読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

小説(作家)-あ行の作家

『ジャイロスコープ』:伊坂幸太郎【感想】|文庫オリジナル短編集

デビュー15周年という節目を記念して発刊された文庫オリジナルの短編集。ジャイロスコープのために書き下ろされたのは、最終話「後ろの声がうるさい」のみです。他の短編はアンソロジーや雑誌のために執筆された作品です。 連作短編ではないので各短編の間に…

『火星に住むつもりかい?』:伊坂幸太郎【感想】|世の中にはいろんな「正義」ばかり。

タイトルからは予想できない内容です。仙台を舞台に監視社会や国家権力の恐ろしさが描かれます。物語の冒頭は、中世の魔女狩りを連想させながら恐ろしい状況が続きます。現代の魔女狩りです。 過去の誤った行いが、現代では決して起こりえないというのは幻想…

『ひと』:小野寺 史宜【感想】|たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。

2019年本屋大賞第2位。人との繋がりを描いた作品です。 生きていく上で大事なものはいろいろありますが、人との繋がりもそのうちの一つです。誰にも関わらず、たった一人で生きていくことは難しい。一人で生きていると思っている人も、多くの人の支えがある…

『火星の人』:アンディ・ウィアー【感想】|70億人が、彼の還りを待っている

2015年にマット・デイモン主演で映画化されています。3Dで鑑賞しましたが、壮大な映像とスケールに引き込まれた記憶があります。SFにサバイバル要素を組み合わせています。火星が舞台ですが現実感があります。近い将来の有人火星探査の可能性を感じます…

『キャプテンサンダーボルト』:阿部和重、伊坂幸太郎【感想】|世界を救うために、二人は走る

阿部和重と伊坂幸太郎の合作小説。伊坂幸太郎はお気に入りの作家ですが、阿部和重の小説は読んだことがありません。芥川賞作家と本屋大賞受賞作家に重なり合う部分があるのでしょうか。 全体的に伊坂風に感じてしまうのは、私が阿部和重の作品を読んだことが…

『人形館の殺人』:綾辻行人【感想】|打ち砕かれる世界の音を聴け

館シリーズの四作目。新本格ミステリーを打ち立てたシリーズです。「十角館」「水車館」「迷路館」は、館の中というクローズドサークルで起きた殺人を解明する王道ミステリーです。様々なトリックと複雑な人間関係を組み合わせ、納得感のある結末でした。本…

『アイネクライネナハトムジーク』:伊坂幸太郎【感想】|ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。

6つの物語で構成される短編集です。それぞれの物語の登場人物が時空を超えて繋がります。各短編が深く関わり合っています。「出会い」をテーマにしていながら、伊坂幸太郎が書くと恋愛小説も少し独特です。彼の個性が光ります。 著者のあとがきで触れていま…

『天地明察』:生方 丁【感想】|暦は天と地を繋ぐ

第7回本屋大賞受賞作。史実を基にした時代・歴史小説です。主人公の渋川春海は囲碁棋士であり、天文暦学者でもあります。算術にも没頭します。自身の興味のある分野に関しては、とても探求心のある人物です。 渋川春海(安井算哲)の名前を教科書で見た記憶…

『首折り男のための協奏曲』:伊坂幸太郎【感想】|首折り男と黒澤が繋ぐ

7つの短編から構成されており、それぞれ独立した物語でありながら緩やかな関連性があります。首折り男で繋がっていて、黒澤で繋がっていて、若林夫妻で繋がっている。全てが一点に集束し、爽快感を得る結末ではありません。それぞれの短編で、それぞれの終…

『十二人の死にたい子どもたち』:生方 丁【感想】|13人目の謎は一体・・・

第156回直木賞候補で映画化もされた生方 丁の長編ミステリー作品です。注目された作品なので、かなりの期待度でした。タイトルも刺激的で興味を引きます。映画化もされていますが、ストーリーはほとんど知らない状態で読み始めました。 「死にたい子どもたち…

『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』:伊藤計劃【感想】|ノベライズに留まらない魅力

メタルギアシリーズの第6作目「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」のノベライズです。プレステ3のゲームということですが、私はプレイしたことがありません。そもそもメタルギアシリーズそのものをプレイしたことがないのですが。 著…

『シーソーモンスター』:伊坂幸太郎【感想】|「海族」と「山族」の対立構造を描く

表題作「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中篇2作品が収録されています。文芸誌「小説BOC」の競作企画「螺旋」プロジェクトの作品です。8組9名の作家が3つのルールに従って、古代から未来までの日本を舞台に2つの種族が対立する歴史を描い…

『迷路館の殺人』:綾辻行人【感想】|迷路と見立てに潜む謎

「館シリーズ」三作目です。中村青司・島田 潔も馴染みが出てきました。本作は、作中作と見立て殺人を軸としたミステリー作品です。作中作自体に仕掛けがあることは予想できます。ただ、「迷路館の殺人」が始まると作中作であることを忘れてしまいます。 迷…

『彼女は存在しない』:浦賀和宏【感想】|多重人格に潜む謎

Twitterを見ていると読了ツイートが登場していました。18年前の作品です。私は知らなかったのですが、中居文庫で取り上げられていたようです。読了ツイートは概ね高評価のものが多い。18年前なので設定や状況が古く感じる部分はあります。携帯電話やストラッ…

『下町ロケット ガウディ計画』:池井戸 潤【感想】|小さな宇宙「人体」への挑戦

前作は、続編を意識させる終わり方でした。というより続編ありきの終わり方です。「ガウディ計画」も著者の定番「勧善懲悪」を感じさせる作品です。前作から引き続き登場している人物は、本作においても生き方に全くブレがありません。ドラマの影響で阿部寛…

