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『学びを結果に変えるアウトプット大全』:樺沢紫苑【感想】

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 発行部数40万部を超えるベストセラーです。以前から気になっていました。ビジネス書なのか、実用書なのか、自己啓発本なのか。私が読んだ印象では自己啓発本です。精神科医が執筆しているから、自己啓発要素が強くなるのかもしれません。

 インプットを材料にして結果を出すことが目的ならば、アウトプットは欠かせません。どのようにアウトプットするのか。技術なのか、意識なのか。両方が必要なのは自明です。意識的な側面も含まれているので、自己啓発本の印象を与えるのでしょう。ただ、誰もが結果を目的としていません。自身の知的欲求を満たすことが目的ならインプット(学び)が終着点でも構わないと思います。

 アウトプットの基本法則「話す」「書く」「行動」で解説されています。三つに大分類しているので体系的に説明されているのかと思えば、各CHAPTER内はそれほど体系的ではありません。見開きで完結している説明は読みやすいですが。

 各CHAPTERの概略と簡単な感想。最後に全体を通した感想を書きます。 

各CHAPTERの概略と感想

CHAPTER1 アウトプットの基本法則

 成長を考えるならば、現実を変えていく必要があります。何らかの発信をしないと現実は変わっていかないのは当然です。発信することが大事であり目的です。また、インプットされた情報はどんどん忘れ去られていきます。アウトプットしないと記憶として定着しません。使わない情報はどんどん消え去っていくということです。

 アウトプットは何らかの結果ももたらします。結果が出れば、成功であろうと失敗であろうと検証することができます。PDCAサイクルと同じことです。

 著者は成長を立体的に捉えています。PDCAサイクルを図で表現すると円で描かれることが多い。PLANから始まりDO⇒CHECK⇒ACT、そしてPに戻ります。ただ、1回目のPLANと2回目のPLANは違います。ACT(改善)が行われるからです。一段上に成長します。三次元的に捉えると螺旋階段を上がるように成長していきます。分かりやすい表現です。

 CHAPTER1はアウトプットの重要性を理解するための章です。前提として知っておいて欲しいことを書き綴っています。 

CHAPTER2 科学に裏付けられた、伝わる話し方

 話すことは、誰かに何かを伝えることです。伝える話し方を科学的なアウトプットの方法として解説しています。アウトプットとしての話し方には技術が要ります。

  • 話し方
  • 話す内容
  • 心構え 等

 話す行為は様々な要素を含んでいます。CHAPTER内で系統立てて解説するのでなく、個別的な事柄を個々に解説しています。具体的で分かりやすいが、話し方の全体像がぼやけてしまう印象を受けます。

 伝える内容は言葉で表現しますが、相手に届けるためには目・態度が重要です。適切な質問や話す優先順位など技術も必要になります。話す時に感じる緊張も必ずしも悪い面ばかりではありません。セルフコントロールできれば、緊張感も味方になります。部下育成の手法としての話し方も解説しています。部下からの信頼を勝ち取る話し方です。脳科学的見地からも説明されています。

 話すことは自己を表現し、伝えることです。ビジネスの場での話すは技術が重要です。仕事の成否すら決めかねません。一言で話すと言っても、使う場・使う相手・インプットの活用など複雑で難しい。訓練が必要なのは当然ですが、訓練すれば習得できます。アウトプットを効果的に活用する場はビジネスが中心となるのでしょう。自己啓発とビジネスが入り混じり、論点がはっきりしない気もしますが。 

CHAPTER3 能力を最大限に引き出す書き方

 書くことも伝える手段のひとつです。話すことと違い、態度で伝えることはできません。文章力が重要な要素になります。また、書くことは伝える手段だけではありません。脳の整理、記憶の定着のために重要です。

 体で覚えると忘れないと言います。書くことも体で覚えることのひとつです。では、キーボードを叩くのと手書きでは、どちらが脳を活性化させるのでしょうか。脳科学の見地や実験の結果から、手書きの方がより効果があることが分かっています。

 文章力の向上のためには書き続けることも必要です。テクニックと同様に、経験を積み重ねることが重要です。ただ、書き始めればいいと言うものでもありません。設計図がないと上手な文章は生まれません。設計図の書き方はテクニックが必要でしょうし、テクニックは経験から生まれます。

  書き残すことは消えていく記憶を留めることにもなります。気付きやアイデアを逃さないためにも書き留めることは重要です。また、何も考えずにリラックスすることも、創造や活性化のためには無駄ではありません。脳科学的見地からも証明されているようです。

 整理された文章は説得力があり、ビジネスで大いに活用出来ます。伝達手段のためだけに使うのではありません。アンテナに引っかかったものを逃さないことも重要です。この章もビジネスと自己啓発が入り混じっています。 

CHAPTER4 圧倒的に結果を出す人の行動力

 話すことも書くことも行動です。行動の重要性が説かれています。続けることは簡単そうで難しい。続けることの困難さは何かを始めた事のある人ならば分かるはずです。ただ、続けるためには何かを始める必要があります。チャレンジすることです。チャレンジすれば失敗することもあります。しかし、失敗は検証し成長できます。チャレンジしないことが成長を止めてしまいます。

 チャレンジする時には目標を定めます。重要なのは実現可能な目標設定を行うことです。簡単過ぎず難し過ぎず達成が可能でなおかつ十分な達成感を得られる目標が、次へのステップへ繋がります。とにかくやってみることが大事です。

 行動には決断も伴います。選択のない行動は存在しません。選択する時には何を基準に選択するのでしょうか。そのことも成功のためには重要な要素となります。この章もビジネスと自己啓発が入り混じっています。

CHAPTER5 アウトプット力を高める7つのトレーニング法

 アウトプットの具体的方法と練習です。すぐに出来る簡単なものもあれば、やる気のいるものもあります。著者の提案するトレーニング法は、

健康状態の記録 ⇒ 読書感想文 ⇒ SNS ⇒ ブログ

 段階を踏んでいけば実行できることですが、SNSやブログは興味がなければなかなか続かないと思います。

アウトプット大全の感想

 文章は易しく読みやすい。構成も分かりやすい。引用も多くされており、記事の信憑性を担保しています。本文中にも書かれてますが、引用は記事の信憑性を増すために重要な要素です。確かに第三者によって検証・証明された事実を引用すれば、記事の信憑性は増します。

 ただ、引用が多過ぎます。都合の良い研究結果だけを引っ張ってきているのではないかと疑ってしまいます。実験には反証があってもおかしくありません。反証を書かずに自身の記事に合う実験だけを使っているように感じてなりません。

 また、自画自賛も目に付きます。自身の成功例やすごいところを何度も何度も書いています。自身の行動が正しいと言い切り過ぎているのではないでしょうか。成功の判断は主観的な部分もあるので、著者の成功が必ずしも全ての人の成功ではありません。

 自身の著作の宣伝も目立ちます。本書は宣伝が目的なのかと思ってしまいます。商売っ気が強い。有用な記事がないとは言いませんが、それ以上に目に付く部分が多い。少し期待外れでした。