読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(作家)

『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』:伊藤計劃【感想】|ノベライズに留まらない魅力

メタルギアシリーズの第6作目「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」のノベライズです。プレステ3のゲームということですが、私はプレイしたことがありません。そもそもメタルギアシリーズそのものをプレイしたことがないのですが。 著…

『さよならドビュッシー』:中山七里【感想】|彼女の存在はピアノの中に

第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。本作で登場するピアニスト「岬洋介」のシリーズ第1作目になります。2013年に映画化、2016年にドラマ化されています。映画のキャスティングは橋本愛と清塚信也。ドラマは黒島結菜と東出昌大です。現役ピア…

『沈黙のパレード』:東野圭吾【感想】|沈黙の向こうに隠された真実

ガリレオシリーズ3年ぶりの長編作品です。「猛射つ」の改稿による「禁断の魔術」以来です。オリジナル長編作品としては「真夏の方程式」からの8年ぶりになります。ガリレオシリーズは私のお気に入りのシリーズです。物理的トリックを使いながらも読みやす…

『シーソーモンスター』:伊坂幸太郎【感想】|「海族」と「山族」の対立構造を描く

表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中篇2作品が収録されています。文芸誌「小説BOC」の競作企画「螺旋」プロジェクトの作品です。8組9名の作家が3つのルールに従って、古代から未来までの日本を舞台に2つの種族が対立する歴史を描い…

『続 横道世之介』:吉田修一【感想】|世之介は変わらない

タイトル通り、「横道世之介」の続編です。前作は本屋大賞3位を受賞しており、私のお気に入りのひとつです。大学一年生の1年間を切り取って描かれた彼の日常に引き込まれました。 「続 横道世之介」は、留年したことでバブル景気の売り手市場に乗り遅れ、…

『終戦のローレライ』:福井晴敏【感想】|あるべき終戦の形とは・・・

私の好きな作家 福井晴敏の代表作です。文庫で4冊の大長編ですが、中弛みは一切ありません。映画も制作されていますが、どこまで映画を意識していたのか疑問に思います。少なくとも、映画を意識し過ぎていれば、ここまでの長編にはならなかったでしょう。 …

『迷路館の殺人』:綾辻行人【感想】|迷路と見立てに潜む謎

「館シリーズ」三作目です。中村青司・島田 潔も馴染みが出てきました。本作は、作中作と見立て殺人を軸としたミステリー作品です。作中作自体に仕掛けがあることは予想できます。ただ、「迷路館の殺人」が始まると作中作であることを忘れてしまいます。 迷…

『彼女は存在しない』:浦賀和宏【感想】|多重人格に潜む謎

Twitterを見ていると読了ツイートが登場していました。18年前の作品です。私は知らなかったのですが、中居文庫で取り上げられていたようです。読了ツイートは概ね高評価のものが多い。18年前なので設定や状況が古く感じる部分はあります。携帯電話やストラッ…

『下町ロケット ガウディ計画』:池井戸 潤【感想】|小さな宇宙「人体」への挑戦

前作は、続編を意識させる終わり方でした。というより続編ありきの終わり方です。「ガウディ計画」も著者の定番「勧善懲悪」を感じさせる作品です。前作から引き続き登場している人物は、本作においても生き方に全くブレがありません。ドラマの影響で阿部寛…

『青くて痛くて脆い』:住野よる【感想】|変わっていくことは成長なのだろうか?

大学生が主人公の小説を読むと、自分が大学生だった頃を思い出します。大学生活が楽しかったのは自由だったからでしょう。お金はないが、時間を持て余していました。その時間を有効活用せずに変化のない日常を過ごしていました。ただ、日常に変化はなくても…

『ワイルド・ソウル』:垣根涼介【感想】|棄民政策の果てに・・・

第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞の三賞を受賞した垣根涼介の代表作です。戦後の南米移民政策をベースに、ハードボイルド・ミステリー・ヒューマンドラマと言ったあらゆる要素を含んだ作品です。スピード感溢れる展開に…

『海辺のカフカ』:村上春樹【感想】|「僕」が立ち向かう先にあるものは・・・

少年カフカとナカタさんの2つのパートが交互に語られていきます。奇数章は一人称で少年カフカが描かれ、偶数章が三人称でナカタさんが描かれています。ふたつの世界が交互に描かれているのは「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を想起させます…

『謎解きはディナーのあとで2』:東川篤哉【感想】|影山の推理が再び・・・

同タイトルの続編です。前作は2011年の本屋大賞を受賞しています。執事の影山を安楽椅子探偵に見立てたミステリー作品ですが、コメディの要素も含まれてます。緻密に計算されたミステリーとコメディの組み合わせが絶妙です。どちらかと言えばコメディ色の方…

『魔眼の匣の殺人』:今村昌弘【感想】|予言の裏にある真実は・・・

「屍人荘の殺人」では、ゾンビを使ったクローズド・サークルに驚かされました。クローズド・サークルの作り方として新鮮であり、バイオテロという根拠を持ってきているので全くの虚構とは思わせないところがありました。そうは言っても現実味があるという訳…

『死神の浮力』:伊坂幸太郎【感想】|死神の千葉が再び現れる

「死神の精度」で登場した新しい死神像は、とても独特でユーモアに富んでいました。前作を読んでからかなり経ちますが、千葉の印象は薄まっていません。インパクトが大きかったということですし、インパクトも楽しさの要因です。ただ「死神の精度」に対し、…

『水車館の殺人』綾辻行人【感想】|1年前と現在が繋がった時・・・

綾辻行人の館シリーズの第二作目。「十角館の殺人」の次作の構想をしている際に、館シリーズを思いついたと述べています。館シリーズの第二作目ですが、著者がシリーズを意識して執筆した最初の作品です。 「十角館の殺人」を読んだ時、私は伏線らしい伏線を…

『子どもたちは夜と遊ぶ』:辻村深月【感想】|浅葱に救いはあったのだろうか

文庫で1,000頁を超える長編です。結末で明かされた謎の答えがあまりに予想外でした。読んできたことの整合性を確認したくなったので2度読みです。ミステリー小説で謎が明かされると、これまでの出来事に意味が与えられ、納得感と充実感があるものです。結末…

『ガソリン生活』:伊坂幸太郎【感想】|緑デミが謎を追う?

