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『ブレイブ・ストーリー』:宮部みゆき【感想】|ワタルが得た勇気(ブレイブ)が未来を変える

「ブレイブ・ストーリー」の内容

小学五年生の亘は、成績はそこそこで、テレビゲームが好きな男の子。大きな団地に住み、ともに新設校に通う親友のカッちゃんがいる。街では、建設途中のビルに幽霊が出るという噂が広がっていた。そんなある日、帰宅した亘に、父は「この家を出てゆく」という意外な言葉をぶつける。不意に持ち上がった両親の離婚話。これまでの平穏な毎日を取り戻すべく、亘はビルの扉から、広大な異世界―幻界へと旅立った!【引用」「BOOK」データベース】 

「ブレイブ・ストーリー」の感想

ァンタジー世界

 分類としては、ファンタジー小説となるのでしょうか。でも、ライトノベルではありません。ロールプレイングゲームをノベライズしたような感覚の小説です。もちろん、オリジナルの作品であり、逆にこの小説を基に、長編アニメ映画や漫画、ゲームが製作されています。文庫上中下3冊に及ぶ長編ですが、読み始めると先が気になりどんどん読み進めました。 

 内容は、ファンタジー冒険物の王道です。仲間を見つけ、ともに困難に立ち向かいながら目的を達成していく。その過程の中で、主人公である亘(ワタル)が悩み運命に立ち向かい、それを乗り越え自らの答えを見つけます。

 現実世界である「現世(うつしょ)」と、望みを叶えるために旅立った「幻界(ヴィジョン)」を舞台にしています。上巻は、ほぼ現世を舞台にしているのでファンタジーな物語ではなく、どちらかというと現実の生々しい話です。幻界へ旅立ってからは一転、ファンタジー冒険小説です。運命を変えるため、キ・キーマとミーナを仲間に旅を続けます。旅の中でいろんな人(人以外もいますが)と出会い、助けられながら成長していきます。魔法が出たり、ドラゴンが出たり、騎士団が出たりと、まさにRPGの世界です。 

まり合うストーリー

 ストーリーはそんなに単純ではありません。ワタルと同様に幻界に来ていた同級生のミツルが、ワタルの葛藤と成長に一役買っています。ミツルもワタルと同じく運命を変えるために来ていた訳ですが、願いを叶えられるのは一人だけです。協力して願いを叶えることも出来ません。ワタルが取り戻したい日常と同じように、ミツルにも取り戻したいものがあります。そのことをワタルも理解しています。ワタルの心情を描くことで、心が子供から大人へと成長していく様がよく分かります。

 また、幻界自体にもいろいろな事情を含ませています。その事情とワタルたちの旅が絡まりあい、旅は終わりを告げます。その辺りの絡ませ方が見事です。この物語は、ワタルの成長をファンタジーという要素で語っています。ワタルが普通のありふれた小学生であるからこそ、共感を感じることも出来ます。

 結末は、悲しい部分も多くあります。完全なハッピーエンドでないからこそ心に響きます。最後にワタルが心に得た勇気(ブレイブ)は、何だったのか。是非読んでください。

終わりに

 子供向けの小説なのか、大人向けの小説なのか、どっちなのだろうか。幻界の話は、あきらかに小学生向けです。もちろん大人も楽しめますが。逆に、現世の話は子供にはちょっと生々しい。特にワタルの両親の離婚の原因は、子供に読ませたくない部類です。小学生に読んでほしいけど、大人の生々しい部分が最初に際立ちすぎるのがちょっと残念です。子供の成長の話なのに、と思ってしまいます。ファンタジー物は好みが分かれますが、私は気に入っています。

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)