読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(作家)

『遠まわりする雛』:米澤穂信【感想 後半】|奉太郎たちの一年間の軌跡

【感想 前半】に続く、後半の四短編の感想です。 「遠まわりする雛」の内容 「遠まわりする雛」の感想 心あたりのある者は あきましておめでとう 手作りチョコレート事件 遠まわりする雛 終わりに 「遠まわりする雛」の内容 省エネをモットーとする折木奉太…

『遠まわりする雛』:米澤穂信【感想 前半】|奉太郎たちの一年間の軌跡

古典部シリーズの四作目。シリーズ初の短編集です。神山高校入学後、奉太郎たちの一年間を短編で綴ります。「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」は文化祭(通称カンヤ祭)に繋がる一連の物語です。本作は、三つの物語の狭間とその後の物語…

『クドリャフカの順番』:米澤穂信【感想】|十文字事件と文集「氷菓」は結末は・・・

古典部シリーズの第三作目。「氷菓」「愚者のエンドロール」で鍵となった神山高校文化祭(通称カンヤ祭)が舞台です。「クドリャフカの順番」を含めて、ひとつの流れになっています。 『氷菓』:米澤穂信【感想】|古典部シリーズの原点。登場人物の個性が溢…

『ICO -霧の城-』:宮部みゆき【感想】|ぼくが君を守る。だから手を離さないで

文庫の巻末にある米光一成氏の解説で、本作がゲームのノベライズであることを知りました。あまりゲームをしないので、初めて聞くゲームの名前です。ノベライズされるほどのストーリー性を持ったゲームなのでしょう。 ゲームの「ICO」を好きかどうか。やり込…

『クローズド・ノート』:雫井脩介【感想】|そのノートが開かれたとき・・・

携帯電話サイトで配信されていた作品のようです。私にとってはあまり馴染みのない媒体です。映画化もされています。 タイトルを聞いて思い浮かべるのは映画の初日舞台挨拶です。沢尻エリカの不機嫌な態度が今でも頭に残っていますし、「別に」という言葉も聞…

『火星に住むつもりかい?』:伊坂幸太郎【感想】|世の中にはいろんな「正義」ばかり。

タイトルからは予想できない内容です。仙台を舞台に監視社会や国家権力の恐ろしさが描かれます。物語の冒頭は、中世の魔女狩りを連想させながら恐ろしい状況が続きます。現代の魔女狩りです。 過去の誤った行いが、現代では決して起こりえないというのは幻想…

『夏への扉』:ロバート・A・ハインライン【感想】|かくいうぼくも、夏への扉を探していた

SFの名作と言われています。1956年発表なので古典作品になるでしょうか。ロバート・A・ハインライン、アーサー・C・クラーク、アイザック・アシモフはビッグ・スリーと称されています。 物語の舞台は1970年と2000年です。発表当時はある程度予想のできる近…

『卒業』:東野圭吾【感想】|刑事前夜、最初の事件

加賀恭一郎シリーズの第一作目。東野圭吾らしい読みやすい文章ですが、ミステリーのトリックは複雑です。それを読み応えと捉えるかどうかです。 刑事でも職業探偵でもなく、大学生の加賀が事件の謎を解明していきます。加賀を含む仲間7名(牧村祥子は最初の…

『ベルリンは晴れているか』:深緑 野分【感想】|瓦礫の街で彼女の目に映る空は何色か

2019年本屋大賞第3位 第160回直木賞候補 「このミステリーがすごい!2019年版」第2位 書き出せばキリがないくらい高い評価を得ています。第二次世界大戦後のドイツを舞台にしたミステリーです。幕間に戦中のドイツを挟むことで、第二次世界大戦のリアリテ…

『V.T.R.』:辻村深月【感想】|アタシはあなたを愛してる

「スロウハイツの神様」に登場した人気作家「チヨダ・コーキ」のデビュー作という設定です。作中作家の作品なので、チヨダ・コーキの個性を意識しているのが感じ取れます。中高生向けのライトノベル風でありボリュームも少ない。 『スロウハイツの神様』:辻…

