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『ゆりかごで眠れ』:垣根涼介【感想】|愛は十倍に、憎悪は百倍にして返せ

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「ゆりかごで眠れ」の内容

 凄絶な少年時代を過ごしながらも、コロンビア・マフィアのボスにまで上りつめた日系二世のリキ・コバヤシ・ガルシア。この日常に馴染めずも生きる、元刑事・若槻妙子。リキなしには生きていけない元浮浪児・カーサ。組織の中で歪み、すり潰されていく刑事・武田。ラティーノの殺し屋・パパリトとパト―。血と喧騒の中を、全速で駆け抜けた男達を描く。 【引用:「BOOK」データベース】 

「ゆりかごで眠れ」の感想

 南米コロンビアのマフィアの話です。といっても、舞台は日本。日系二世リキ・コバヤシ・ガルシアは、ライバル組織に売られた部下の奪還と復讐のために来日します。彼と少女カーサ、元刑事の若槻妙子を中心に物語は進みます。  

 物語の根底には、戦後の南米への日系移民の悲劇があります。戦後の移民(棄民)政策によって生まれた日本人の悲劇が、その二世であるリキの個性に色濃く反映させられています。もちろん、リキを形成したのは、移民政策の悲劇以上の悲劇を幼少期に受けていることも大きな理由ですが、日系二世にしたのは移民政策の過ちもストーリーに含めたかったのでしょう。

 南米マフィアの抗争が主軸ですが、戦いだけを描いている訳ではありません。家族を失ったリキが本当に求めているのは何なのか? マフィアとして生きてきたからには、いつかは地獄に落ちる事を理解しているリキが、抜けられない負の連鎖の中で見出した希望が、カーサであり、若槻妙子です。リキを始め、彼を取り巻く人々の全てが何かを背負っています。その重さに潰れそうになりながら生きています。

 また、マフィアの抗争は想像以上に生々しく過激です。読んでいて、嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。南米マフィアの過激さを日本という舞台で描くために、日本の警察を赤子の様に扱い部下を奪還するシーンなどは、そこまで日本の警察も無能ではないだろうと感じるところもあります。  

 物語の展開は早く、一気に読み進んでしまいます。リキを魅力的に描いていますが、コロンビアのマフィアのボスであることを考えれば、やっぱり悪人であることに変わりはありません。その罪をあまり描かずにリキの悲劇ばかりが際立っている感がありますが、スピード感のある物語に引き込まれます。ただ、読む人によって、感想はかなり変わるかな、とは思います。 

 「ワイルドソウル」よりも、話がたんたんと進んで行ってしまうので、読みやすいと言えば読みやすいです。 

ゆりかごで眠れ〈上〉 (中公文庫)

ゆりかごで眠れ〈上〉 (中公文庫)