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深夜特急2 マレー半島・シンガポール:沢木耕太郎【感想】|香港の影を背負い、旅は続いていく

 香港を出発し次の目的地は、タイ・バンコク。バンコクに行く決心をした理由も面白い。香港滞在を延ばすためのビザを書き換える窓口が混んでいて、全てが面倒になりバンコク行きを決意する。いかにも、放浪に近い旅だと思う。思いついた時に、思いついた行動をする。簡単なようで一番難しい行動かもしれない。実際、何か行動を起こす時には色々と考えた上で、慎重に行動を起こすものである。しかも、海外であればなおさらです。

 沢木は、行先であるバンコクの知識はほぼゼロ。なのに、何の不安もなく飛び込んで行く。その大胆さと行動力がなければ、バック・パッカーとして旅を続けていくことは出来ないのかもしれない。  

「深夜特急2 マレー半島・シンガポール」の内容 

香港・マカオに別れを告げ、バンコクへと飛んだものの、どこをどう歩いても、バンコクの街も人々も、なぜか自分の中に響いてこない。〈私〉は香港で感じた熱気の再現を期待しながら、鉄道でマレー半島を南下し、一路シンガポールへと向かった。途中、ペナンで娼婦の館に滞在し、女たちの屈託のない陽気さに巻き込まれたり、シンガポールの街をぶらつくうちに、〈私〉はやっと気がついた。 【引用:「BOOK」データベース】 

第四章 マレー半島Ⅰ   

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 香港とマカオが、沢木にとっていかに魅力的で刺激的であったのか。第一章、第二章を読めば分かります。香港・マカオの魅力に魅せられた彼にとって、バンコクはあまりに刺激を与えてくれない。そのことが、ひしひしと伝わってきます。

 バンコクでも、香港と同じく怪しい宿に転がり込むところから始まります。彼は、いわゆる連れ込み宿に縁があるようです。と言っても、宿泊料を下げようと思えば、自然とそうなるのは自明の理です。運良く連れ込み宿よりも安く快適な宿を確保し、バンコクを見て回ります。観光地を訪れ、現地の人と交流し、街を見て回る。香港と同じように大露店街をさまよい歩いたり。
 しかし、彼にとってバンコクは、香港のように興奮に満ちた世界ではなかった。彼がそのように感じているので、読者も同じような気持ちになってしまいます。バンコクの街を知らないのですが、それほど魅力溢れる街ではないのかなと感じてしまいます。 

香港を経験した彼がバンコクに対し抱いた感情であり、必ずしも一般論ではありませんが。 

 しかし、この紀行小説は彼の眼で見た旅を描いているのであり、彼と一体化して読むからこそ自らも旅を行っている気持ちにさせる。また、旅を行いたいとも思うのです。バンコクには申し訳ないが、彼が感じた印象を受け入れることも仕方ないことなのかもしれません。ただ、実際に自らが行けば、全く違う印象を受けるかもしれませんが。彼の書き振りがどうしてもマイナス方向に偏っているので、バンコクは魅力のある街に感じません。 

第五章 マレー半島Ⅱ  

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 バンコクに見切りをつけ、次に向かったのはシンガポール。陸路でシンガポールに向かうためにはマレー半島を南下し、マレーシアを経由する必要があります。第五章は、シンガポールまでの移動中の出来事を中心に描かれています。

  • チュムポーンでの短い滞在。
  • 美しい海岸を持つスラタニー。

 どちらも、沢木を滞在させるほどの魅力を与えるものではなかった。理由は、彼にしか分からないものでしょう。もしかしたら、彼もはっきりと分かっていなかったのかもしれません。ただ、香港の魅力に憑りつかれてしまっていたのは間違いないでしょう。 

 その中で立ち寄ったペナン。ペナンは、マレー半島側のウェルスレイ地区とペナン島のふたつの部分から成っています。そのことが、彼に香港を思い起こさせています。香港を思い出すことにより、ペナン島に新たな何かを期待しているように感じます。ペナンにおいても、香港・バンコクと同じように安宿を探すうち辿り着いたのが娼婦の館。彼は、いかがわしい宿によほど縁があるのでしょう。ただ、彼は、そのことを結構楽しんでいるようにも見えます。観光旅行では、決して味わえない素の人々や街を感じ取ることが出来ると思っているのでしょう。

 日本人の旅行者が、売春宿の娼婦と彼女たちのヒモと仲良くなる。

 そのことに疑問を抱かず馴染んでいく。ここに描かれているマレーシアがマレーシアの全てではありませんが、間違いなく持っている一面であることは間違いありません。そのことは、ツアーでは知ることは出来ない。知りたいと思うかどうか、経験してみたいと思うかどうかは別物ですが。ただ、とても興味深いことは間違いありません。 

 2~3日の滞在の予定が、1週間以上にも及ぶことになります。結局、それ以上の滞在はすることはありません。日本人と言うことであらぬ期待を持っている娼婦やヒモ達。いつ、旅の目的であるロンドンに辿り着けるかどうかという不安。いろんな要素が、ペナンを旅立たせることになるのです。クアラルンプールを経由し、目的地であるシンガポールへと到達するのです。 

第六章 シンガポール  

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 シンガポールも、沢木にとっては退屈でつまらない街に過ぎなかった。シンガポールで、彼はニュージーランドの若者2人と出会います。この出会いは、彼にとって重要な出会いであった。彼らが行っている世界一周。その期間は、3~4年。その時の著者の衝撃が、こちらに伝わってくるようです。 

 何故、自分は半年で旅を終えるつもりでいたのか。そこから解き放たれた時、初めて彼は自由になれたのだと思います。そのことが、香港を出てから抱いていたつまらなさの原因を気付かせたのでしょう。どの街も、香港と違う。そんな単純なことにようやく気付く。香港の素晴らしさが、彼の眼を曇らせたのかもしれません。ニュージーランド人との出会い。シンガポールは、彼にとって訪れた価値があった。そう思います。第六章は、シンガポールの街を描くというよりは、彼の内面に踏み込んだ内容であったと感じます。  

旅の続き「深夜特急3 インド・ネパール」