『愛なき世界』:三浦しをん【感想】|恋のライバルは草でした

タイトルを見ると、人間の内面性を描いた重厚で考えさせられる作品だと思わせます。実際に読んでみると、かなりライトな印象です。文章が読みやすいし、テンポもいいからかもしれません。ただ、想像と違って物足りなさを感じたのも事実ですが。「まほろ駅前…

『わたしを離さないで』:カズオ・イシグロ【感想】|彼女たちの人生の意味は・・・

カズオ・イシグロの作品を読むのは3作目になります。綾瀬はるか主演でドラマ化されており、映画化もされています。内容は何となく知っていましたが、読んでみると登場人物の心の内が想像以上に奥深い。原文でなく日本語訳なので、カズオ・イシグロの文体・…

『ひと』:小野寺 史宜【感想】|たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。

2019年本屋大賞第2位。人との繋がりを描いた作品です。 生きていく上で大事なものはいろいろありますが、人との繋がりもそのうちの一つです。誰にも関わらず、たった一人で生きていくことは難しい。一人で生きていると思っている人も、多くの人の支えがある…

『ある男』:平野 啓一郎【感想】|愛したはずの夫はまったくの別人だった

2019年本屋大賞第5位。過去が人を形作るならば、人を愛することは積み上げてきた過去も含めて愛することになります。偽りの過去であったならば、現在の愛はどうなるのか。そもそも愛の対象とは一体何なのか。現在だけでは駄目なのだろうか。 偽りには二種類…

『火星の人』:アンディ・ウィアー【感想】|70億人が、彼の還りを待っている

2015年にマット・デイモン主演で映画化されています。3Dで鑑賞しましたが、壮大な映像とスケールに引き込まれた記憶があります。SFにサバイバル要素を組み合わせています。火星が舞台ですが現実感があります。近い将来の有人火星探査の可能性を感じます…

『キャプテンサンダーボルト』:阿部和重、伊坂幸太郎【感想】|世界を救うために、二人は走る

阿部和重と伊坂幸太郎の合作小説。伊坂幸太郎はお気に入りの作家ですが、阿部和重の小説は読んだことがありません。芥川賞作家と本屋大賞受賞作家に重なり合う部分があるのでしょうか。 全体的に伊坂風に感じてしまうのは、私が阿部和重の作品を読んだことが…

『有頂天家族』:森見登美彦【感想】|面白きことは良きことなり!

京都を舞台にした現実と非現実が混ざり合ったファンタジー。森見ワールドに引き込まれます。舞台は現実の京都でありながら、登場人物は虚構です。両者が混沌とする世界には不思議と違和感がありません。京都という土地の深淵さでしょうか。 天狗と狸と人間が…

『天空の蜂』:東野圭吾【感想】|標的は原発。人質は国民。

2015年に、江口洋介主演で映画化されています。本木雅弘、綾野剛、仲間由紀恵などそうそうたるメンバーが出演しています。大画面の迫力に圧倒されました。小説を読むと細部の違いに気付きますが違和感はあまりありません。 小説は1995年に刊行されていますの…

『天使と悪魔』:ダン・ブラウン【感想】:ターゲットはヴァチカン

ロバート・ラングドンシリーズの第一作目。第二作目の「ダ・ヴィンチ・コード」が世界的にヒットし、どちらも映画化されています。「ダ・ヴィンチ・コード」が先に上映されていますが、小説は「天使と悪魔」が先です。「天使と悪魔」の映画を観たのはかなり…

『人形館の殺人』:綾辻行人【感想】|打ち砕かれる世界の音を聴け

館シリーズの四作目。新本格ミステリーを打ち立てたシリーズです。「十角館」「水車館」「迷路館」は、館の中というクローズドサークルで起きた殺人を解明する王道ミステリーです。様々なトリックと複雑な人間関係を組み合わせ、納得感のある結末でした。本…

