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『ソードアート・オンライン18 アリシゼーション・ラスティング』:川原 礫【感想】|キリトの復活

 「ソードアート・オンライン9 アリシゼーション・ビギニング」から始まった物語が完結します。人界VSダークテリトリーのアンダーワールド大戦は、アンダーワールドVSリアルワールドの側面も含んできています。戦争はアリスと関係なく進んでいきます。

 ガブリエルはアリスを追い、ヴァサゴはキリトを追います。アンダーワールド大戦の鍵を握る二人が積極的に動くことで緊迫感が増します。キリトの覚醒の予兆は徐々に表れてきています。アンダーワールド大戦を混沌とした状態に導くヴァサゴとアリスを追うガブリエル。キリトは状況を打破できるのか。

 ヴァサゴの正体が判明することで、アインクラッドからの運命も突き付けられます。アインクラッドから逃れられない宿命を感じます。ヴァサゴはアインクラッド最後の敵であり、キリトを含むアインクラッド生還者にとっては悪夢です。その運命にケリをつけるのがキリトです。どれだけの強さを発揮して物語を収束させるのでしょうか。チート化してしまう予感もしますが。 

「ソードアート・オンライン18」の内容

アンダーワールド“最終負荷実験”二日目。“人界軍”最強の整合騎士ベルクーリ、スーパーアカウント・太陽神ソルスのシノンを打ち破ったガブリエルは、逃げるアリスを追う。

一方、圧倒的な数の“暗黒騎士”に包囲された“人界軍”囮部隊の戦場では、アスナの奮闘、リズベットやシリカらの助力虚しく、ついに自失状態のキリトが、ラフィン・コフィンの残党“PoH”につかまってしまう。積年の恨みを晴らさんと、PoHの毒牙がキリトに迫り―瞬間。キリトのこころの中に、声が響いた。それは、共に暮らし、戦い、笑いあった彼の親友の声。たった一人の、最高の相棒の声―。ついに、キリトは復活する。アンダーワールドに生きる“すべて”を、救うために。 【引用:「BOOK」データベース】 

「ソードアート・オンライン18」の感想

ヴァサゴの正体

 ヴァサゴの正体は予想できます。アインクラッドでヴァサゴの率いるラフィン・コフィンは絶対悪として存在していましたが、それすらもヴァサゴの道具に過ぎなかった。重要なのは、

  • 彼が何故アインクラッドにいたのか。
  • 何故レッドプレイヤーになったのか。

 その理由は、彼の回想で語られることになります。彼の生い立ちが育んだ歪んだ性質は、果たして彼の責任なのでしょうか。ガブリエルとは違った悪の形態です。

 ラフィン・コフィンはキリトの運命を大きく左右し続けています。アンダーワールドにダイブすることになったきっかけも、ラフィン・コフィンの残党の襲撃です。物語の終結に向け、ラフィン・コフィンが立ちはだかります。ヴァサゴはどのような幕引きをもたらすのでしょうか。

 キリトはアンダーワールドの守護者であり正義として存在しています。ヴァサゴはガブリエルと同様、悪として存在しています。ただ、ヴァサゴの生い立ちを考えると、彼も犠牲者であり被害者です。絶対悪の印象は薄まり、ガブリエルほどの純粋で絶対的な悪に感じません。だからと言って、彼の行動が正当化できるはずもありません。自身の不幸を他人の犠牲で紛らわすことは許されない。キリトとヴァサゴの因縁は、彼が悪であることとは別の次元かもしれません。

 

変わらずのチート級

 アドミニストレータとの決戦以降、精神喪失状態のキリトに活躍の場はありません。キリトの状態はアンダーワールド大戦が始まっても変わらずでしたが、満を持して復活します。中韓プレイヤーの参戦で状況は最悪です。キリトは精神喪失状態であっても、状況は多少把握しています。ガブリエルやヴァサゴがアドミニストレータ以上の強さかどうかは分かりませんが、リアルワールド人と人工フラクトライトという決定的な違いがあります。アドミニストレータとの戦いとは全く違う戦いになるでしょう。

 中韓プレーヤーがひしめく最も激しい戦闘の最中で覚醒しますが、あっという間に彼らを排除してしまいます。青薔薇の剣の武装完全支配術を使うことは予想された攻撃ですがあまりにあっけない。ユージオの力が加わっていたこともありますが、本来の持ち主以上の威力です。

 キリトのどこに青薔薇の剣を使いこなせる要素があったのでしょうか。圧倒的多数を瞬時に戦闘不能にしてログアウトさせる唯一の方法ですが、精神喪失で過ごしていたキリトの成長の根拠は何でしょうか。ヴァサゴとの戦いでも圧倒的な力の差があります。いつの間にか心意の使い手になっています。心意が軽々しく発動してしてしまうのはキリトだからということでしょう。

 ガブリエルとの戦いは、一見すると不利に見えます。身体の大半を失い、心臓も失います。それでも死ぬことなく反撃する。アンダーワールドではペインアブソーバーは働きません。心臓を失う痛みに耐えられるとは思えません。敵が同じ状態に陥ったら、死亡するに違いありません。キリトは耐えて逆転しますが、理由なき強さに感じます。理由付けされていますが、都合の良い解釈や出来事が積み重ねられています。

 アンダーワールド大戦は収集がつかないほど混迷を極めています。これほどの混沌を一気に解決するには異常な強さを発揮するしかないのでしょう。

 

リスの重要性

 アリスを守りきるかどうかでアンダーワールドの行く末が決まります。ガブリエルが奪取すればアンダーワールドは消失するし、守りきればアンダーワールドは存続する可能性が出てきます。アリス次第で結果が変わります。

 アリスを守りきってもアンダーワールド人が全滅すれば意味がありません。アンダーワールドは人界とダークテリトリーで構成されています。人界とダークテリトリーの戦いが続いたとしても、どちらかの勝利で終われば人工フラクトライトは残ります。しかし、アメリカ・韓国・中国プレイヤーにアンダーワールド人が全滅させられる可能性もあります。アリスと同じくらいアンダーワールド大戦の行く末は重要です。

 アリスの絶対的重要性が薄まります。アンダーワールド大戦が描かれることが多く、アリスが活躍するシーンが減ったからでしょう。キリトの復活でアリスの逃走の緊迫感も薄くなります。アリスとガブリエルの直接対決がなかったからかもしれません。

 

エピローグとプロローグ

 現実世界でのアリスの身体はニエモンをベースにしていますが、アンダーワールドでのアリスと変わらない外観を持っています。精神性は別にして、あまりに同一性が過ぎます。アリスのその後は、アリシゼーション編の締め括りとして必要なことは理解できますが。

 全てが丸く収まりスムーズにエンディングを迎えるために、エピローグで一気に物語を収束させています。詰め込み過ぎな感じがします。ヴァサゴの行方も謎っぽく終わっています。

 次作のプロローグも加わりアンダーワールドが舞台になる物語はまだまだ続きそうです。キリトとアスナの200年が明かされ、アリスの帰還も描かれるでしょう。著者がアンダーワールドを描き続けたいのかもしれません。一気に科学的進歩を遂げたアンダーワールドに戸惑う感があります。長かったアリシゼーション編が終了しましたが、結末は微妙な印象を拭えません。