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『ソードアート・オンライン13 アリシゼーション・ディバイディング』:川原 礫【感想】|キリトとユージオの再会は・・・

 

 セントラル・カセドラルの階を上がるごとに緊張感が増していきます。ディバイディングではキリトとユージオが別行動です。作中でキリトも言っていますが、二人が離れたのは初めてです。だからこそユージオの存在感が増していきます。そして二人は意外な形で再会します。セントラル・カセドラルの中で交互に描かれる2人ですが、ユージオの方がやや緊張感が高い。 

「ソードアート・オンライン13」の内容

「咲け、青薔薇」“公理教会”の象徴である白亜の塔“セントラル・カセドラル”、最高司祭“アドミニストレータ”の待つ最上階を目指すキリトとユージオ。ついに二人は、“金木犀”の整合騎士アリスと再び対面する。しかし、キリトとアリスの“武装完全支配術”が暴走して塔の外壁を破壊、二人はカセドラルの外へと投げ出されてしまう。キリトと離ればなれになったユージオは、相棒の存命を信じ、単身塔を上り続ける。そんな彼の前に現れたのは、最古にして最強の整合騎士、ベルクーリ・シンセシス・ワン。子供の頃から憧れていた伝説の武人を前に、ユージオは青薔薇の剣を抜く。その決闘の結末は、一人の剣士の誕生により幕を閉じる。キリト不在の中、ユージオは整合騎士の鎧に身を包み、瞳に冷たい光を浮かべ―。【引用:「BOOK」データベース】  

「ソードアート・オンライン13」の感想

 リトとアリスの接近

 セントラル・カセドラルから放り出されたキリトとアリスですが、放り出されたからといって落ちません。落ちて死ぬはずもないですが。何とか壁にぶら下がった二人が取れる行動は限られています。戦いを継続するか、休戦するか。

 休戦=カセドラル内部に戻るために協力するということです。彼らが接近するのは予想の範囲内ですが、キリトの説得に応じてしまうアリスは簡単過ぎる気がします。また、壁にぶら下がったアリスの体たらく振りはあまりにも違和感があります。足場の不安定さはキリトも同じ。高さの恐怖だろうか。しかし、アリスは普段、飛竜に乗っています。高さには慣れていそうです。キリトにとってアンダーワールドでの死は現実の死ではありませんが、アリスにとっては死そのものです。その違いが二人の違いになって表れたとすれば納得できます。整合騎士がそこまで死を恐れるのも違和感がありますが。

 アリスの変貌ぶりはあまりに急激です。冷徹な整合騎士から人間的な側面が一気に表出してきます。キリトの語る過去に反応するのも素直過ぎる気もします。ユージオの顔を見ても何も反応しなかったのに、セルカという名前だけでそこまで反応してしまうとユージオの立場がない。キリトらしいが、アリスとの接近はびっくりするほどのスピードです。 

ージオの苦悩

 キリトと離れたことで、ユージオは自分を見つめ直すことになります。これまでの道程だけでなく、これからの道筋も一人で考える必要に迫られます。過去から現在そして未来に向けて思いを巡らせれば、自ずと一か所に収束します。

アリスが連れ去られた時に何もできなかったこと。

 それがユージオのトラウマです。彼の行動の原点であり、後悔であり、引け目です。ユージオの心の内が詳細に描かれます。トラウマがキリトとの意外な再会へと繋がるのですが。

 アンダーワールドの住人の性質は、禁忌目録を含む法への絶対服従です。それが生きる拠り所になっています。ユージオは右目の封印を破っており、法に縛られることもない。逆に言えば拠り所を失ったと言えます。自ら考え、人生を選択していかなければならない。ユージオは経験したことのない状況に不安定になります。キリトがいなくなったことにより自らの信念の有無を自覚せざるを得ません。

 キリトの信念が羨ましいのは引け目があることも一因です。キリトと別れたことで、余計にキリトと自分を比べます。キリトを信じてきたのと同時にキリトが羨ましい。何もかもを持っていると思ってしまう。実際には違うとしてもユージオのトラウマは彼を追い詰めていきます。愛という形でユージオのトラウマは表現され、アドミニストレータに付け込まれます。付け込まれる要素として十分です。

 キリトの生存を信じるということは、アリスと行動を共にしているということです。愛は独占欲という形を取る場合もあります。ユージオにとって、嫌悪すべき感情なのかどうかも分かりません。キリトと離れたことで、ユージオは考えざるを得ない。その上で進む訳ですが、負の方向へと向かっていきます。 

人のアリス

 キリトは、アリスを二つの人格に分けて考えています。

  • 整合騎士アリス⇒作られた存在
  • アリス・ツーベルク⇒封印された存在

 記憶を無くした整合騎士アリスは、元の人格を保持していないのだろうか。過去の記憶がないことと別の存在になってしまうことは意味が違う気もします。ただ、別人格とした方がストーリーが展開しやすいのも分かります。キリトとユージオはそれぞれ別のアリスを見ているとしたら、どちらのアリスを残すかという問題へとすり替わります。

 アリス・ツーベルクの記憶を取り戻したことで整合騎士アリスの消滅になってしまうのは違和感がありますし、過去の記憶を取り戻したことで整合騎士として生きた記憶が失われる理由も分かりません。記憶は残ってもいいのではないか?整合騎士アリス自身が自らの消滅を示唆しているのでそうなのかもしれないが。整合騎士アリスの存在は、キリトとユージオで捉え方が全く違います。

  • ユージオにとって、整合騎士アリスは幼馴染アリスを乗っ取った存在
  • キリトのとっては、整合騎士アリスも一人の大切な存在。

 どちらが正解なのだろうか。二人のアリスを別の存在と見れば、彼らの立ち位置はそれぞれ正しい。ふたつの存在は切り分けられたものとして進んでいくのだろうか。微妙な違和感が残ります。 

闘シーン

 キリトとアリスは少しの戦闘シーンはありますが、一時休戦状態です。13巻の戦闘の醍醐味は、ユージオ vs ベルクーリです。単なる戦闘能力だけでない戦いが始まります。ベルクーリとユージオの会話は戦闘と同じくらい重要な要素です。剣を交わす直前の緊張感の中、駆け引き込みの会話が続きます。裏表のない会話であることが読んでいて清々しい。

 ベルクーリの戦闘能力はユージオとは比較にならないはずです。だからこそ、ユージオは駆け引きを行わなければなりません。彼我の力を埋めるため、駆け引きを巡らすユージオの姿はキリトを彷彿とさせます。ベルクーリとユージオの会話は長い。一方、彼らの戦闘はあっという間に終わってしまいます。ベルクーリがユージオの斬り、ユージオがベルクーリを武装完全支配術で押さえ込む。決着がつく前に邪魔が入ってしまう訳ですが。 

終わりに

 整合騎士が出尽くし、物語は新たな局面へと続きます。元老院がアンダーワールドの闇を見せつけます。元老長チュデルキンとアドミニストレータの登場。シンセサイズされたユージオ。セントラル・カセドラルの中での戦いが終盤を迎えていることが分かります。

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