読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(ジャンル)-ミステリー・サスペンス

『ラプラスの魔女』:東野圭吾【感想】|彼女は計算して奇跡を起こす

殺人の雰囲気が漂う硫化水素死亡事故から始まり、遠く離れた場所で同じような硫化水素の死亡事故が起こることで事態が動き始めます。事故だとしても再現性はなく、事件だとしても実行不可能です。事故とも事件とも言えない状態で、それぞれの見ている角度か…

『名もなき毒』:宮部みゆき【感想】|毒は人の心に潜み、飽和する

杉村三郎シリーズの第2作目。会社員でありながら探偵のような行動、今多コンツェルン会長の娘婿という立場が及ぼす職場での微妙な立ち位置は変わっていません。それが面白みを増します。彼が所属するグループ広報室の面々も個性的で引き込まれていきます。 …

『首折り男のための協奏曲』:伊坂幸太郎【感想】|首折り男と黒澤が繋ぐ

7つの短編から構成されており、それぞれ独立した物語でありながら緩やかな関連性があります。首折り男で繋がっていて、黒澤で繋がっていて、若林夫妻で繋がっている。全てが一点に集束し、爽快感を得る結末ではありません。それぞれの短編で、それぞれの終…

『十二人の死にたい子どもたち』:生方 丁【感想】|13人目の謎は一体・・・

第156回直木賞候補で映画化もされた生方 丁の長編ミステリー作品です。注目された作品なので、かなりの期待度でした。タイトルも刺激的で興味を引きます。映画化もされていますが、ストーリーはほとんど知らない状態で読み始めました。 「死にたい子どもたち…

『さよならドビュッシー』:中山七里【感想】|彼女の存在はピアノの中に

第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。本作で登場するピアニスト「岬洋介」のシリーズ第1作目になります。2013年に映画化、2016年にドラマ化されています。映画のキャスティングは橋本愛と清塚信也。ドラマは黒島結菜と東出昌大です。現役ピア…

『沈黙のパレード』:東野圭吾【感想】|沈黙の向こうに隠された真実

ガリレオシリーズ3年ぶりの長編作品です。「猛射つ」の改稿による「禁断の魔術」以来です。オリジナル長編作品としては「真夏の方程式」からの8年ぶりになります。ガリレオシリーズは私のお気に入りのシリーズです。物理的トリックを使いながらも読みやす…

『シーソーモンスター』:伊坂幸太郎【感想】|「海族」と「山族」の対立構造を描く

表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中篇2作品が収録されています。文芸誌「小説BOC」の競作企画「螺旋」プロジェクトの作品です。8組9名の作家が3つのルールに従って、古代から未来までの日本を舞台に2つの種族が対立する歴史を描い…

『迷路館の殺人』:綾辻行人【感想】|迷路と見立てに潜む謎

「館シリーズ」三作目です。中村青司・島田 潔も馴染みが出てきました。本作は、作中作と見立て殺人を軸としたミステリー作品です。作中作自体に仕掛けがあることは予想できます。ただ、「迷路館の殺人」が始まると作中作であることを忘れてしまいます。 迷…

『彼女は存在しない』:浦賀和宏【感想】|多重人格に潜む謎

Twitterを見ていると読了ツイートが登場していました。18年前の作品です。私は知らなかったのですが、中居文庫で取り上げられていたようです。読了ツイートは概ね高評価のものが多い。18年前なので設定や状況が古く感じる部分はあります。携帯電話やストラッ…

『ワイルド・ソウル』:垣根涼介【感想】|棄民政策の果てに・・・

第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞の三賞を受賞した垣根涼介の代表作です。戦後の南米移民政策をベースに、ハードボイルド・ミステリー・ヒューマンドラマと言ったあらゆる要素を含んだ作品です。スピード感溢れる展開に…

『謎解きはディナーのあとで2』:東川篤哉【感想】|影山の推理が再び・・・

同タイトルの続編です。前作は2011年の本屋大賞を受賞しています。執事の影山を安楽椅子探偵に見立てたミステリー作品ですが、コメディの要素も含まれてます。緻密に計算されたミステリーとコメディの組み合わせが絶妙です。どちらかと言えばコメディ色の方…

『魔眼の匣の殺人』:今村昌弘【感想】|予言の裏にある真実は・・・

「屍人荘の殺人」では、ゾンビを使ったクローズド・サークルに驚かされました。クローズド・サークルの作り方として新鮮であり、バイオテロという根拠を持ってきているので全くの虚構とは思わせないところがありました。そうは言っても現実味があるという訳…

『死神の浮力』:伊坂幸太郎【感想】|死神の千葉が再び現れる

「死神の精度」で登場した新しい死神像は、とても独特でユーモアに富んでいました。前作を読んでからかなり経ちますが、千葉の印象は薄まっていません。インパクトが大きかったということですし、インパクトも楽しさの要因です。ただ「死神の精度」に対し、…

『水車館の殺人』綾辻行人【感想】|1年前と現在が繋がった時・・・

綾辻行人の館シリーズの第二作目。「十角館の殺人」の次作の構想をしている際に、館シリーズを思いついたと述べています。館シリーズの第二作目ですが、著者がシリーズを意識して執筆した最初の作品です。 「十角館の殺人」を読んだ時、私は伏線らしい伏線を…

『子どもたちは夜と遊ぶ』:辻村深月【感想】|浅葱に救いはあったのだろうか

文庫で1,000頁を超える長編です。結末で明かされた謎の答えがあまりに予想外でした。読んできたことの整合性を確認したくなったので2度読みです。ミステリー小説で謎が明かされると、これまでの出来事に意味が与えられ、納得感と充実感があるものです。結末…

『ガソリン生活』:伊坂幸太郎【感想】|緑デミが謎を追う?

