西野亮廣の本を読むのは初めてです。それほど興味のある人ではなかったので、芸人としても作家やクリエイターとしてもよく知りません。ただ「革命のファンファーレ」は話題になった本なので手に取りました。
彼が出版した絵本「えんとつ町のプペル」の制作、販売、広告の体験を軸に書かれています。絵本の実情を知らないので、32万部がどれほどすごい数字なのか分かりませんがすごい数字なのでしょう。彼が言うところには、その数字は結果として売れたのではなく、すべて計算した上で売りにいった。確実に売れると確信した上での数字です。
どうすれば、そうすることができるのか。
この本で著者が伝えたいことのひとつでしょう。昨今のビジネス書にある一般的に認知されている変革も書かれていますし、彼の実体験を元に分析した変革も書かれています。机上の話ではなく経験をもとに書いているので、分かりやすく説得力がある気がします。ただ、これは彼自身の経験であり、そのまま自分達に当てはめることは出来ません。彼とは置かれた環境が違うから当然ですが。
どのビジネス書にも言えることですが、いかに自分の考え方・行動の仕方に反映させるか。その応用力が必要です。副題が「現代のお金と広告」なので、お金と広告に分けて感想を書きます。
「革命のファンファーレ」の内容
クラウドファンディングで国内歴代最高となる総額1億円を個人で調達し、絵本『えんとつ町のプペル』を作り、30万部突破のメガヒットへと導いた天才クリエイターが語る、"現代のお金の作り方と使い方"と最強の広告戦略、そして、これからの時代の働き方。
「革命のファンファーレ」の感想
お金について
著者が絵本を作るために用いたクラウドファンディング。その手法をベースに、信用とお金について分析し説明しています。著者は、お金は信用を数値化したものだと認識しています。信用を数値化すればお金になる。その手段がクラウドファンディングだということです。お金を集めるのに信用が必要なのは、いまさら説明されることではないのですが。
過去においては、信用を評価してお金を出してくれるのは金融機関でした。ネットが繋がり情報が共有化されることでクラウドファンディングという手法ができ、お金の調達方法も多様化します。多様化すれば、どうなるか。
これまでは金融機関に対し信用を提示すれば良かったのです。しかし、不特定多数の人々からお金を調達するためには、不特定多数の人々に信用を提示する必要があります。それが出来れば、お金を調達できます。著者は、それを実践し多額の資金を集めました。
信用の得るための方法は、それぞれに置かれた立場によって違います。有名人である著者が実践したのは「嘘をつかない」ということです。当たり前のことですが、芸能人には難しいことなのでしょう。我々も芸能人が嘘をつかずにメディアに登場し続けるのは難しいと知っています。嘘をつかないことを実践することで、著者は信用を得たのです。タレントとしての信用の勝ち取り方であり、あくまで参考にしてくれればいいと書いています。信用の勝ち取り方は、人それぞれだと認識しているのでしょう。
お金の話は学校では教えてくれません。著者が書くお金の話は新鮮な部分があります。ただ、全てが目新しい訳でもありません。
広告について
本書は、広告に比重が置かれているように感じます。ネット社会の発達により、今までの広告戦略では勝ち残れません。そ実感しているからこそ、様々な広告戦略を実行してきたのでしょう。その手法の多彩さと目的意識と過去に囚われない大胆さに感心します。出版業界や広告業界に詳しい訳ではありませんが、著者が実践した手法は今までの常識を覆すものだと分かります。
果たして、全てが成功したのかどうか。 書かれている戦略は全てが成功しているように書かれており、旧態の広告を完全に否定しているかのように感じます。確かに、著者の広告戦略は斬新で結果も残しています。しかし、何もかもが思惑通りに動いたのかどうか。成功例ばかりが続くようになり、著者の非凡さを押し付けてくるような印象を抱いてしまいます。
ネットを可能な限り活用するのは、今の時代の常識です。彼のやり方が、唯一の正解ではありません。あくまで彼の事業にとっての成功例であることを理解して読めば、一事例として納得できます。ただ「これが正解だ」みたいな書き振りに感じます。
最後に
著者の経験を軸に書いたビジネス書です。タレントである著者のビジネス方法の紹介であり、これを読み手がどう解釈するか。一般人に当てはめることが出来るかと言うと否定的になります。彼の言おうとしているネット社会の方向性や考え方・行動の改革をしないと生き残れないというのは共感できます。
ただ、彼の言い方や文章の表現などが不快感を感じさせるのも否めません。アンチ西野が多く存在するのも理解できます。彼はそれも計算に入れているはずです。
注目されなければ意味がない。
そのための手法のひとつとして、好戦的な態度を取っているのかもしれません。読んでいて納得する部分も多いのですが、アンチを作るために計算している思惑が見え隠れすることも不快感の理由かもしれません。