こんにちは。本日は、上阪 徹氏の「10倍速く書ける 超スピード文章術」の紹介です。
文章を書くのが苦手な人は多いと思います。書き出しから躓き、書き出せない人もいるでしょう。
- 「何を書けばいいのか」
- 「どのように書けばいいのか」
著者はブックライターであり、文章を書くことを仕事にしています。本書は書くことだけでなく、速く書くことに主眼を置いています。文章自体の表現に意味を持たせる文芸ではなく、ビジネスシーンを前提に説明しています。
著者が言いたいことは、「どう書くか」でなく「何を書くか」を考えることです。文才や表現力はあまり必要でなく、伝えるべきことを的確に速く書くことが重要です。速く書くことで生まれるメリットは、時間を有効に使えることです。仕事のスピードが上がり自身の評価も上がります。
文芸の文章とビジネスの文章は別物です。文芸は中身と表現が重要ですが、ビジネスでは中身が重要であり表現力はあまり求められていません。プレゼンなどは引き込まなければならないので全く不要という訳ではありませんが。
書くべき内容(素材)さえ確実に集めることができれば、あとは書くだけです。内容を意識することと速く書くことを両立させることが重要です。
「10倍速く書ける 超スピード文章術」の内容
「メール」→「企画書」→「ブログ」→「レポート」→「本1冊」まで悩まず一気に書き終わる。「1日300字」の遅筆家を「5日で本1冊」の爆速ライターに変えた全技術。【引用:「BOOK」データベース】
「10倍速く書ける 超スピード文章術」の感想
序章 なぜ文章を書くのに時間がかかってしまうのか?
上手な文章を書こうとすると書き始められない。何故なら、上手な文章で思い浮かぶのが小説や教科書に載っている文章だからです。プロの作家が書いた文章であり、同じように書けるはずがありません。しかし、お手本として思い浮かぶのは、これらの文章ばかりです。
一方、ビジネスシーンで求められる文章は全く違います。そもそも目的が違います。上手な文章を作る必要はないし、起承転結も関係ありません。大切なのは、曖昧でなく分かりやすい文章で書くことです。上手な文章という呪縛から離れれば、難しくありません。
「どのようにでも受け取れる」「どのようにも受け取れない」表現は、上手な文章らしく見せますが内容のない文章になってしまいます。自分の話し言葉で明確に説明できない表現はビジネスでは伝わりません。
伝えることが主眼であり、何を伝えるかであり、そうなると素材が大事になります。何を伝えるかが決まれば、素材を用意します。素材があれば、何を書けばいいのかという悩みは無くなります。素材が最も重要になる理由です。
第1章 10倍速く書ける「素材文章術」
大前提は「どう書くか」ではなく「何を書くか」です。文章の中身(素材)が表現よりずっと重要ということです。素材とは「独自の事実」「エピソード」「数字」の3つです。
伝えるべきこと=素材です。文章は素材の組み合わせであり、うまく表現しようとすると筆が進まない。文章の9割を素材が占めるような文章が分かりやすい文章です。素材が全てであり、表現を加えると素材が活かされなくて分かりにくくなります。上手な文章を意識するのではなく素材を意識します。
第2章 正しい素材を集める2つのルール
素材の大事さは先述の通りです。素材を使った「素材文章術」の具体的な方法を5つのステップで進めます。
- 書く目的と読者を定める
- 素材を集める
- 素材を組み立てる
- 一気に書ききる
- 見直す
「文章の目的と読者」を定めないと、正しい素材を集められません。文章の目的は、何のためにその文章を書くのかということです。何を伝えたいのかということにも繋がります。目的には、表面上の目的と真の目的があります。表面上の目的は文章の作成意図であり、真の目的は何を感じさせ伝えるかです。重要なのは真の目的を知ることです。
例えば、社内報にエッセイで自己紹介をする場合です。表面上の目的は自己紹介ですが、自己紹介することの目的が真の目的です。自己紹介の仕方は実績から趣味まで様々です。真の目的を知らないと間違った素材を集めて、的外れな文章になります。
最も駄目なのは見切り発車です。目的を確認しない、もしくは目的がないままに書き始めることです。書くこと自体が目的にすり替わり、書くことが苦痛になります。
また、文章を書くのは伝えたい相手があるからです。文章を読む人は誰なのかが重要です。読み手次第で書き方は変わる。読み手をイメージすると、どんな素材が必要なのかが分かります。
読者を特定できない時は、特定の読者を決めてしまいます。年齢や属性などの層から徐々に範囲を狭めていき、特定の層や人が求めている素材を集めていきます。「みんな」に向けた文章は伝わりません。総体としての「みんな」と同一性のある個人は存在しないからです。
目的と読者が決まれば集めるべき素材は決まります。逆に言えば、目的と読者が変われば集めるべき素材も全く変わります。それくらい目的と読者を決めることは重要です。
第3章 素材をひたすら集める
