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夢幻花:東野圭吾【感想】|幻のアサガオが驚愕の事実を告げる

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 東野圭吾の頭には、どれほどのアイデアが詰まっているのでしょうか。あれだけの量の小説を書き続けながらも、まだこれだけのアイデアを駆使した小説を書くのだから本当に驚きです。著者は「夢幻花」について、「こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない 」と言っています。自信を持ってそう言いきるだけのことはある作品です。 

「夢幻花」の内容

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。 【引用:「BOOK」データベース】  

「夢幻花」の感想 

逸なトリック

 東野圭吾らしい緻密なストーリー展開と伏線の張り方。それらを一点に収束し、解決させる手腕は素晴らしい。まるでジグソーパズルを組み立てていくような感覚です。バラバラだったパズルのピースが徐々に組み合わされ、一つの絵を完成させる。しかも、完成した絵は全く予想外のもの。夢幻花を読んで感じた印象です。   

 「夢幻花」は、東野作品の中でも登場人物が多い方です。登場人物が多いので、伏線となる出来事も当然多くなります。それらの伏線となる出来事がどのように繋がってくるのか、全く予想がつきません。なので、どんどん先へと読み進めていってしまいます。一方、話が複雑化してくると、話の本筋を見失ってしまう危険もあります。しかし、著者の抜群の力量で、読者を混乱に陥れるようなことはしません。 

色いアサガオ

 混乱に陥らない理由のひとつに「黄色いアサガオ」があります。「黄色いアサガオ」が物語を貫く一本の柱になっているからです。ミステリー小説の中には謎が謎を呼び、謎だらけになってしまい、読んでいて何だか分からなくなるようなものもあります。そういう小説は、読んでいて疲れます。複雑にして読者に最後まで真相を悟らせたくない、という気持ちが働くのかもしれません。しかし、本作は、登場人物の多さと謎の多さは際立ちますが読みやすいです。読み返さないと分からないようなことはありません。 

「黄色いアサガオ」が物語の謎の原点にあるからです。この原点があるから読者も迷子のように訳が分からなくなることがないのです。

 迷うことはないですが、結末が容易に分かる訳ではありません。最後には驚愕の真実をきっちりと用意しています。 

彩な登場人物 

 登場人物も個性豊かです。登場する人物は、全員、心に傷を負っています。彼らの葛藤も描いているので、単なるミステリーに留まらずヒューマンドラマとしての側面も出ています。物語に厚みがあります。殺人事件という非日常を描いていますが、登場人物の人間味をきっちりと描くことで現実感が伴います。

 それに加えて、違法薬物問題と原発問題についても訴えかけようと意図しているのかもしれません。読んでいただければ、この問題提起が含まれている部分は分かると思います。ただ、私はあまりメッセージ性を感じなかったので考え過ぎかもしれません。

終わりに 

 これぞ東野ミステリーという作品。計算された隙のないミステリーです。ただ、最後にはあまりにも綺麗にまとまり過ぎて、逆に気持ち悪く感じてしまうところもあります。読み応えのあるミステリー作品ですが、私は「流星の絆」の方が好きです。