「仕事は楽しいかね?」
こう問われれば、多くの社会人がドキッとする。そんなタイトルです。だから目を引き、読んでみようと思いました。私は、仕事を楽しいと感じていません。かと言って、辛くて仕方がないと感じている訳ではありません。朝起きて、仕事に行くのが嫌で仕方ないこともありません。会社に行き、仕事をこなし、それなりの給料をもらう生活を繰り返す。そのことに不満がある訳でもないのです。
何かを成し遂げたい。起業し成功したい。
そういう目的がないので、現状にある程度満足しているのが実情です。果たして、それで人生が充実しているのか。将来、人生を振り返った時に後悔しないのか。
そのことについては、常に頭の片隅にあります。人生の時間の大半を仕事に捧げます。その仕事に今のような消極的な考え方で取り組んでいくのは、人生の浪費ではないか。そう考えざるを得ません。「仕事は楽しいかね?」これは、人生を充実させるための問いかけでもあると感じます。私が本書を手に取ったのは、こういう理由からかもしれません。
「仕事は楽しいかね?」の内容
大雪で閉鎖になった空港で、偶然出会った老人の問いかけに、動揺してしまった35歳の“私”。日々の仕事にゆきづまりを感じ、未来に期待感をもてない私に、老人は一晩だけの講義を開始した。【引用:「BOOK」データベース】
「仕事は楽しいかね?」の感想
物語として
自己啓発本ですが、小説のようなストーリー仕立てで書かれています。そのことが読みやすく感じさせるのか。著者が言いたいことが、自然と理解出来ます。主人公のマックスが語り掛けるのは、仕事に対する取り組み方。その方法。考え方の変革。生徒に教え諭すように穏やかに語り掛けてきます。
物語として構成しているので、一方的に押し付けられるのではなく、主人公とともにマックスの言葉について考えながら読み進められるのがいいのかもしれません。自己啓発本は、読みやすさと分かりやすさが重要だと考えます。
自分が置かれている状況
今、自分が置かれている状況が物語の主人公の状況と同じなら、ここで語られる内容はとても興味深く感じるはずです。そして主人公の本音は、本書の冒頭で語られています。
勤め出して、ほぼ十五年になります。この十五年の間に、何を誇れるようになったのか。何を達成したと言えるのか。私に言えるのはこれだけです。
『そこそこの給料をもらっている』
まるで自分のことのように感じます。私も達成したものと言えば、今の給料になるための昇給を繰り返したことくらいです。途中の経過は、人それぞれだと思います。ただ、振り返った時に残っている物は何か。それを考えると、同じような結論になる人は少ない数ではないと思います。
学んだこと
本書のエキスは、各章のタイトルに凝縮されています。各章のタイトルが、著者がその章で言いたいことです。もちろんタイトルだけで、著者の言いたいことを十分に理解することは出来ません。本文を読むことにより、そのタイトルの意味を理解することが出来ます。ベースにあるのは、試すということ。試し続けることで日々進化し、昨日と違う自分になっていく。成長していくということなのでしょう。
- 第3章のタイトル「試してみることに失敗はない」
- 第14章のタイトル「きみが「試すこと」に喜びを見い出してくれるといいな」
第14章は、最終章です。試し続けることの大切さ。、そのことに喜びを見い出せれば、継続が可能になり成功するということでしょう。成功の定義は人それぞれですが、少なくとも自らが成長していくことは間違いない。
自己啓発本は、人によって受け止め方が違います。それは、その人の現状がどんなものなのかによって変わってくるからだと思います。私は主人公に共感するところがあったので、引き込まれて読みました。そんな私でも、納得できる部分とそうでない部分があります。人によって、その比率は変わってくるのでしょう。主人公に共感を覚えない人には、著者の言いたいことに納得出来ない部分が多くなるかもしれません。
ただ、書かれていることのひとつでも納得し実践しようと思うのなら、読んだ価値はあったということになるのだと思います。本書は、私にとって有意義な本だったと思います。実践できるかどうかは別にして。
著者略歴
ドーテン,デイル1950年生まれ。アリゾナ州立大学大学院(経済学)卒業後、スタンフォード大学大学院で学ぶ。1980年、マーケティング・リサーチ専門会社、リサーチ・リソーセス(Reserch Resources)を起業し、マクドナルド、3M、P&G、コダックなど大手優良企業を顧客に持つ全米でもトップ・レベルの会社にまで成長させる。1991年、新聞に執筆したコラムが好評を博し、執筆活動を開始。現在米国を代表する人気コラムニスト。氏が執筆するコラムは、100社以上の新聞社に配信され、毎週1000万人以上に愛読されている。執筆活動のかたわら、企業講演、従業員訓練やキャリア・セミナーを主催し、意思決定論、人材育成、キャリア・アップによる能力開発や成功をテーマに独自の理論を展開している