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『話を聞かない男、地図が読めない女』:アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ【感想】

   こんにちは。本日は、「話を聞かない男、地図が読めない女」の感想です。 

 

 かなり前ですが、話題になった本です。日本で200万部、世界で600万部を発行した超ベストセラーです。タイトルに共感する人も多いと思います。もちろん、当てはまらない人にとっては違和感しかありませんが、売り上げ部数を考えるとやはり多くの人が共感しているのだろう。 

 多くの人は男女に違いがあることを知っています。しかし、男女の違いについて語ることは勇気が必要です。科学者や人類学者、社会生物学者にとっては常識のようですが、男女差別と思われるから世間に対して声高に主張しません。どちらが優れているというのではなく、違うということです。タイトルの裏を返せば、会話によるコミュニケーションは女性が優れていて、男は地図を読むことに優れている。そのように捉えることができるが、タイトルが言っているのは違いのことだろう。

 本書で最も重要な前提は、あくまでも「男女の平均像」を取り上げていることです。全ての男性、全ての女性に当てはまる訳ではありません。このことを頭に置いておかないと間違った認識を持ってしまいます。 

「話を聞かない男、地図が読めない女」の内容

なぜ男は一度に一つのことしかできないのか、なぜ女は方向音痴なのか、なぜ女はよくしゃべるのか、なぜ男は一人っきりになりたがるのか…。誰もが納得する男と女の不思議を紹介。脳の違いを知れば男と女はもっとわかり合える。  

 

「話を聞かない男、地図が読めない女」の感想

女の違い

 生物学的な男女の違いと男女平等は全く別物です。混同すると、男女の違いを主張することに二の足を踏ませます。男女の違いは事実として存在し、同じにすることはできないし同じになることはないのだろう。

 男女平等は制度の話であり、政治や社会が担う役割です。社会において得られる権利や機会は平等でなければなりません。ただ、男と女が人間として関わり合うには、生物としての違いを認識しておく必要があります。身体の違いはもちろん、脳の仕組みの違いです。違いを認めず、何もかもが同じものだと思うから男女間のいざこざは絶えないのだろう。

 脳の仕組みは長い進化の過程で形成されています。身体の違いが男女の役割を決め、役割分担が脳の特性を決めた。長い狩猟採集民としての生き方が進化を決め、男女の違いは当然のものとして受け入れられてきました。コミュニティにおいて役割分担は最も効率が良く、当たり前のことです。

 役割分担が不要になった社会ができたのは最近のことです。長い進化の歴史からすれば極めてわずかな期間に過ぎません。人間の脳は男女の違いを色濃く残しています。脳の仕組みの違いを無視して同じであろうとすると、様々なすれ違いが起こり理解し合えません。違いがあると認めてしまえば、理解できるのだろう。

 本作では、男女の違いを身近な出来事で多く示しています。日常生活で誰もが経験していて思い当たることです。タイトルもその内のひとつです。だからこそ、人目を引きベストセラーになったのだろう。

 

学的根拠

 日常で起こる男女のすれ違いを科学的根拠を基に説明しています。特に、脳スキャンを用いて実験しているのが分かりやすい。

 脳の仕組みは完全に解明されていません。しかし、男女の脳の動き、活発化する場所を見ると違いがあることが分かります。脳のそれぞれの箇所が何を司っているのかも徐々に解明されてきています。長い進化の果てに形成された脳は、男女の違いを明確に示します。脳の活性化の違いにより行動の違いが出ると説明されれば納得します。

 男性同士、女性同士でも違いはあります。一般的・平均的な女性と同じような行動をする男性もいます。逆もあります。男と女という違いだけで、絶対的な違いが生まれる訳ではありません。その理由を胎児の時の影響によるものだと説明します。どんな事象にも必ず理由があり、それは科学で証明されていきます。

 面白く書かれていますが、明確な根拠が示されているので頭に入ってきます。違いは全ての男女について当てはまると言っていません。平均的な傾向であり、その傾向は動かしがたい事実として存在しています。

 科学的な根拠はさらに見つかり、男女の違いは明確に理由付けされていくだろう。そうなれば、男も女も違いを受け入れていく。あとはお互いの違いを理解し対応していくことで、男女の関係はさらに良くなっていくだろう。また、理解しなければなりません。

 

感することは悪いか?

 男女の違いを主張すると批判に晒されることがあります。差別だと認識する人が多いということです。確かに男女差別は許されませんが、それは政治・社会・制度上の話です。本書を読めば、違いが存在することは明確です。認めずに何もかもを同じにすることには無理があります。違いを認めた上で、社会制度の中で男女平等を実現していくのだろう。

 多くの人が男女の違いを語ることに躊躇しているのは事実です。本書を出版するのは勇気のいることだったかもしれません。しかし、読み進めていけば、著者が男女差別をしていないとは明確です。あくまでも違いを書いているだけです。そして、お互いが理解する必要があると示しているだけです。

 本書に共感することが、男女差別を認めていることにはなりません。だからこそ、多くの人に読まれているのだろう。平均的な男女の姿と書いているので、共感できない人もいるはずです。しかし、そのことについても説明されています。男脳・女脳の幅は広い。男の特性に近い女脳、女の特性に近い男脳も存在します。共感できなくても、理解できる内容になっています。

  

終わりに

 発売当時、面白そうで挑戦的なタイトルだと感じていました。読んでみると、冷静に男女の違いについて説明されています。感情的な思い込みは排除されています。

 10年以上経過しているので、もっと科学的な根拠は発見されているだろう。我々は今の社会に適応できる脳の仕組みに変えていかなければならないのかもしれない。しかし、簡単には変わらないだろう。だったら理解するしかありません。そのひとつの形として本書があるのだろう。