読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(作家名)

一瞬の風になれ:佐藤多佳子【感想】|仲間を信じて、バトンをつなぐ

第4回本屋大賞受賞作。中学校までサッカーをしていた「神谷新二」が主人公。彼の一人称で描かれる春野台高校陸上部が舞台の青春物語です。 序章は、新二と彼の友人「一ノ瀬連」の生い立ちと、彼らの関係性の紹介のための章です。物語は、高校一年生から三年…

容疑者Xの献身:東野圭吾【感想】|論理と感情。どちらに従うことが正しいのか。

第134回直木賞受賞作。ガリレオシリーズの第三作目で初の長編です。「探偵ガリレオ」「予知夢」は短編集なので、トリックに様々な仕掛けが施されていますが流れは一直線です。登場人物たちも立ち位置が明確で、あまり予想外の動きをしません。トリックは予想…

マリアビートル:伊坂幸太郎【感想】|東北新幹線に集結した殺し屋たちの運命は・・・

位置付けとしては「グラスホッパー」の続編です。続編と言っても、直接的なストーリーの繋がりはあまりありません。グラスホッパーで登場した人物が数人登場していますが、前作を読んでいなくてもストーリーを理解する上で支障はないでしょう。「マリアビー…

Twelve Y.O.:福井晴敏【感想】|日本は国家として大人になれないのか

福井晴敏のデビュー作。本作より先に「川の深さは」を執筆しています。ただ発刊されたのは本作が先なので、世間的なデビュー作ということになります。次作「亡国のイージス」も含めたところだと、発刊順は「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」「川の深さは」。…

コンビニ人間:村田沙耶香【感想】|自分と社会にとって「普通」とは何か?

第155回芥川賞受賞作。日常生活のどの場面でも「普通」は存在します。「普通」の圏内にいる人々にとっては意識しないことでも、そこからはみ出した人にとっては意識せざるを得ません。無言の圧力に止まらず、面と向かって「普通」を強制する。本作を読めば、…

君にさよならを言わない2:七月隆文【感想】|幽霊たちとの出会いが切なさと温かさを溢れさせる

「君にさよならを言わない」の続編。続編なので登場人物や設定は引き継いでいますが、短編集なので前作を読んでいないと理解できないということはありません。ただ、前作を読んでいるのといないのとでは、受け止め方が変わってくるはずです。前作を未読の方…

愚者のエンドロール:米澤穂信【感想】|「古典部」がビデオ映画の謎に迫る

「古典部」シリーズの第二弾。前作「氷菓」は高校1年の入学から夏休みくらい(最終章は夏休み後、文化祭直前になってますが)までです。本作は、夏休みの終盤を舞台に描かれています。「古典部」シリーズは、高校生の学内ミステリー小説です。「愚者のエンド…

氷菓:米澤穂信【感想】|古典部シリーズの原点。登場人物の個性が溢れ出す

「古典部」シリーズの第一作。高校一年の折木奉太郎を主人公にした学園推理小説です。当初、角川スニーカー文庫から刊行されていますので、ライトノベル系のミステリー小説という位置付けなのでしょう。推理小説と言っても、高校が舞台なので人が死ぬことは…

君にさよならを言わない:七月隆文【感想】|願いを叶えた時、切なさとともに暖かい感情が心を満たす

「ぼくには、幽霊が視える。」 心残りのある幽霊の願いを叶え、成仏させる。物語の設定としては有りがちです。ありふれた設定で、オリジナリティ溢れたストーリーを作り出すのは難しい。本作もストーリーの組み立て自体に、それほど目新しいものはありません…

横道世之介:吉田修一【感想】|過ぎ去った大学生活をふと思い出す。そこにあるものは・・・

読みやすい文章に、軽快でテンポの良いストーリー展開。笑えるシーンが多くありながら、最後には心に響くエンディングが用意されています。主人公「世之介」は、取り立てて特徴のない大学生です。周りに流され、自分の意見を押し通すほど強気な部分はありま…

崩れる脳を抱きしめて:知念実希人【感想】|彼女と一緒に過ごした時間は幻だったのか

2018年本屋大賞第8位の作品です。医療現場を舞台にしたミステリー作品。現役医師の著者だからこそ描けると言っても過言ではありません。また、医療現場だけで物語が完結する訳ではありません。ミステリーの主軸は病院内から、病院外へと移っていきます。 恋…

かがみの孤城:辻村深月【感想】|居場所はひとつではない。どこにでも・・・

2018年本屋大賞受賞作です。 「かがみの孤城」は本屋大賞を受賞し、様々なメディアで高い評価を受けています。もともと彼女の作品は注目されますし、その分、世間の評価のハードルは高くなります。そのハードルの高さを一気に飛び越えるほどの素晴らしい作品…

銀河鉄道の父:門井慶喜【感想】|父でありすぎる政次郎と息子でありすぎる賢治

宮沢賢治の著作で思い浮かぶのは、「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「雨ニモマケズ」と言ったところです。「注文の多い料理店」は学校の教科書で読んだ記憶があります。タイトル「銀河鉄道の父」から想像していたのは、宮沢賢治の伝記です。確かに彼の…

余命10年:小坂流加【感想】|死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯、生きてみるよ

余命10年。 医者から宣告されたら、どうなるだろうか。自分に置き換えてみても実感出来ません。生まれたからには、誰にでも等しく訪れるのが「死」です。誰も逃れることは出来ません。私たちはいずれ死ぬことを頭で理解していても、普段、現実的なものとして…

