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『ヒートアイランド』:垣根涼介【感想】|生き残りに挑むアウトローの若者たち

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「ヒートアイランド」の内容

渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。【引用:「BOOK」データベース】  

「ヒートアイランド」の感想

わる緊張感

 「ストリートギャング」「泥棒」「ヤクザ」を絡ませたワイルドなハードボイルド小説です。垣根涼介の小説らしく、登場人物はすべてアウトローばかりです。

 前半は盛り上がりに欠け、だるいところもあります。しかし、後半に入りアキとカオルの計画が実行に移された辺りから、一気に話のテンポがあがります。そこからは、一気に引き込まれます。特にアキの計画にはない不確定要素(松谷組のことですが)を織り込むことで、ストーリーの展開が読めず緊張感が半端なく伝わってきます。 

トリートギャング

 首都圏に住んでいる訳ではないので、ストリートギャングが実際にどういうものか実感できません。知識として知っていることと別物なので、アキ達にリアリティがあるのかどうかも分かりません。前半は暴力的な若者という描写が際立ち、ストリートギャングに対する嫌悪感は拭えませんでした。ただ、暴力的と言えばヤクザの方が暴力的なので、後半はストリートギャングに暴力的な印象はなくなってしまいました。なので、後半はアキ達に感情移入することができ、そのおかげで結末はすっきりと感じました。

 この小説では、それぞれの思惑が複雑すぎるくらい絡まりあっています。アキ達ストリートギャング、強奪犯、ヤクザの光栄商事と松谷組の計4者がそれぞれの思惑を持っています。その中でも、ヤクザ同士の縄張りの問題が、この物語の行く末を大きく動かします。 

半のテンポ

 先ほども書きましたが、前半は登場人物と状況の設定のために多くの部分が費やされています。あまり盛り上がりません。ただ、そこできっちりと下準備ができているので、後半のスピード感に登場人物が映えるのも事実です。後半からは、一気読みでした。それくらい息をつく暇もありません。

 ただ、難を言うなら、アキの思惑通りにあまりにも上手く行き過ぎです。19歳の若者のなせる業ではありません。それらも含めて爽快感だという人と、逆に冷めてしまう人の二通りかもしれません。

終わりに

 何かが心に残るような作品ではありません。ただ、読んでいる間は楽しめます。最後に、ストリートギャングを美化するような印象を受けました。それが、残念です。報われないかもしれないと感じながらも、既存の社会で頑張って日々を送っている人たちが多くいます。彼らの方が素晴らしいはずです。

ヒートアイランド (文春文庫)

ヒートアイランド (文春文庫)