8月(葉月)」の読書本

お盆が過ぎても、まだまだ暑い日が続く8月。朝晩の涼しさは増してきたような気はしますが。 8月に読んだ本は6冊でした。8月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ 沈黙のパレード 東野圭吾 メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット 伊藤…

『十二人の死にたい子どもたち』:生方 丁【感想】|13人目の謎は一体・・・

第156回直木賞候補で映画化もされた生方 丁の長編ミステリー作品です。注目された作品なので、かなりの期待度でした。タイトルも刺激的で興味を引きます。映画化もされていますが、ストーリーはほとんど知らない状態で読み始めました。 「死にたい子どもたち…

『項羽と劉邦』:司馬遼太郎【感想】|武と徳のいずれが勝つのか

舞台となる楚漢戦争は、紀元前206年から紀元前202年です。日本は弥生時代です。始皇帝の死により、再び戦乱の世になった中国の激動振りが伝わります。激動だからこそ魅力的な人物が現れるのでしょう。本作に登場する人物は、誰もが印象に残ります。 前半は始…

『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』:伊藤計劃【感想】|スネーク、最後の物語。

こんにちは。本日は、伊藤計劃氏の「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」の感想です。 メタルギアシリーズの第6作目「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」のノベライズです。プレステ3のゲームということですが、私…

『さよならドビュッシー』:中山七里【感想】|彼女の存在はピアノの中に

第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。本作で登場するピアニスト「岬洋介」のシリーズ第1作目になります。2013年に映画化、2016年にドラマ化されています。映画のキャスティングは橋本愛と清塚信也。ドラマは黒島結菜と東出昌大です。現役ピア…

『だれでも書ける最高の読書感想文』:斎藤 孝【感想】

魅力的なタイトルです。読書感想文が苦手で避けて通りたいと考えている人も多いでしょう。読書感想文について考える時、「読書が好きかどうか」と「文章を書けるかどうか」の二つの段階を考える必要があります。 感想文は宿題や課題として書く機会が多い。書…

定期「2019年7月(文月)」の読書本

最近は月に10冊読めないペースになっています。仕事が忙しい訳ではないのですが、夜になると猛烈に眠気が襲ってきます。夏場になり疲れているのかも。夏に体が慣れれば、ペースは戻るかもしれませんが。 7月の読書本は6作品、9冊でした。終戦のローレライ…

『沈黙のパレード』:東野圭吾【感想】|沈黙の向こうに隠された真実

ガリレオシリーズ3年ぶりの長編作品です。「猛射つ」の改稿による「禁断の魔術」以来です。オリジナル長編作品としては「真夏の方程式」からの8年ぶりになります。ガリレオシリーズは私のお気に入りのシリーズです。物理的トリックを使いながらも読みやす…

『シーソーモンスター』:伊坂幸太郎【感想】|怪物が、笑っている

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「シーソーモンスター」の感想です。 表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中篇2作品が収録されています。文芸誌「小説BOC」の競作企画「螺旋」プロジェクトの作品です。8組9名の作家が3つのルール…

『続 横道世之介』:吉田修一【感想】|世之介は変わらない

タイトル通り、「横道世之介」の続編です。前作は本屋大賞3位を受賞しており、私のお気に入りのひとつです。大学一年生の1年間を切り取って描かれた彼の日常に引き込まれました。 「続 横道世之介」は、留年したことでバブル景気の売り手市場に乗り遅れ、…

『ソードアート・オンライン13 アリシゼーション・ディバイディング』:川原 礫【感想】|キリトとユージオの再会は・・・

セントラル・カセドラルの階を上がるごとに緊張感が増していきます。ディバイディングではキリトとユージオが別行動です。作中でキリトも言っていますが、二人が離れたのは初めてです。だからこそユージオの存在感が増していきます。そして二人は意外な形で…

『終戦のローレライ』:福井晴敏【感想】|あるべき終戦の形とは・・・

私の好きな作家 福井晴敏の代表作です。文庫で4冊の大長編ですが、中弛みは一切ありません。映画も制作されていますが、どこまで映画を意識していたのか疑問に思います。少なくとも、映画を意識し過ぎていれば、ここまでの長編にはならなかったでしょう。 …