車を擬人化し物語を紡いでいきますが、仙台を舞台にした現実的(?)な物語です。登場するエピソードは、結構物騒なものが多い。普通に生活していれば到底巻き込まれないようなことばかりです。しかし、伊坂幸太郎が書けば軽快なストーリーになります。本作…

『屋上のテロリスト』:知念実希人【感想】|テロリストの裏に隠された彼女の真実

著者の名前を聞いて思い浮かぶのは医療ミステリーです。彼の作品をそれほど多く読んでいませんが、一度感じたイメージはなかなか離れない。本作では医療は登場しません。 物語に潜む謎を解くという意味ではミステリー作品です。ただ、事件が起こり、謎が発生…

『インフェルノ』:ダン・ブラウン【感想】|ダンテの神曲が抱く謎

ロバート・ラングドン教授を主人公にしたサスペンス小説の第4作目。「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」は映画化されており、当時はかなり話題になりました。この2作は小説も読みましたし、映画も観ました。かなり前なので再読した上で、いずれ感想を…

『屍人荘の殺人』:今村昌弘【感想】|狭まっていくクローズド・サークル

第27回鮎川哲也賞受賞作。「このミステリーがすごい!2018」「2018本格ミステリ・ベスト10」「2018週刊文春ミステリーベスト10」でも第1位を受賞。第15回本屋大賞や第18回本格ミステリ大賞に登場するなど高い評価を受けています。 様々な賞を受賞したり、多…

『スマホを落としただけなのに』:志賀 晃【感想】|「落としただけ」では済まない

第15回「このミステリーがすごい」の隠し玉として加筆・修正の後、発刊された作品。北川景子主演で映画化もされています。ミステリーというよりは、サスペンスホラーと言ったところでしょうか。謎解きの要素もありますが、追い詰められていく恐怖感が前面に…

『盤上の向日葵』:柚月裕子【感想】|彼が思った「潮時」とは一体・・・

第15回本屋大賞第2位のミステリー小説です。ミステリー小説でありながら、ヒューマンドラマとしての側面を強く感じます。死体遺棄事件の謎を解明するミステリーですが、序章の段階で事件に関わる人物が特定されています。異例の経歴を持ってプロ棋士になっ…

『ひとつむぎの手』:知念実希人【感想】|真の医師の姿とは・・・

2019年本屋大賞ノミネート作品。大学病院の心臓外科を舞台に描かれる生々しい医師の姿は、医師である著者だからこそ描けるのでしょう。ミステリーの要素を含みながらも、医者の矜持を描いたヒューマンドラマの側面が強い。ミステリーが霞んでしまったように…

『水底フェスタ』:辻村深月【感想】|偽りの平穏に押し潰される

読後の喪失感が胸を強く圧迫しました。村社会の実態が明らかになるにつれ、息が詰まるような閉塞感が襲います。ムツシロ・ロック・フェスティバル(ムツシロック)という開放的で躍動感溢れるロックフェスを始まりにすることで、その後の睦ッ代村の閉鎖性が…

『誰か』:宮部みゆき【感想】|家族だからこそ逃れられない

杉村三郎シリーズの第一弾。読者は杉村三郎の視点を通じて、事件の真相に迫っていきます。杉村三郎は普通のサラリーマンです。特別な能力を有していないので、彼の視点で描かれる世界は馴染みやすい。彼が考えていることも共感しやすい。謎が輻輳していても…

『ファーストラヴ』:島本理生【感想】|彼女たちは救われたのだろうか

第159回直木賞受賞作。恋愛小説をイメージさせるタイトルながら、帯には「なぜ娘は父親を殺さなければならなかったのか?」と書かれています。一体、どのような内容の小説なのか気になっていました。直木賞を受賞した話題性もあり、期待感が高まります。 読…

『残り全部バケーション』:伊坂幸太郎【感想】|結末は読者に委ねられた?

五章から成る連作短編集。各短編ごとで完結してますが、それぞれが関係し合っています。第五章を読むと、今までの物語が最終章のための伏線であったようにも感じます。全てが最終章のためだけに存在していた訳ではないですが。 裏稼業に生きる「溝口」と「岡…

『名前探しの放課後』:辻村深月【感想】|人は変わることができる

二度読みしました。本作を読む前に、先に読んでおくべき作品がいくつかあります。少なくとも、「ぼくのメジャースプーン」を読んでから読むことをお勧めします。出来れば、「凍りのくじら」も読んでおいた方が面白いかも。あまり書くとネタバレしそうなので…

『ハサミ男』:殊能将之【感想】|仕組まれた叙述トリックに驚愕する

著者のデビュー作であり、1999年に第13回メフィスト賞を受賞した作品です。ミステリー小説の醍醐味は、結末が自分の予想を裏切り、しかも納得されられる結末であることです。そういう意味では、見事に予想を裏切られました。物語の終盤に一気に謎が明かされ…

『ぼくのメジャースプーン』:辻村深月【感想】|復讐は誰のため?

「あることをしなければ、あることが起きる」 物語の鍵となるのが「条件ゲーム提示能力」。この能力が、どれほど恐ろしい能力なのか。一見するとよく分かりません。冷静に考えると、人の心に直接影響を及ぼすのはとても危険です。読み進めていくと、徐々に気…

『凍りのくじら』:辻村深月【感想】|「少し・不思議」が彼女を変えていく

藤子・F・不二雄作品に対する敬愛が伝わります。本作では、「ドラえもん」に対する著者の思い入れが、随所に散らばっています。主人公の芦沢理帆子が抱く藤子・F・不二雄への思いは、著者の思いを代弁しているのかもしれません。 ドラえもんの物語には、人生…