『優しい死神の飼い方』:知念 実希人【感想】|事件に挑む”死神”はゴールデンレトリバー

最初に目を引くのが文庫表紙です。柔らかい印象の絵に加え、タイトルに優しいの文字が。死神との対比が気になります。 ホスピスを舞台にした物語は、いかにも現役医師の著者らしい。余命を知った患者たちの精神がミステリーの要素になるのでホスピスは重要で…

『ナポレオン3 転落篇』:佐藤 賢一【感想】|果たすべき、使命がある

転落篇が一番スピード感があります。二度の退位と復権、そして人生の終末へと続きます。ナポレオンの失脚は、フランス国家の変革です。一族を次々と王に任じれば、敵を作ることになるのは明白です。王政を排したフランス革命を知っているナポレオンが何故で…

『ナポレオン2 野望篇』:佐藤 賢一【感想】|世界を、手に入れろ

イタリアで勝利を得て、パリに凱旋します。英雄としてフランスでの存在感は増し、結果、イギリス方面軍司令官に任じられます。イギリスはフランスにとって大きな敵だからです。ナポレオンにとって厳しい敵であることは間違いありません。少なくとも海戦にお…

『ナポレオン1 台頭篇』:佐藤 賢一【感想】|道を拓け、己の力で

「ナポレオン・ボナパルト」 の名前を知らない人はいないだろう。フランス革命期の初代フランス皇帝であり、数多くの足跡を残している。では、彼の人生はどうだろうか。どのような幼少期を過ごし、どのようにして皇帝にまで上り詰めたのか。結果でなく、ナポ…

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ【感想】|家族よりも大切な家族

2019年本屋大賞受賞作です。帯は「家族よりも大切な家族」。家族という同じ言葉で比較される家族とは、一体何でしょうか。家族はいくつもあるのでしょうか。 主人公の森宮優子は4回名字が変わり、7回家族の構成が変わります。相当に複雑な環境で育っていま…

『聖女の救済』:東野圭吾【感想】|ガリレオが迎えた新たな敵、それは女。

ガリレオシリーズの長編第二作目。ガリレオシリーズは私の好きな作品のひとつです。以前、ドラマを観ていたので、真柴綾音が出るたびに天海祐希が頭に浮かんでしまいます。ドラマと小説では細部の設定が少し変えられていますが、トリック自体は同じです。答…

『傲慢と善良』:辻村深月【感想】|圧倒的な”恋愛”小説

圧倒的な恋愛小説でありながら、タイトルは「傲慢と善良」です。どのような内容か気になってしまいます。純粋な感情として恋愛を描くのであれば、善良はあっても傲慢はありません。しかし、著者は人の心の奥底を描きます。人を形成した過去まで含めて、心の…

『ラプラスの魔女』:東野圭吾【感想】|彼女は計算して奇跡を起こす

殺人の雰囲気が漂う硫化水素死亡事故から始まり、遠く離れた場所で同じような硫化水素の死亡事故が起こることで事態が動き始めます。事故だとしても再現性はなく、事件だとしても実行不可能です。事故とも事件とも言えない状態で、それぞれの見ている角度か…

『アイネクライネナハトムジーク』:伊坂幸太郎【感想】|ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。

6つの物語で構成される短編集です。それぞれの物語の登場人物が時空を超えて繋がります。各短編が深く関わり合っています。「出会い」をテーマにしていながら、伊坂幸太郎が書くと恋愛小説も少し独特です。彼の個性が光ります。 著者のあとがきで触れていま…

『宝島』:真藤順丈【感想】|沖縄のルーツがここに

第160回直木賞受賞作。サンフランシスコ講和条約から沖縄返還協定までのアメリカ施政権下の沖縄が舞台です。基地の島と言われている現在の沖縄のルーツが描かれています。沖縄戦の悲劇と20年に及ぶアメリカの施政権下に置かれた沖縄は過酷な運命を辿っていま…