読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(作家名)-あ行の作家

『残り全部バケーション』:伊坂幸太郎【感想】|結末は読者に委ねられた?

五章から成る連作短編集。各短編ごとで完結してますが、それぞれが関係し合っています。第五章を読むと、今までの物語が最終章のための伏線であったようにも感じます。全てが最終章のためだけに存在していた訳ではないですが。 裏稼業に生きる「溝口」と「岡…

『きみにしか聞こえない』:乙一【感想】|彼女たちの苦しみは救われたのだろうか

乙一作品を読むのは、本作が初めてです。表題作を含む3篇の短編です。短編の中でも、かなり短い部類に入ると思います。登場人物は少なく、それほど複雑なストーリーでもありません。それぞれの短編に関係性がある訳でもないので、読み応えはそれほどないと…

『フーガはユーガ』:伊坂幸太郎【感想】|だけど僕たちは、手強い

伊坂幸太郎の1年ぶりの新作長編。私はまだ、彼の小説を全て読んでいません。未読の作品があるにもかかわらず、新作が出ると嬉しい。出版順に読んでいるのですが、新作ということで我慢できずに読んでしまいました。第一期の作品ほど軽妙な会話や伏線が際立…

『夜の国のクーパー』:伊坂幸太郎【感想】|思い込みが目の前を見えなくさせる

猫が言葉を話す。物語の始まりから非現実的です。空想の国を舞台にしたファンタジー的な物語と思いながら読み始めました。舞台となる場所も、現実には存在しない「この国」と「鉄国」です。しかし、場面が変わると様相が一気に変化します。空想の世界かと思…

『PK』:伊坂幸太郎【感想】|臆病は伝染する。そして勇気も伝染する。

「PK」「超人」「密使」の3つの中篇から成る連作集。一度目は読み進めるほど時間軸や各話の関係性に混乱し、二度読みしました。二度読みしても、全ての繋がりを理解し納得できたかと言うと、疑問点も多々残ります。私の理解力の問題なのかもしれませんが。…

『蜜蜂と遠雷』:恩田陸【感想】|文字から音楽が溢れ出る

史上初の直木賞・本屋大賞のW受賞作。ピアノコンクールの物語なので、引き込まれるかどうか疑問を感じながら読み始めました。何故なら、私はクラシックが詳しくありません。正直、ほぼ知らないと言っていい。曲のタイトルを聞いてもイメージできない。単行…

『オリンピックの身代金』:奥田英朗【感想】|逃れられない貧富の差

時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。その東京オリンピック自体が人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人。国の威信を懸けたオリンピックの開催を成し遂げるために、全…

『消滅』:恩田 陸【感想】|閉じ込められた空港。果たしてテロリストは?

単行本500ページ超に及ぶ長編です。入国を拒否された11人が、閉じ込められた日本の国際空港の別室で繰り広げるテロリスト探し。クローズド・サークルを舞台にしたミステリーです。11人の中に高度なヒューマノイドロボットのキャスリンが登場し、SF的要素も加…

『マリアビートル』:伊坂幸太郎【感想】|東北新幹線に集結した殺し屋たちの運命は・・・

位置付けとしては「グラスホッパー」の続編です。続編と言っても、直接的なストーリーの繋がりはあまりありません。グラスホッパーで登場した人物が数人登場していますが、前作を読んでいなくてもストーリーを理解する上で支障はないでしょう。「マリアビー…

『バイバイ、ブラックバード』:伊坂幸太郎【感想】|五つの別れのストーリー

6話から成る連作短編集。5人の女性と付き合っていた主人公 星野一彦が、ある事情から、その女性たちに別れを告げに回ります。太宰治の「グッド・バイ」の内容をオマージュした作品。と言っても、私は「グッド・バイ」を読んでいませんが。伊坂幸太郎が太宰…

『クジラの彼』:有川 浩【感想】|自衛官の恋愛に心が引き寄せられる

自衛隊を舞台にしたラブコメ。有川浩の持ち味がたっぷりと楽しめる作品です。6編の短編から成る短編集。登場人物は自衛隊員。自衛隊員という縁遠い世界の人々の恋愛模様を、甘く描いています。まるで、高校生のような初々しさすら感じさせるほどです。ドロ…

『オー!ファーザー』:伊坂幸太郎【感想】|4人の父親の存在が自然に見えてくる

ゴールデンスランバー以降、作風が変化している伊坂幸太郎。しかし「オー!ファーザー」は、それ以前の伊坂幸太郎らしさが前面に出た作品です。読者をニヤリとさせる会話の応酬。伏線を張り巡らし、怒涛の回収をする結末。爽快感のあるストーリー展開を楽し…

『旅猫リポート』:有川 浩【感想】|サトルとナナの最後の旅

勘のいい人なら物語のかなり早い段階で、主人公の悟がナナを飼えなくなった理由に気付きます。遅くとも「Report-03 スギとチカコ」の章でのトラマルの台詞で、確実に気付くでしょう。ナナを飼えなくなった理由が単なるリストラでないことを。 悟とナナを待ち…

『空飛ぶタイヤ』:池井戸 潤【感想】|巨大な企業に戦いを挑む

物語の発端となる事故。事件と言ってもいいかもしれません。走行中のトラックのタイヤが外れ、そのタイヤの直撃を受け母親が死亡し子供が軽傷を負う。この事故を聞き、多くの人がある事故を思い浮かべるはずです。2002年1月10日に横浜で起きた痛ましい事故で…

『ハーモニー』:伊藤計劃【感想】|ミァハが求めた世界は・・・

数少ない伊藤計劃の長編のひとつです。「屍者の帝国」を彼の長編にカウントしなければ、「ハーモニー」が最後の長編作品ということになります。彼独自の世界観により設定された近未来を舞台に、人間が人間として存在する意味や価値にまで踏み込んだ作品です…

