読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(ジャンル)

『屍人荘の殺人』:今村昌弘【感想】|狭まっていくクローズド・サークル

第27回鮎川哲也賞受賞作。「このミステリーがすごい!2018」「2018本格ミステリ・ベスト10」「2018週刊文春ミステリーベスト10」でも第1位を受賞。第15回本屋大賞や第18回本格ミステリ大賞に登場するなど高い評価を受けています。 様々な賞を受賞したり、多…

『リップヴァンウィンクルの花嫁』:岩井俊二【感想】|ネットと現実の狭間で・・・

映像化を念頭に置きながら執筆した作品なのでしょう。読み進めていくほどに、自然と映像が頭に浮かんできます。それだけ風景描写が上手い。難しい言葉や表現を用いずに、それでいながら明確に状況がイメージ出来ます。映画監督だからこそ出来る文章表現力で…

『ソードアート・オンライン9 アリシゼーション・ビギニング』:川原 礫【感想】|壮大な物語が始まる

新章突入です。サブタイトルにアリシゼーションの名を冠するのは、第9巻「アリシゼーション・ビギニング」から第18巻「アリシゼーション・ラスティング」までの10冊です。「アインクラッド」「フェアリーダンス」「ファントムバレット」は各2冊。「マザーズ…

『スマホを落としただけなのに』:志賀 晃【感想】|「落としただけ」では済まない

第15回「このミステリーがすごい」の隠し玉として加筆・修正の後、発刊された作品。北川景子主演で映画化もされています。ミステリーというよりは、サスペンスホラーと言ったところでしょうか。謎解きの要素もありますが、追い詰められていく恐怖感が前面に…

『ソードアート・オンライン8 アーリー・アンド・レイト』:川原 礫【感想】|在りし日のキリトの苦悩が描かれる

第2巻以来の短編集です。解放前のアインクラッドを舞台にした短編が2話。ファントム・バレット後のALOを舞台にした短編が1話。久しぶりにアインクラッド解放前の緊張感を味わうことが出来ます。SAO、ALO、GGOと舞台を変えてきましたが、やはりアインクラ…

『星をつなぐ手 ー桜風堂ものがたりー』:村山早紀【感想】|町の書店が消えた時、失ったものの大きさに気付くのだろうか

第14回本屋大賞5位の「桜風堂ものがたり」の続編。桜風堂で働くことになった月原一整のその後だけでなく、銀河堂書店の書店員たちのその後も描かれています。書店員である彼らを描くことで、町の書店が置かれている厳しい現状をテーマにしているのは前作と…

『盤上の向日葵』:柚月裕子【感想】|彼が思った「潮時」とは一体・・・

第15回本屋大賞第2位のミステリー小説です。ミステリー小説でありながら、ヒューマンドラマとしての側面を強く感じます。死体遺棄事件の謎を解明するミステリーですが、序章の段階で事件に関わる人物が特定されています。異例の経歴を持ってプロ棋士になっ…

『ひとつむぎの手』:知念実希人【感想】|真の医師の姿とは・・・

2019年本屋大賞ノミネート作品。大学病院の心臓外科を舞台に描かれる生々しい医師の姿は、医師である著者だからこそ描けるのでしょう。ミステリーの要素を含みながらも、医者の矜持を描いたヒューマンドラマの側面が強い。ミステリーが霞んでしまったように…

『水底フェスタ』:辻村深月【感想】|偽りの平穏に押し潰される

読後の喪失感が胸を強く圧迫しました。村社会の実態が明らかになるにつれ、息が詰まるような閉塞感が襲います。ムツシロ・ロック・フェスティバル(ムツシロック)という開放的で躍動感溢れるロックフェスを始まりにすることで、その後の睦ッ代村の閉鎖性が…

『誰か』:宮部みゆき【感想】|家族だからこそ逃れられない

杉村三郎シリーズの第一弾。読者は杉村三郎の視点を通じて、事件の真相に迫っていきます。杉村三郎は普通のサラリーマンです。特別な能力を有していないので、彼の視点で描かれる世界は馴染みやすい。彼が考えていることも共感しやすい。謎が輻輳していても…

