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『モチベーション革命』:尾原 和啓【感想】|輝く若者のモチベーションマネージメント

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 「モチベーション」はよく聞く言葉です。やる気・意欲・目的意識といったところでしょうか。人生を充実させるためには重要な要素です。何のために生きるのか。どのように行動するのかは人生の命題です。

 仕事に対するモチベーションも重要です。人生において仕事が占める割合は大きい。時間的にも精神的にもです。仕事の目的は生きていく糧を得ることであり、お金を稼ぐために働いています。お金=モチベーションは自然な形であり分かりやすいし、目的がはっきりしているのでモチベーションを持ちやすい。

 しかし、お金にモチベーションを持てない時はどうなるでしょうか。違うところにモチベーションを求め、お金を副次的なものとして捉える必要が出てきます。モチベーションだけでは生きていけないし、モチベーションがなければつまらない。

 何に対してモチベーションを持つかは世代間で決定的に違います。本著の目的は、その違いを理解することです。モチベーションを持って働くことで仕事が充実し、人生も充実します。企業も優秀な人材の確保や育成のために、モチベーションを満たすことは重要です。

 しかし、世代間の違いを全ての人に当てはめることはできません。団塊の世代でも若い世代と同様の考え方をする人もいるし、逆に若い人でも団塊の世代と同様の人もいます。それでも違いを認識しないことにはうまくいかないし、人を使えません。

 モチベーションは人を成長させます。仕事においては結果を出します。全てを若い世代に合わせる必要はないと思いますし、40歳代以上の人たちが生き方を変える必要もありません。要は違いを理解することと対応することです。柔軟さが必要になります。 

「モチベーション革命」の内容

なぜ、あなたは稼ぐために頑張れないのか?あなたは「上の世代」と違い、生まれたころから何もかもが揃っていたので、金や物や地位などのために頑張ることができません。埋めるべき空白が、そもそもない「乾けない世代」なのです。しかし、仕事がなくなっていく時代には、この「乾けない世代」こそが希望になります。【引用:「BOOK」データベース】  

 

「モチベーション革命」の感想

第1章 「乾けない世代」とは何か?

 周りに何もなかった世代と何もかもがあった世代に分けて考えていますが、違和感を感じます。40歳代以上の人たちの周りに何もなかった訳ではありません。大事なのは、自身の周りにあったかどうかです。世代間の違いとともに家庭環境(特に金銭的な面)も含めて考える必要があります。世代間だけで定義してしまうと若い世代の誰もが何もかもを手に入れていると思い込んでしまう危険があります。

 それはさておき今と昔で違いがあるのは事実です。インターネットやスマホは当たり前のものとして存在していますが、昔は存在しません。手に入れられるかどうかは別にして、環境が全く違うのは事実です。

 今と比べて世間にモノが溢れていなかった時代は、働くモチベーションを社会に対する貢献に求めていました。社会が潤えば、結果的に自身に戻ってくるという訳です。自分のものになっているかどうかは別にして、若い世代は社会にモノが溢れています。乾くか乾かないかの違いは社会にモノが溢れているかどうかです。無ければ作ることで生活が豊かになります。欲しいものが増えることで、お金が重要になります。

 モノが溢れている社会では作り出す必要が薄くなります。すでにあるモノを欲しいと思うかどうかです。生活に必要なモノだけを手に入れるなら、それほどの労力は必要ありません。欲しいモノがないから必死にお金を稼ぐ必要がなくなります。モノが溢れているから社会貢献をしたい気持ちも薄くなります。

 贅沢はもはや目標にならない。生きるモチベーションをどこに求めるかというと、自身の内面に求めていくことになります。乾けない世代が欲しいモノがなく、すでに満たされているとは一概に言えません。モチベーションの優先順位が変わっただけであり、その理由が社会にモノが溢れているかどうです。

 完全に乾いている(物的欲求)人はいないと思います。ただ、優先順位が変わることで社会も変わります。要因は複雑であり、経済・社会・教育など様々な面から考察する必要があります。モノの側面からだけで説明するのは強引かもしれません。

 

第2章 偏愛こそが人間の価値になる

 偏りは他人との違いを生みます。そして、他人と違うことが価値になります。会社に属し、同じ目標に共同して取り組み、結果を出す。社会・経済が成長している時は、最も効率的な形です。現在は効率性は重視されません。あくまで以前ほどという意味ですが。