バイバイ、ブラックバード:伊坂幸太郎【感想】

6話から成る連作短編集。 5人の女性と付き合っていた主人公 星野一彦が、ある事情から、その女性たちに別れを告げに回ります。太宰治の「グッド・バイ」の内容をオマージュした作品。と言っても、私は「グッド・バイ」を読んでいませんが。 伊坂幸太郎が太…

暗幕のゲルニカ:原田マハ【感想】

原田マハの小説を読むのは、「たゆたえども沈まず」に続いて2作品目です。 私は美術史に詳しくありません。アートに対する造詣も深くありません。ピカソの知識も教科書レベルです。それでも「ゲルニカ」は知っていますし、彼が美術界に大きな影響を与えたこ…

ジェノサイド:高野和明【感想】

読み始めたら止まらないくらい、面白く読み応えがある作品です。 出来の良いハリウッド映画を観ているようです。もっと言えば、それ以上の奥行きがあります。小説なので視覚的な迫力はありません。その代わり、文章を読んで想像する世界は限りなく広がります…

夜行:森見登美彦【感想】

2017年本屋大賞の8位にランキングされてます。 ファンタジーの要素を軸にしていますが、ホラーに近い部分もある。単行本の表紙からは想像出来ない怖さを含んだ小説です。徐々に空気が重くなり、圧迫されていくような息苦しさを感じます。 「第一夜 尾道」か…

ダンス・ダンス・ダンス:村上春樹【感想】

「羊を巡る冒険」から四年後の「僕」の物語。 「風の歌を聴け」から始まり「1973年のピンボール」、「羊を巡る冒険」を三部作と言うなら、「ダンス・ダンス・ダンス」の位置付けは難しい。四部作としてカウントすべきなのでしょうか。ただ、鼠を付けると「鼠…

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。:辻村深月【感想】

主人公は、幼馴染の神宮司みずほと望月チエミ。 この二人を軸に、母娘の関係・女友達の関係を生々しく、重苦しく描いています。 30歳のみずほとチエミが感じる感情に共感できるかどうか。彼女たちが歩んできた今までの人生に共感できるかどうか。また、登場…

たゆたえども沈まず:原田マハ【感想】

画家「フィンセント・ファン・ゴッホ」の物語。 2018年本屋大賞の第4位に輝いています。 フィンセントの物語ですが、彼の視点で彼の人生が描かれている訳ではありません。フィンセントの弟「テオドルス・ファン・ゴッホ」とパリ在住の美術商「加納重吉」の…

仮面病棟:知念実希人【感想】

知念実希人の作品を読むのは初めてです。「崩れる脳を抱きしめて」が、2018年本屋大賞8位になるなど注目の作家です。 仮面病棟は、一気読み必死の本格ミステリー×医療サスペンスという触れ込みです。閉ざされた病院内は、読み手に手に汗を握る緊張感を与え…

クジラの彼:有川 浩【感想】

自衛隊を舞台にしたラブコメ。有川浩の持ち味がたっぷりと楽しめる作品です。 6編の短編から成る短編集です。 登場人物は自衛隊員。自衛隊員という縁遠い世界の人々の恋愛模様を、甘く描いています。まるで、高校生のような初々しさすら感じさせるほどです…

オー!ファーザー:伊坂幸太郎【感想】

ゴールデンスランバー以降、作風が変化している伊坂幸太郎。 しかし、「オー!ファーザー」は、それ以前の伊坂幸太郎らしさが前面に出た作品です。読者をニヤリとさせる会話の応酬。伏線を張り巡らし、怒涛の回収をする結末。 爽快感のあるストーリー展開を…

旅猫リポート:有川 浩【感想】

勘のいい人なら物語のかなり早い段階で、主人公の悟がナナを飼えなくなった理由に気付きます。遅くとも、「Report-03 スギとチカコ」の章でのトラマルの台詞で、確実に気付くでしょう。ナナを飼えなくなった理由が、単なるリストラでないことを。 悟とナナを…

風に舞いあがるビニールシート:森 絵都【感想】

第135回直木賞受賞作。 森 絵都の作品は「カラフル」を読んで以来、2作目です。「カラフル」は中高生向けの印象でした。 本作は、6編から成る短編集です。それぞれが独立した話であり、全く関係性がありません。 しかし、6編には共通するテーマがあると思…

空飛ぶタイヤ:池井戸 潤【感想】

物語の発端となる事故。事件と言ってもいいかもしれません。 走行中のトラックのタイヤが外れ、そのタイヤの直撃を受け母親が死亡し、子供が軽傷を負う。 この事故を聞き、多くの人がある事故を思い浮かべるはずです。 2002年1月10日に横浜で起きた痛ましい…

i:西 加奈子【感想】

読後には、何とも表現し難い感情が心に残りました。 感動と一言で言えるほど、単純な気持ちではない気がします。では、感動でなければ何なのか。 結末に対する喜びでもなく、納得でもなく、考えさせられるということでもない。主人公のアイに対する純粋な共…

夢見る黄金地球儀:海堂 尊【感想】

海堂尊と言えば「医療ミステリー」を思い浮かべます。現役医師である海堂尊だからこそ描ける作品です。 「夢見る黄金地球儀」は、医療から離れ、黄金地球儀を盗むドタバタコメディ劇と言ったところでしょうか。ドタバタ感とコメディ感が、やたらと目立ちます…

ハーモニー:伊藤計劃【感想】

数少ない伊藤計劃の長編のひとつです。 「屍者の帝国」を彼の長編にカウントしなければ、「ハーモニー」が最後の長編作品ということになります。彼独自の世界観により設定された近未来を舞台に、人間が人間として存在する意味や価値にまで踏み込んだ作品です…