『SOSの猿』:伊坂幸太郎【感想】|物語の因果はどこにあるのか

「私の話」と「猿の話」のふたつの物語から構成されています。共通点もなく、交わらないふたつの物語が最終的にどのように関係していくのか。伊坂幸太郎ならば、きっと意表を突きながらも、納得出来る結末を用意しているのだろうと期待してしまいます。結末…

『あるキング』:伊坂幸太郎【感想】|Fair is foul , and foul is fair

伊坂幸太郎は、作品が文庫化する時に加筆・修正することがあります。前回読んだ「モダンタイムス」もそうでした。「あるキング」も、雑誌連載時・単行本・文庫とそれぞれに加筆修正されてます。単行本化の書き直しの時は、本筋は同じだが違った雰囲気の小説…

『将棋の子』:大崎善生【感想】|将棋は彼らに何を与え、何を奪うのか。

藤井聡太棋士の影響で注目を集めている将棋界。光の当たる表舞台で活躍する棋士たちの陰には、多くの夢破れた若者たちがいます。奨励会というプロ棋士になるための競争の中で敗れ去り、消えていった若者たちの闘いとその後の人生を描いたノンフィクション小…

『モダンタイムス』:伊坂幸太郎【感想】|勇気はあるか?

「魔王」から50年後が舞台です。魔王の続編とも言えますが、物語が続いている訳ではありません。時間軸として魔王の延長線上にありますし、共通する登場人物として安藤詩織や潤也なども登場します。主人公である「渡辺」も、安藤潤也に連なる者として描かれ…

『マツリカ・マジョルカ』:相沢沙呼【感想】|彼女の命令に従う時、彼の何かが変わっていく

相沢沙呼のマツリカシリーズ第一弾。短編4編から構成される小説です。高校生の頃に読んでいれば、違った感想を持っただろう。もっと主人公である「柴山祐希」に共感できたかもしれません。だからと言って、全く共感出来ない訳でもありません。自分が高校生…

『民王』:池井戸 潤【感想】|今の政治家は、政治家としての矜持を持っているのか

ドラマを先に観ていたので、小説を読んでいて登場人物の印象がドラマの印象に引っ張られてしまいます。ただ、ドラマのキャスティングは小説のイメージに近いかなと感じたので違和感はありませんでした。 池井戸潤の小説らしく爽快感があり、読んでいて楽しい…

『虐殺器官』:伊藤計劃【感想】|贖罪をするために罪を作り出す

この小説を読んで、ふたつのことを感じました。まずは、これがデビュー作なのかという驚きです。 設定は、9.11以降。フィクションでありながら、現実感の伴う設定に驚かされます。 テロとの戦いの果てに辿り着いた管理体制 軍隊 先進国と後進国 世界は、この…

『ゴールデンスランバー』:伊坂幸太郎【感想】|おまえ、オズワルドにされるぞ

自分の眼で世界を見て判断し、自分の意志で生きていくこと。惰性で流され、何も考えないで生きていることが、どれほど恐ろしいことなのか。伊坂幸太郎が描きます。

『フィッシュストーリー』:伊坂幸太郎【感想】|無音が及ぼした事象の連鎖が世界を変える

完全に独立した4つの中編から成る「フィッシュストーリー」です。収録作品は、「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の4作品です。文庫では中編と紹介されていますが、「動物園のエンジン」と「サクリファイス」は短…

『陽気なギャングの日常と襲撃』:伊坂幸太郎【感想】|陽気な4人のギャングが再び。

何も考えずに読めて、単純に笑えて楽しめる極上のエンターテイメント作品です。特に、深いメッセージ性は感じません。だからこそ、気楽に読めます。「魔王」のメッセージ性の強さとは全く違います。同じ作家でありながら、バリエーション豊かだなと感じます…

「伊坂幸太郎作品」出版順一覧 読むなら出版順?!【随時更新】

私が、特に好きな作家の一人である「伊坂幸太郎」さん。 彼が作り出す小説の世界は、読者を惹きつけ離さない魅力があります。その魅力は、軽妙な会話や緻密に計算されたストーリー展開はもちろんですが、個性溢れる登場人物たちの魅力が小説の世界をさらに引…

『終末のフール』:伊坂幸太郎【感想】|死が迫ることで、生きることを真剣に考える

「八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する」 ハリウッド映画では、よくある設定です。その危機を脱するため、リーダーシップを発揮する指導者や危険を顧みず立ち向かう英雄を描くのが、この設定の常です。人類が一丸となり危険を回避することで爽快感を得ま…

『砂漠』:伊坂幸太郎【感想】|砂漠に出て、初めてオアシスの素晴らしさが分かる

面白かった。感動もある。あっという間に読み終わってしまいました。自分が大学生だった頃を思い出し、登場する人物たちに共感しながら読んだからこそ面白かった。自分が大学生の時に、小説の中のような劇的な出来事や個性溢れる人物がいた訳ではありません…

『魔王』:伊坂幸太郎【感想】|考えろ、考えろ、マクガイバー

表題作「魔王」と、その5年後を描いた「呼吸」の中編2編から成る小説です。これまでの伊坂幸太郎の小説とは、全く違うモノです。伊坂幸太郎と言えば、伏線を張り、最後に回収する。その手腕が並外れている作家という印象を持っていました。それを期待して…

『海の見える理髪店』:荻原 浩【感想】|6編の短編が描く家族の物語

第155回直木賞受賞作。表題作「海の見える理髪店」を含む6編から成る短編集ですが、それぞれの短編に関連性はありません。完全に独立した物語です。ただ、その中にテーマを求めるとしたら「家族」です。親子の物語。夫婦の物語。喪失であったり再会であった…