 価値をどこに求めるかが重要であり、価値を作れない人は生き残れません。自身のやる気や目的を満足させるだけではなく、新しい価値を生み出すことが重要です。仕事だけをしていても駄目で、プライベートを充実させるだけでも駄目です。

 人生は仕事とプライベートで構成されています。切り離すことはできないし、切り離してもいけないのでしょう。仕事=嫌なもの・辛いものという考え方では、これからの時代は生きづらい。仕事とプライベートを繋げ、他人とは違う価値を創出することが必要です。どこから何を得て、何を生み出すかが重要になります。上司の指示を受け、机に向かっているだけでは必要とされません。社会が激変していることを、旧世代も新世代も認識する必要があります。実力至上主義の社会ではモチベーションは重要ですが、それだけでは生き残れません。

 一方、何が価値になるか分かりません。人と違うことが重要であり、それが価値になる可能性があります。もちろんそうならない場合もありますが。偏愛が重要だとしても、社会から必要とされなければ無意味です。

 ひとつの会社に属し依存する時代が終っていることは誰もが感じていることでしょう。これからの時代の方が生きるのが大変です。 

 

第3章 異なる「強み」を掛け算する最強チームの作り方

 社会が同じ方向に向けて動いている時代は、全員が同じ命令に忠実に従うことが重要であり最も効率的でした。社会が多様化・複雑化することで、求められるものも多様化しています。一人で全ての多様化に対応するのは難しい。だからこそ異なることが強みになります。

 自身に無いものを他人に求めたり、逆に提供することで補い合います。組み合わせることで結果を出すのです。他人と違う自身の価値を作り、自覚し、見せることで必要とされます。独創的かつ深い知識とひらめきが求められます。10人並みでは生きていけないし必要とされません。実力主義は努力し続けなければなりません。人生を通じて維持する継続性はモチベーションがなければ難しい。

 実力は知ってもらう必要もあります。誰も知らなければ声もかかりません。一方、人との繋がりは価値だけで決まりません。時代は変わっても人間関係は重要です。いつの時代も信頼を求められます。何もしないで信頼を得ることはできません。信頼を与える方法や得る方法を考える必要があります。どれだけ信頼に足る人物だとしても、知ってもらわなければ無意味です。

 価値や信頼は相互に与えあい、理解しあうことがチームを強くする要素です。個人の存在感が大きくなり、会社に依存する時代は終わったのでしょう。

 

第4章 個人の働き方

 働き方改革は政府が主導して行うものでしょうか。もちろん制度の整備も重要です。しかし、意識や考え方が重要であり、時代の流れによって変わります。個人の働き方は所属する組織によって決まりました。そのために社内教育があります。これからの組織が生き残るためには、同じ人材は不要です。多様性のある人材を確保していきます。社内教育ではなく、価値のある人材を取得していく。組織も個人を重視する方向へと変わっていきます。

 組織は価値ある個人を必要とします。必要とされれば組織に所属せずとも生きていけます。常に必要とされることが自立への道です。それだけの価値を身に付けるにはどうすればよいでしょうか。嫌なことをしていても身に付きません。好きなことだから必死になって一所懸命に頑張れます。他人以上に身に付けることができます。

 個人の働き方は誰も教えてくれないので自己責任で決めるしかありません。面白いかもしれませんが、相当に覚悟のいる社会になります。社会を大海原だとして、大きな船に乗っていれば安心な時代は終わったのでしょう。大きな船で構成された船団が同じ目的地に向け航海することは、もはやありません。目的地は様々であり、場合によっては目的地を見失っている状態です。そこでいかに生きていくか。

 一人乗りの小舟で生きていくためには、どこからも必要とされなければなりません。そうすれば、常にどこかから声を掛けられ乗り移ることができます。現在、大きな船に乗り続けている人々も、これまで通りにはいきません。乾けない世代よりも意識を変えなければならない世代の方が大変です。しかし、変えなければ生き残れません。変えずに逃げ切れる世代は一握りです。少なくとも、40歳代くらいは逃げ切れません。

 

終わりに

 モチベーションの持ち方が変わっているのは事実です。世代間で違っているのも事実です。社会が変革を求めてきているのも事実です。それらを世代間の違いとして説明されていることに多少の違和感がありますが、書かれていることは正しいのでしょう。

 個人の資質の問題が最も大きいと思います。団塊の世代でも、若い世代と同じモチベーションの人もいます。逆も然りです。生きてきた環境にもよりますが、個人の考え方の問題だと思います。ただ、社会が変わり、モチベーションの大勢が変わるのも現実でしょう。