『学びを結果に変えるアウトプット大全』:樺沢紫苑【感想】

発行部数40万部を超えるベストセラーです。以前から気になっていました。ビジネス書なのか、実用書なのか、自己啓発本なのか。私が読んだ印象では自己啓発本です。精神科医が執筆しているから、自己啓発要素が強くなるのかもしれません。 インプットを材料に…

『迷路館の殺人』:綾辻行人【感想】|迷路と見立てに潜む謎

「館シリーズ」三作目です。中村青司・島田 潔も馴染みが出てきました。本作は、作中作と見立て殺人を軸としたミステリー作品です。作中作自体に仕掛けがあることは予想できます。ただ、「迷路館の殺人」が始まると作中作であることを忘れてしまいます。 迷…

定期「2019年6月(水無月)」の読書本

梅雨の季節のはずが、例年に比べ梅雨入りは遅れました。6月に蒸し暑さを感じることは少なかった気がします。そんな中で読んだ本は8作品、10冊でした。6月の読書本のおすすめ度を紹介します。 おすすめ度★★★★★ 魔眼の匣の殺人 今村昌弘 ワイルド・ソウル 垣…

『彼女は存在しない』:浦賀和宏【感想】|多重人格に潜む謎

Twitterを見ていると読了ツイートが登場していました。18年前の作品です。私は知らなかったのですが、中居文庫で取り上げられていたようです。読了ツイートは概ね高評価のものが多い。18年前なので設定や状況が古く感じる部分はあります。携帯電話やストラッ…

『下町ロケット ガウディ計画』:池井戸 潤【感想】|小さな宇宙「人体」への挑戦

前作は、続編を意識させる終わり方でした。というより続編ありきの終わり方です。「ガウディ計画」も著者の定番「勧善懲悪」を感じさせる作品です。前作から引き続き登場している人物は、本作においても生き方に全くブレがありません。ドラマの影響で阿部寛…

『青くて痛くて脆い』:住野よる【感想】|変わっていくことは成長なのだろうか?

大学生が主人公の小説を読むと、自分が大学生だった頃を思い出します。大学生活が楽しかったのは自由だったからでしょう。お金はないが、時間を持て余していました。その時間を有効活用せずに変化のない日常を過ごしていました。ただ、日常に変化はなくても…

『ワイルド・ソウル』:垣根涼介【感想】|棄民政策の果てに・・・

第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞の三賞を受賞した垣根涼介の代表作です。戦後の南米移民政策をベースに、ハードボイルド・ミステリー・ヒューマンドラマと言ったあらゆる要素を含んだ作品です。スピード感溢れる展開に…

『海辺のカフカ』:村上春樹【感想】|「僕」が立ち向かう先にあるものは・・・

少年カフカとナカタさんの2つのパートが交互に語られていきます。奇数章は一人称で少年カフカが描かれ、偶数章が三人称でナカタさんが描かれています。ふたつの世界が交互に描かれているのは「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を想起させます…

『謎解きはディナーのあとで2』:東川篤哉【感想】|影山の推理が再び・・・

同タイトルの続編です。前作は2011年の本屋大賞を受賞しています。執事の影山を安楽椅子探偵に見立てたミステリー作品ですが、コメディの要素も含まれてます。緻密に計算されたミステリーとコメディの組み合わせが絶妙です。どちらかと言えばコメディ色の方…

『ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジング』:川原 礫【感想】|セントラル・カセドラルを駆け上がる

エルドリエ・シンセシス・サーティワンを退け、デュソルバート・シンセシス・セブンの矢から何とか逃れたキリトたちが飛び込んだ大図書室。大図書室に住まう少女「カーディナル」との邂逅で前巻は終わりました。彼女の正体は少しだけ明かされています。 本巻…

『メモの魔力』:前田裕二【感想】|メモに対する意識が変わる

著者は有名な実業家の一人です。メディアに露出する機会もあるので、知っている人も多いでしょう。私もTVで見たことがあります。その時は、彼のメモについて特集していたように記憶しています。どこでもメモを取るという姿です。その記憶があったので、本書…

『魔眼の匣の殺人』:今村昌弘【感想】|予言の裏にある真実は・・・

「屍人荘の殺人」では、ゾンビを使ったクローズド・サークルに驚かされました。クローズド・サークルの作り方として新鮮であり、バイオテロという根拠を持ってきているので全くの虚構とは思わせないところがありました。そうは言っても現実味があるという訳…