ファンタジー・SF

『夜は短し歩けよ乙女』:森見登美彦【感想】|現実と非現実的の境目が曖昧になる

京都を舞台にした恋愛小説かと思えば、ファンタジー要素を随所に散りばめた不思議な小説です。現実的な出来事と非現実的な出来事が混然と混じり合い、何とも言えない読み心地を感じさせます。クラブの後輩に恋をしている大学生の物語ですが、彼の恋心を弄ぶ…

『君にさよならを言わない2』:七月隆文【感想】|幽霊たちとの出会いが切なさと温かさを溢れさせる

「君にさよならを言わない」の続編。続編なので登場人物や設定は引き継いでいますが、短編集なので前作を読んでいないと理解できないということはありません。ただ、前作を読んでいるのといないのとでは、受け止め方が変わってくるはずです。前作を未読の方…

『君にさよならを言わない』:七月隆文【感想】|願いを叶えた時、切なさとともに暖かい感情が心を満たす

「ぼくには、幽霊が視える。」 心残りのある幽霊の願いを叶え、成仏させる。物語の設定としては有りがちです。ありふれた設定で、オリジナリティ溢れたストーリーを作り出すのは難しい。本作もストーリーの組み立て自体に、それほど目新しいものはありません…

『かがみの孤城』:辻村深月【感想】|居場所はひとつではない。どこにでも・・・

2018年本屋大賞受賞作です。 「かがみの孤城」は本屋大賞を受賞し、様々なメディアで高い評価を受けています。もともと彼女の作品は注目されますし、その分、世間の評価のハードルは高くなります。そのハードルの高さを一気に飛び越えるほどの素晴らしい作品…

森見登美彦『夜行』考察|結末の辻褄が合わない。消えた長谷川さんの行方と、私たちが迷い込んだパラレルワールドの謎:MANPA Blog

森見登美彦『夜行』を読んでモヤモヤしていませんか。結末の辻褄が合わない理由、実は「最終夜」に隠されていました。消えた長谷川さんと「ゴーストの絵」の繋がり、そしていくつも重なるパラレルワールドの謎を、2回読んだからこそ見えた視点で考察します。

伊藤計劃『ハーモニー』が突きつける幸福の絶望。私は「人間」をやめたのか?意志と意識が消える結末の違和感を解く:MANPA Blog

心がない方が、幸せですか?医療分子が病を駆逐したユートピアで、私は「人間」をやめる誘惑に震えた。Webディレクターだった伊藤計劃がETMLに込めた祈りと終盤で露呈する「意志と意識」の整合性の謎。物語が突きつける幸福という名の絶望と、その違和感の正…

『忘れられた巨人』:カズオ・イシグロ|記憶を取り戻した二人を待ち受けるものは・・・

カズオ・イシグロ氏の小説を読むのは、「日の名残り」に続き2作目となります。舞台は「日の名残り」と同じくイギリスですが、時代も背景も全く違います。この作品はファンタジーの要素が強い。 時は6世紀頃。伝説のアーサー王の死後のイギリス。まだ、彼の…

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』考察。心という病を捨て、私はこの完全すぎる世界に立ち尽くす:MANPA Blog

「心がない世界」は、果たして救いなのでしょうか?村上春樹が描く二つの物語の繋がりを、私なりに深く考察しました。アイデンティティが剥ぎ取られ、影を捨ててまで手にする安らぎの正体。正解のない迷宮を彷徨い、私が最後に見つけた答えを綴ります。

『虐殺器官』が描く虐殺は進化の必然だったのか。ジョン・ポールの罪と救いなきクラヴィスの絶望を追う:MANPA Blog

なぜ世界から虐殺は消えないのか?『虐殺器官』が暴くのは、言語という「器官」が誘発する進化の代償でした。ジョン・ポールが背負った血塗られた贖罪と、日常に安住する私たちが無意識に望む地獄。記事では、クラヴィスの絶望に共鳴してしまう大いなる欺瞞…

『マルドゥック・スクランブル 排気〔完全版〕』:冲方 丁|結末を迎えた時、バロットとウフコックに何が残るのか

「燃焼」は、カジノでの負けられない闘いの途中で終わっています。「排気」は、その闘いの続きから始まります。「排気」は前半部分が「カジノ」での闘い。後半部分で最終局面を迎えます。「圧縮」「燃焼」「排気」と続いた物語が、どのような結末を迎えるの…

『マルドゥック・スクランブル 燃焼〔完全版〕』:冲方 丁|楽園で、バロットは何を得たのか

「圧縮」では、視覚的に派手な戦闘や銃撃が物語の主軸を占めていました。もちろん、その対照として登場人物の内面の動きを際立たせることも主軸です。その両軸をもって、物語を組み立てていました。「燃焼」においては、大きくふたつの構成で物語が描かれて…

『マルドゥック・スクランブル 圧縮〔完全版〕』:冲方 丁|何故、彼女は死ななければならなかったのか

冲方 丁氏の作品で最初に思い浮かぶのが、この「マルドゥック・スクランブル」です。サイバーパンク系のSF小説として支持を集め、映像化・漫画化など小説以外のメディアでも発表されています。サイバーパンク系と言わせていただいたのは、私がサイバーパン…

『星を継ぐもの』:ジェイムス・P・ホーガン|月面から現れた謎が人類の起源に迫る壮大なミステリー

30年以上前に発表された作品ですが、現在に至っても全く色褪せることのないハードSFの傑作です。謎の解明が物語の主眼なので、ミステリー・ハードSFと言った方が適切かもしれません。その謎が、とてつもなく壮大です。 ほとんど現代人と同じ生物であるに…

『精霊の守り人』:上橋菜穂子|壮大な和製ファンタジーが今ここに始まる

児童文学として執筆されたファンタジー小説。「精霊の守り人」は、綾瀬はるか主演でNHKドラマで放映されていました。小説を読んでいなくてもドラマで知っているという方もいるでしょう。この小説は児童文学というジャンルで収まるものではありません。も…

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』:フィリップ・K・ディック|人間とアンドロイドに違いはあるのか

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の内容 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の感想 近未来SF 人間が人間である意味 終わりに 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の内容 長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残った…

『ブレイブ・ストーリー』:宮部みゆき|ワタルが得た勇気(ブレイブ)が未来を変える

「ブレイブ・ストーリー」の内容 「ブレイブ・ストーリー」の感想 ファンタジー世界 絡まり合うストーリー 終わりに 「ブレイブ・ストーリー」の内容 小学五年生の亘は、成績はそこそこで、テレビゲームが好きな男の子。大きな団地に住み、ともに新設校に通…

『カラフル』:森 絵都|世界は一色ではない、多彩なんだ

「カラフル」の内容 いいかげんな天使が、一度死んだはずのぼくに言った。「おめでとうございます、抽選にあたりました!」ありがたくも、他人の体にホームステイすることになるという。前世の記憶もないまま、借りものの体でぼくはさしてめでたくもない下界…