『図書館の魔女 烏の伝言』:高田大介【感想】|裏切り者の街を駆け巡る

「図書館の魔女」の続編。前作は、ニザマ・アルデシュ・一の谷の三国和睦により戦役が回避され、ニザマの宦官宰相ミツクビを失脚させたところで終わりました。三国和睦の実現で、物語を一区切りさせた印象です。宦官中常侍の失脚で、ニザマに政情不安による…

『江戸忍法帖』:山田風太郎【感想】|七人の忍者と対峙する一人の侍

以前読んだ「甲賀忍法帖」がかなり面白かったので、本作を読みました。続編ではないのですが、同様に楽しませてくれるだろうと期待は大きかった。細かい設定は抜きにして、本作は忍者対武士と言えます。甲賀七忍と四代将軍家綱の落胤「葵悠太郎」との戦い。…

『七つの会議』:池井戸 潤【感想】|積み上げられた不正に立ち向かう

2019年2月1日に劇場公開されます。映画化される小説が未読の場合、いつも頭を悩ませるのがどちらを先に読むか(観るか)という問題です。「空飛ぶタイヤ」の時も同じ悩みを抱えた気がします。結局は小説を先に読むことにしましたが、どちらが正解だったのかは…

『ファーストラヴ』:島本理生【感想】|彼女たちは救われたのだろうか

第159回直木賞受賞作。恋愛小説をイメージさせるタイトルながら、帯には「なぜ娘は父親を殺さなければならなかったのか?」と書かれています。一体、どのような内容の小説なのか気になっていました。直木賞を受賞した話題性もあり、期待感が高まります。 読…

『残り全部バケーション』:伊坂幸太郎【感想】|結末は読者に委ねられた?

五章から成る連作短編集。各短編ごとで完結してますが、それぞれが関係し合っています。第五章を読むと、今までの物語が最終章のための伏線であったようにも感じます。全てが最終章のためだけに存在していた訳ではないですが。 裏稼業に生きる「溝口」と「岡…

『図書館の魔女』:高田大介【感想】|図書館は人の知り得るが世界の縮図

第45回メフィスト賞受賞作。著者のデビュー作になります。単行本上下巻で1500頁近い超大作です。ファンタジー作品ですが、リアリティのある世界観に基づいた物語は読み進めるほどに引き込まれていきます。物語が劇的に進展する箇所もあれば、その前段階とし…

『名前探しの放課後』:辻村深月【感想】|人は変わることができる

二度読みしました。本作を読む前に、先に読んでおくべき作品がいくつかあります。少なくとも、「ぼくのメジャースプーン」を読んでから読むことをお勧めします。出来れば、「凍りのくじら」も読んでおいた方が面白いかも。あまり書くとネタバレしそうなので…

『ハサミ男』:殊能将之【感想】|仕組まれた叙述トリックに驚愕する

著者のデビュー作であり、1999年に第13回メフィスト賞を受賞した作品です。ミステリー小説の醍醐味は、結末が自分の予想を裏切り、しかも納得されられる結末であることです。そういう意味では、見事に予想を裏切られました。物語の終盤に一気に謎が明かされ…

『夜は短し歩けよ乙女』:森見登美彦【感想】|現実と非現実的の境目が曖昧になる

京都を舞台にした恋愛小説かと思えば、ファンタジー要素を随所に散りばめた不思議な小説です。現実的な出来事と非現実的な出来事が混然と混じり合い、何とも言えない読み心地を感じさせます。クラブの後輩に恋をしている大学生の物語ですが、彼の恋心を弄ぶ…

『ぼくのメジャースプーン』:辻村深月【感想】|復讐は誰のため?