車を擬人化し物語を紡いでいきますが、仙台を舞台にした現実的(?)な物語です。登場するエピソードは、結構物騒なものが多い。普通に生活していれば到底巻き込まれないようなことばかりです。しかし、伊坂幸太郎が書けば軽快なストーリーになります。本作…

『熱帯』:森見登美彦【感想】|かくして彼女は語り始め、ここに「熱帯」の門は開く

2019年本屋大賞の第4位にランキングされた作品です。著者が描く独特の世界観は何かと話題になります。今回が3冊目なので森見ワールドに関しては初心者ですが、一度読むと忘れられない雰囲気を感じ取れます。言葉では言い表しにくいですが。 誰も読み終えた…

『屋上のテロリスト』:知念実希人【感想】|テロリストの裏に隠された彼女の真実

著者の名前を聞いて思い浮かぶのは医療ミステリーです。彼の作品をそれほど多く読んでいませんが、一度感じたイメージはなかなか離れない。本作では医療は登場しません。 物語に潜む謎を解くという意味ではミステリー作品です。ただ、事件が起こり、謎が発生…

『インフェルノ』:ダン・ブラウン【感想】|ダンテの神曲が抱く謎

ロバート・ラングドン教授を主人公にしたサスペンス小説の第4作目。「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」は映画化されており、当時はかなり話題になりました。この2作は小説も読みましたし、映画も観ました。かなり前なので再読した上で、いずれ感想を…

『ゲームウォーズ』:アーネスト・クライン【感想】|70年代・80年代に思いを馳せる

2018年4月に映画化された「レディ・プレイヤー1」の原作小説です。映像で表現される映画と文章で表現される小説では、かなり趣が違う印象です。映画を先に観ているので、読み進めれば映画のシーンが頭に思い浮かびます。映画の感想は、以下のリンクからどう…

『共喰い』:田中慎弥【感想】|淀んだ川縁で描かれる鬱屈した心象風景

第146回芥川賞受賞作。円城塔氏の「道化師の蝶」との同時受賞です。全体を通して、暗く鬱屈したねっとりと纏わりつくような不快感というか気持ち悪さを感じざるを得ない作品でした。読みたくなくなるというものではなく、人間の負の部分だけを抽出し表現して…

『百貨の魔法』:村山早紀【感想】|心が柔らかくなっていく

第15回本屋大賞で9位になった作品。「桜風堂ものがたり」に登場した星野百貨店と、そこで働く従業員が織りなす美しい物語です。幕間を含めれば6章から構成されていて、それぞれの章で視点が変わる群像劇です。 百貨店に現れるという魔法を使う子猫をストー…

『屍人荘の殺人』:今村昌弘【感想】|狭まっていくクローズド・サークル

第27回鮎川哲也賞受賞作。「このミステリーがすごい!2018」「2018本格ミステリ・ベスト10」「2018週刊文春ミステリーベスト10」でも第1位を受賞。第15回本屋大賞や第18回本格ミステリ大賞に登場するなど高い評価を受けています。 様々な賞を受賞したり、多…

『リップヴァンウィンクルの花嫁』:岩井俊二【感想】|ネットと現実の狭間で・・・

映像化を念頭に置きながら執筆した作品なのでしょう。読み進めていくほどに、自然と映像が頭に浮かんできます。それだけ風景描写が上手い。難しい言葉や表現を用いずに、それでいながら明確に状況がイメージ出来ます。映画監督だからこそ出来る文章表現力で…

『スマホを落としただけなのに』:志賀 晃【感想】|「落としただけ」では済まない

第15回「このミステリーがすごい」の隠し玉として加筆・修正の後、発刊された作品。北川景子主演で映画化もされています。ミステリーというよりは、サスペンスホラーと言ったところでしょうか。謎解きの要素もありますが、追い詰められていく恐怖感が前面に…

「辻村深月 長編小説」読む順番は出版順がいい?【随時更新】

人気作家の一人である「辻村深月」さん。彼女が新刊を出版すると、それだけで話題に上がります。これまで出版されてきた素晴らしい作品が、現在の地位と人気を築いているのでしょう。 長編だけでもかなりの作品数です。私も全てを読んでいる訳ではありません…

『星をつなぐ手 ー桜風堂ものがたりー』:村山早紀【感想】|町の書店が消えた時、失ったものの大きさに気付くのだろうか

第14回本屋大賞5位の「桜風堂ものがたり」の続編。桜風堂で働くことになった月原一整のその後だけでなく、銀河堂書店の書店員たちのその後も描かれています。書店員である彼らを描くことで、町の書店が置かれている厳しい現状をテーマにしているのは前作と…

『盤上の向日葵』:柚月裕子【感想】|彼が思った「潮時」とは一体・・・

第15回本屋大賞第2位のミステリー小説です。ミステリー小説でありながら、ヒューマンドラマとしての側面を強く感じます。死体遺棄事件の謎を解明するミステリーですが、序章の段階で事件に関わる人物が特定されています。異例の経歴を持ってプロ棋士になっ…