素材はとにかく多く集めます。集めた中で不要なものは削ればいいし、足りない素材を新たに集め直すのは相当なロスになります。文章を仕上げるのに速さを求めるならば、一気に書ききれるだけの素材を集める必要がある。削るのは後からでもできます。
素材は突然ひらめくものです。目的と読者をしっかりと決めていれば、素材は目に付きます。大事なことはひらめいた素材を逃さないことです。人間は忘れてしまうものであり、後から思い出すことはできません。とにかくメモを取ることが必要です。役立つかどうかは後で考えればいいだけです。
聞いたことや見たものも素材になります。体験も素材になります。あらゆることをメモに取ることが重要です。
どのようにしてメモを取って保管し取り出すかですが、著者はメールの下書き機能を活用しています。ペンとメモ帳だけが手段ではありません。スマホは誰もが持ち歩く活用しやすいツールです。
ひらめきは別のことをしている時に突然訪れます。そのためには頭の奥底に目的と読者を置いておくことが必要です。ジムや雑談など、他に気を取られている状態を意図的に作り出すことも有効です。どんな状況でも何らかの拍子に思い浮かぶものであり、それを逃さないことが重要です。
第4章 素材を読みやすい順番に組み立てる
素材を十分に集めた後は、文章の形にしていきます。素材はバラバラに存在しています。それらを全て一目で見える形にします。著者は「見える化」と言っています。頭の中で思い浮かべるのではなく、必ず目に見える形で作業を行います。全ての素材を出しておけば、後から足りないと言ってストックを見直す必要は無くなります。
理解できる文章を作るために、話し言葉で伝わるかどうかを前提に組み立てていきます。話し言葉は相手に伝えることを考えて話します。文章も相手に伝わらなければ意味がありません。文章は会話のようにその場で付け加えたり補完したりできません。きちんと伝わる文章を書かないと最後まで読んでもらえない。
読者に向かって話すことを考えて素材の順番を決めます。読者(相手)に合わせた内容で組み立てます。目的と読者を決めておくことの重要性がここにも表れます。
読んでもらうには書き出しも重要です。書き出しで引き込まなければ、先を読んでもらえません。先を読みたいと思わせる技術は多くの作家から学べます。どんなジャンルの作家であっても、書き出しは相当に考え抜いて執筆しているからです。
第5章 一気に書き上げる
素材が揃い、組み立てが決まったら、後は書き始めるだけです。重要なのは、できるだけ速く一気に書き上げることです。最後まで一気に書き上げるコツは、いきなり完成形を目指さないことです。完璧な文章を目指すと先へ進みません。何度も書き直しながら進むことになってしまいます。
推敲は後から行います。書き始めればいろいろ時になるところは出てきますが、素材と組み立てがしっかりとできていれば最後まで書き切れます。調べることや気になるところは、後から調べたり調整します。重要なのは書き上げるスピードであり、文章量や誤字も気にしない。むしろ多めに書く方がいい。多く書いてから削るのは、素材集めと同じ感覚です。
読みやすい文章のポイントは、
- 一文を短くする
- スラスラと読める「リズム」を作る
- 「 」の強調使用
- 順接の接続詞を使わない
- 逆説の接続詞で展開を生む
- 難しい日本語を「翻訳」する
- リアリティを意識する
これらのポイントを押さえておきます。自分にとっていい文章とはどういうものか、具体的な形を持っておくことです。向上のためには良質な文章を読み続けることが必要であり、そのためにも自分にとっていい文章とはどういうものかを知っておくことが重要になります。
第6章 読みやすく整える
一気に書き上げるのは、推敲を前提にしているからこそのスピード重視です。自身の熱意と勢いで書き上げ、その後、文章を寝かせて読み直します。冷静で客観的な視点で見直すことは、読者の視点と同じ感覚で読むことになります。頭を冷やして推敲することが重要であるとともに必須です。
推敲を行うポイントは「読みやすくする」と「分かりやすくする」の2つです。当然のことですが、目的を明確にしておきます。
最初の見直しは、全体を通じて問題点をピックアップします。全体の流れを見ていくことです。全体から部分へと推敲のポイントを移し、「意味不明」や「不快な表現や感覚」を無くします。リズムを作ることも読みやすい文章を作る重要な作業です。文章量の調節は、その後に行います。
最終的に目指すところは、分かりやすく書かれているかどうかです。書き手が分からないことは、当然、読み手も分からない。読み手は何も分からないという前提で書くこともひとつの基準です。専門用語を使わないことにも繋がります。形容詞も曖昧で分かりにくい表現に繋がりやすい。
終わりに
ビジネスシーンを前提に書かれています。全てが役立つかどうかは、どんな目的の文章を求めているかどうかです。
著者の経験から導き出された手法は現実的です。様々なノウハウが書かれています。最も重要なのは経験でしょう。本書の内容を踏まえて多くの文章を書くことが求められます。