『魔眼の匣の殺人』:今村昌弘【感想】|予言の裏にある真実は・・・

「屍人荘の殺人」では、ゾンビを使ったクローズド・サークルに驚かされました。クローズド・サークルの作り方として新鮮であり、バイオテロという根拠を持ってきているので全くの虚構とは思わせないところがありました。そうは言っても現実味があるという訳…

『死神の浮力』:伊坂幸太郎【感想】|死神の千葉が再び現れる

「死神の精度」で登場した新しい死神像は、とても独特でユーモアに富んでいました。前作を読んでからかなり経ちますが、千葉の印象は薄まっていません。インパクトが大きかったということですし、インパクトも楽しさの要因です。ただ「死神の精度」に対し、…

『水車館の殺人』綾辻行人【感想】|1年前と現在が繋がった時・・・

綾辻行人の館シリーズの第二作目。「十角館の殺人」の次作の構想をしている際に、館シリーズを思いついたと述べています。館シリーズの第二作目ですが、著者がシリーズを意識して執筆した最初の作品です。 「十角館の殺人」を読んだ時、私は伏線らしい伏線を…

『ガソリン生活』:伊坂幸太郎【感想】|緑デミが謎を追う?

車を擬人化し物語を紡いでいきますが、仙台を舞台にした現実的(?)な物語です。登場するエピソードは、結構物騒なものが多い。普通に生活していれば到底巻き込まれないようなことばかりです。しかし、伊坂幸太郎が書けば軽快なストーリーになります。本作…

『ゲームウォーズ』:アーネスト・クライン【感想】|70年代・80年代に思いを馳せる

2018年4月に映画化された「レディ・プレイヤー1」の原作小説です。映像で表現される映画と文章で表現される小説では、かなり趣が違う印象です。映画を先に観ているので、読み進めれば映画のシーンが頭に思い浮かびます。映画の感想は、以下のリンクからどう…

『屍人荘の殺人』:今村昌弘【感想】|狭まっていくクローズド・サークル

第27回鮎川哲也賞受賞作。「このミステリーがすごい!2018」「2018本格ミステリ・ベスト10」「2018週刊文春ミステリーベスト10」でも第1位を受賞。第15回本屋大賞や第18回本格ミステリ大賞に登場するなど高い評価を受けています。 様々な賞を受賞したり、多…

『リップヴァンウィンクルの花嫁』:岩井俊二【感想】|ネットと現実の狭間で・・・

映像化を念頭に置きながら執筆した作品なのでしょう。読み進めていくほどに、自然と映像が頭に浮かんできます。それだけ風景描写が上手い。難しい言葉や表現を用いずに、それでいながら明確に状況がイメージ出来ます。映画監督だからこそ出来る文章表現力で…

『七つの会議』:池井戸 潤【感想】|積み上げられた不正に立ち向かう

2019年2月1日に劇場公開されます。映画化される小説が未読の場合、いつも頭を悩ませるのがどちらを先に読むか(観るか)という問題です。「空飛ぶタイヤ」の時も同じ悩みを抱えた気がします。結局は小説を先に読むことにしましたが、どちらが正解だったのかは…

『残り全部バケーション』:伊坂幸太郎【感想】|結末は読者に委ねられた?

五章から成る連作短編集。各短編ごとで完結してますが、それぞれが関係し合っています。第五章を読むと、今までの物語が最終章のための伏線であったようにも感じます。全てが最終章のためだけに存在していた訳ではないですが。 裏稼業に生きる「溝口」と「岡…

『きみにしか聞こえない』:乙一【感想】|彼女たちの苦しみは救われたのだろうか

乙一作品を読むのは、本作が初めてです。表題作を含む3篇の短編です。短編の中でも、かなり短い部類に入ると思います。登場人物は少なく、それほど複雑なストーリーでもありません。それぞれの短編に関係性がある訳でもないので、読み応えはそれほどないと…

『フーガはユーガ』:伊坂幸太郎【感想】|だけど僕たちは、手強い

伊坂幸太郎の1年ぶりの新作長編。私はまだ、彼の小説を全て読んでいません。未読の作品があるにもかかわらず、新作が出ると嬉しい。出版順に読んでいるのですが、新作ということで我慢できずに読んでしまいました。第一期の作品ほど軽妙な会話や伏線が際立…

『夜の国のクーパー』:伊坂幸太郎【感想】|思い込みが目の前を見えなくさせる

猫が言葉を話す。物語の始まりから非現実的です。空想の国を舞台にしたファンタジー的な物語と思いながら読み始めました。舞台となる場所も、現実には存在しない「この国」と「鉄国」です。しかし、場面が変わると様相が一気に変化します。空想の世界かと思…

『PK』:伊坂幸太郎【感想】|臆病は伝染する。そして勇気も伝染する。

「PK」「超人」「密使」の3つの中篇から成る連作集。一度目は読み進めるほど時間軸や各話の関係性に混乱し、二度読みしました。二度読みしても、全ての繋がりを理解し納得できたかと言うと、疑問点も多々残ります。私の理解力の問題なのかもしれませんが。…

『蜜蜂と遠雷』:恩田陸【感想】|文字から音楽が溢れ出る

史上初の直木賞・本屋大賞のW受賞作。ピアノコンクールの物語なので、引き込まれるかどうか疑問を感じながら読み始めました。何故なら、私はクラシックが詳しくありません。正直、ほぼ知らないと言っていい。曲のタイトルを聞いてもイメージできない。単行…

『オリンピックの身代金』:奥田英朗【感想】|逃れられない貧富の差

時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。その東京オリンピック自体が人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人。国の威信を懸けたオリンピックの開催を成し遂げるために、全…