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『ソードアート・オンライン4 フェアリィ・ダンス』:川原 礫|アスナ救出のため、グランドクエストに挑む

 前巻で描かれたフェアリィ・ダンスの大きなふたつのテーマ。

  1. アスナ救出。
  2. リーファ(直葉)とキリトの関係。

 圧倒的強さを誇るキリトが攻略不可のグランドクエストに挑んだ時、どうなるのか。リーファとキリトがお互いの正体を知った時、どうなるのか。このふたつのストーリーがどんな展開をもたらすのか。また、どのように絡み合ってくるのか。

  このふたつの問題以外にも、現実世界と仮想世界の関係。アインクラッド編では描かれなかった現実世界が描かれていることにより、それぞれの世界が大きく影響し合うことは必然です。単なる仮想世界で敵を倒すという簡単な展開で終わることがないことが期待できます。 

「ソードアート・オンライン4 フェアリィ・ダンス」の内容 

SAOから未だ帰還しないアスナを救うため、疑惑のVRMMO“アルヴヘイム・オンライン”にログインしたキリト。その次世代飛行系ゲーム“ALO”は、“魔法”という概念、プレイヤーの反応力と判断力が勝敗を決めるアクション要素、そして“妖精”となって空を駆け巡る“飛翔システム”と、“SAO”に勝るとも劣らない高スペックで数多のプレイヤーを魅了していた。“妖精”スプリガンとなったキリトは、アスナの幽閉先―全プレイヤーの最終目標“世界樹”目指し突き進む…!道中、妖精種族“サラマンダー”のプレイヤーたちの策略により、絶体絶命の危機に陥るキリトだったが、“シルフ”の少女・リーファの助力、ナビゲートピクシー・ユイのバックアップを受け、どうにか九死に一生を得る。そしてついにキリトは“世界樹”の根元までたどり着く。しかしそのとき、リーファとキリトは互いの“秘密”を知ってしまい…。 【引用:「BOOK」データベース】 

「ソードアート・オンライン4 フェアリィ・ダンス」の感想

ーファとキリトの関係 

 キリト(和人)の妹として育てられてきたが、実は従妹であった。そのことが、リーファ(直葉)を大きく悩ませます。和人を異性として好きだと気付いたからです。彼女がALOを始めたきっかけは和人を知るためですが、空を飛ぶことにより和人のことを吹っ切ろうとしている様にも感じられます。だから、飛行制限を振り切り、無限に飛べることを夢見ているのでしょう。現実世界の苦悩を仮想世界で振り切ろうとする。和人を諦め、キリトのことを好きになろうとすることにも表れています。

 仮想の世界と言いながらも、そこにいる人々は現実を生きている人々です。そこで感じている感情や思いは、決して仮想ではない。キリトは、SAOでそのことに気付いています。キリトとともに旅をすることで、リーファもそれに気付いていきます。仮想の世界と言えども、そこに生きている人々は現実の人間であり偽りの感情ばかりではないと。

 キリトに影響を受ける度に、キリトに惹かれていく。そして、和人のことを忘れられるかもと思い始める。その時、キリト=和人を判明し、リーファの苦悩が爆発するのは当然でしょう。キリトに罪はありません。全てが偶然の所産だとしても、あまりに辛い出来事です。しかし、それを乗り切っていくことの大事さ。それは、仮想世界も現実世界も関係ありません。乗り切るべきことを乗り切る辛さは、どちらの世界においても同様だということです。彼女はそれを克服し、キリトを助けるのです。二人の関係は、落ち着くべきところに落ち着いたということでしょう。 

スナ救出

 最も重要な目的は、アスナ救出です。前巻での圧倒的な強さを見せつけたキリトが、どのようにしてアスナを救出するのか。

 世界樹の上にアスナがいて、そこに辿り着き、ログアウトさせる。

 言葉で書けば簡単ですが、それは一筋縄ではいかない。圧倒的な強さを誇るキリトが、まるで歯が立たない世界樹へと昇るグランドクエスト。キリトの強さが際立っていればいるほど、グランドクエストの理不尽さ。ゲームマスターの須郷の悪辣さが際立ちます。
 一人ではクリア出来ないグランドクエストをどうやって攻略するか。そこで、今までの伏線が生きてきます。SAOのデータを引き継ぎ、チート級の強さでキャラクター生成されたことは都合がいい設定なのですが、そのデータ引き継ぎの際に所持金も引き継がれていたことが伏線の始まりです。シルフであるシグルドの裏切り。その裏切りによりサクヤとアリシャの二人の領主と知り合うことに続き、有り余る所持金を渡してしまう。そのことが、グランドクエストにおいてシルフとケット・シーの助力を得ることになるのです。 

ただ、グランドクエスト攻略ですら、ひとつの通過点に過ぎません。 

 ラスボスは、ゲームマスターである須郷だからです。
 ゲームマスター対プレイヤー
 アインクラッド編と同じ構図ですが、茅場と須郷のキャラの違いが闘いの違いを際立たせます。対等の闘いをするか、そうでないか。この闘いにおいて、須郷の悪は更に際立ちます。グランドクエスト以降、キリトの強さが全く影を潜めてしまいます。強すぎるのも白けてしまいますが、歯が立たなさすぎるのも面白みに欠けてしまいます。

 逆転劇が、茅場の意識の残像による加勢です。茅場の管理者ID、すなわち須郷よりも上位の管理者権限により須郷を倒す。須郷と立場が変わっただけで、対等な闘いと言えない。茅場の登場は、あまりに都合が良すぎる気がします。 

最後に 

 結局のところ、前半はSAOのステータス。後半はシルフ、ケット・シーによる援護。最後は茅場の加勢。キリト自身の力によるところが少ない気がします。勧善懲悪のストーリー展開なので、気分的には気持ちいいのですが。アインクラッドから続いた一連の物語が終息しましたが、都合良すぎる展開が多かったというのが大きな印象です。ただ、シリーズなので読まないと第5巻へと進めないと思われます。