「あることをしなければ、あることが起きる」 物語の鍵となるのが「条件ゲーム提示能力」。この能力が、どれほど恐ろしい能力なのか。一見するとよく分かりません。冷静に考えると、人の心に直接影響を及ぼすのはとても危険です。読み進めていくと、徐々に気…

『きみにしか聞こえない』:乙一【感想】|彼女たちの苦しみは救われたのだろうか

乙一作品を読むのは、本作が初めてです。表題作を含む3篇の短編です。短編の中でも、かなり短い部類に入ると思います。登場人物は少なく、それほど複雑なストーリーでもありません。それぞれの短編に関係性がある訳でもないので、読み応えはそれほどないと…

『村上海賊の娘』:和田 竜【感想】|武士とは違う海賊の生き様

第11回本屋大賞受賞作。和田 竜の小説は「忍びの国」「小太郎の左腕」を読みました。それらに比べ、村上海賊の娘は超長編です。単行本で上下巻、文庫だと4巻に及びます。超長編ながら、気が付けば一気読みでした。 戦国時代の歴史小説だと、主人公は有名な…

『凍りのくじら』:辻村深月【感想】|「少し・不思議」が彼女を変えていく

藤子・F・不二雄作品に対する敬愛が伝わります。本作では、「ドラえもん」に対する著者の思い入れが、随所に散らばっています。主人公の芦沢理帆子が抱く藤子・F・不二雄への思いは、著者の思いを代弁しているのかもしれません。 ドラえもんの物語には、人生…

『フーガはユーガ』:伊坂幸太郎【感想】|だけど僕たちは、手強い

伊坂幸太郎の1年ぶりの新作長編。私はまだ、彼の小説を全て読んでいません。未読の作品があるにもかかわらず、新作が出ると嬉しい。出版順に読んでいるのですが、新作ということで我慢できずに読んでしまいました。第一期の作品ほど軽妙な会話や伏線が際立…

『のぼうの城』:和田 竜【感想】|日本三大水攻めに耐えた城

小説より前に映画を観ています。鑑賞したのは数年前ですが、小説を読み進めると映画の記憶も蘇ってきました。映画の記憶と小説が微妙に違うのは原作からアレンジされたのか、私の記憶違いなのか。ただ、小説にかなり忠実に製作されていたのだと感じます。も…

『夜の国のクーパー』:伊坂幸太郎【感想】|思い込みが目の前を見えなくさせる

猫が言葉を話す。物語の始まりから非現実的です。空想の国を舞台にしたファンタジー的な物語と思いながら読み始めました。舞台となる場所も、現実には存在しない「この国」と「鉄国」です。しかし、場面が変わると様相が一気に変化します。空想の世界かと思…

『PK』:伊坂幸太郎【感想】|臆病は伝染する。そして勇気も伝染する。

「PK」「超人」「密使」の3つの中篇から成る連作集。一度目は読み進めるほど時間軸や各話の関係性に混乱し、二度読みしました。二度読みしても、全ての繋がりを理解し納得できたかと言うと、疑問点も多々残ります。私の理解力の問題なのかもしれませんが。…

『本日は、お日柄もよく』:原田マハ【感想】|職業小説でなく、お仕事「サクセス」小説

以前から気になっていた1冊です。タイトルと装丁が印象深く、書店で見かけてから頭の片隅に引っかかっていました。スピーチライターという職業を焦点を当て、そこに関わる様々な人生を描いた作品です。 職業としてスピーチライターがあることは知っています…

『蜜蜂と遠雷』:恩田陸【感想】|文字から音楽が溢れ出る

史上初の直木賞・本屋大賞のW受賞作。ピアノコンクールの物語なので、引き込まれるかどうか疑問を感じながら読み始めました。何故なら、私はクラシックが詳しくありません。正直、ほぼ知らないと言っていい。曲のタイトルを聞いてもイメージできない。単行…

『みかづき』:森 絵都【感想】|学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になる

第14回本屋大賞第2位受賞作。単行本で460頁超の長編作品です。著者の作品は、「カラフル」と「風に舞いあがるビニールシート」の2作品しか読んだことがありません。「カラフル」は中高生向けですし、「風に舞いあがるビニールシート」は短編集なので、読み…