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『塩の街』:有川 浩【感想】|塩害が愛する二人を引き離していく

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 有川浩氏のデビュー作で第10回電撃小説大賞“大賞”受賞作です。受賞作は文庫で刊行されましたが、その後、ハードカバーの単行本で再刊行されています。 受賞から文庫、単行本に至る変遷は、単行本のあとがきに著者が書き記しています。私は単行本を読みましたので、その感想です。

「塩の街」の内容

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。 【引用:「BOOK」データベース】  

「塩の街」の感想  

質は恋愛小説

  著者の初期の作品の中でも「空の中」「海の底」と合わせて自衛隊3部作として数えられている内の1冊です。タイトルから想像すれば、「空の中」は航空自衛隊、「海の底」は海上自衛隊、「塩の街」は陸上自衛隊をテーマにしているように感じます。しかし「塩の街」を読んだ限りでは、陸上自衛隊の活躍を軸とした小説ではありません。 

そもそも自衛隊の活躍の話ではなく恋愛小説です。 

 中高生が好みそうな淡く切ない恋愛小説です。電撃大賞受賞のライトノベルですから中高生向けとなるのは当然ですが。私の年齢で読むと、少し気恥ずかしくなってきます。実のところ、ハードカバーの単行本を買ったので、元が電撃大賞受賞のラノベだとは全く知りませんでした。陸上自衛隊を舞台にしたシリアスで現実的な話とばかり思っていたので、ある意味肩透かしです。それも、27・8歳くらいの航空自衛隊のエースパイロットと女子高生の恋愛話だとは思いませんでした。 

創的なストーリー

 設定自体は非現実的ながら、意外性と独創性があり面白い。人間が塩になる(作中では「塩害」と表現しています)というのは、どういうところからアイデアを得たのか興味深いです。ただ、あくまでも恋愛小説として書かれているので、塩害の原因と解決があまりに中途半端すぎる気がします。塩害の原因を統計からの推測で捉え、しかも解決方法は「破壊してしまえ」という乱暴振りです。

 恋愛小説としては、王道中の王道といった感です。女子高生が淡い恋心を抱くのは、年上のエースパイロット。そして、彼も女子高生に恋心を抱いている。しかし、お互いの気持ちを確かめることができない。さまざまな出来事の中で誤解があったりすれ違ったりしながら、お互いの気持ちを確かめあう。読者は、その二人の恋が成就するのを願って読み進めるといった小説です。

終わりに

 中高生が読めば登場人物に感情移入して、心に響くものがあるかもしれません。しかし、私は感情移入することもなく、塩害の話も中途半端だったので消化不良でした。

 単行本では、前半が「塩の街」としての本編。後半が「塩の街。その後」としての短編集ですが、単行本1冊を丸々使って塩害についても納得のいくストーリー展開にすれば、もっと読み応えがあったかな。

塩の街 (角川文庫)

塩の街 (角川文庫)