『ハイウェイスター』【ファミコン】レビュー|スクウェアが生んだ伝説のスピード感」:MANPA Blog

懐かしの疾走感、もう一度。――『ハイウェイスター』再プレイレビュー

HIGHWAY STARのソフトパッケージ

1987年にスクウェアから発売されたファミコン用レースゲーム「ハイウェイスター」の再プレイレビュー。

当時大ヒットしたアーケードゲーム「アウトラン」とよく比較されましたが、「ハイウェイスター」にはファミコンならではのスピード感と爽快な走行演出があります。

本記事では、3D視点で描かれた疾走感の魅力やコース設計の工夫、そして今プレイしても感じる面白さと課題を、当時の記憶を交えて解説します。

 

スピード感は爽快! でもグラフィックは少し控えめ

「ハイウェイスター」の最高速度は時速255kmです。数字だけ聞くと、「あれ? そんなに速くないな」と思うかもしれません。なにしろ、同じファミコンの初期タイトル「F1レース」は時速400kmを超える設定でしたから。

ところが実際に遊んでみると、その体感スピードはまったく違います。「ハイウェイスター」の方が断然速く感じます。

その理由は、スピード感の見せ方にあります。実際の速度よりも、他車や道路脇の木、標識、ガードレールといったオブジェクトとの相対的な動きを重視しているのです。

これらの背景がものすごい勢いで後方に流れていくことで、プレイヤーは「今めちゃくちゃ走ってる!」という感覚を得られます。

スピード表示よりも視覚的な演出で走行感を表現するという発想は、ファミコン時代としてはかなり巧みでした。

街路樹や標識が前方から現れ、気持ちいいテンポで後ろに流れていく。この瞬間の爽快感が「ハイウェイスター」の醍醐味です。

さらに、コースにアップダウンがあることで、ただの平面走行ではない立体的な疾走感が生まれています。

坂を登るときのもどかしさ、下るときの加速感。画面の奥行き表現に工夫が感じられ、当時のファミコン技術をうまく引き出しています。

一方、グラフィックの印象は人によって評価が分かれると思います。3D視点なので、自車も他車もすべてリアビューのみです。

派手さはありませんが、背景は丁寧に描かれています。青空に流れる雲、夕暮れの街並み、アクロポリスの遺跡、サンフランシスコの夜景。各コースごとにしっかりとした個性があります。

特に、カーブを曲がるたびに背景が横に流れる演出は秀逸です。スピード感を損なわず、コース全体をダイナミックに見せることに成功しています。

ただし、他の同時期のゲームと比べて特別に美しいかと言われると、そうでもありません。全体としてはほどよく綺麗で、堅実な仕上がりという印象です。

COURCE 4 RUINS OF ATHENS
コースの難易度差がすごい! 根気が試されます

ゲームの基本ルールはとてもシンプル。全8コースを制限時間内に走り切ればクリアです。

途中にはチェックポイントがあり、そこを通過するとタイムが延長されます。定番のシステムです。このあたりは説明書を読まなくてもすぐ理解できる親切な設計です。

私も当時、説明書を読まずにプレイを始めたのですが、しばらくの間、ターボ加速の存在に気づかず、「全然クリアできない!」と首をかしげていました。

それでも遊び続けられたのは、ゲームバランスの良さと操作感の気持ちよさがあったからでしょう。


ただし、全体的に難易度は高めです。1回クラッシュしただけで、残り時間的にクリアが厳しくなるコースもあります。

しかもコンティニュー機能はなし。ステージセレクトの裏技を使えば実質的なやり直しはできますが、基本的にはノーミスで走り切る根気が求められます。

後半コースに行くほど他車も増えていきます。スピードを出しすぎるとすぐにクラッシュ。ギリギリのバランスで攻めるスリルに賛否が分かれるかも。

8コースすべてを走破してエンディングを見るまでには相当な時間がかかりました。その分、エンディングを見た瞬間の達成感は格別でした。

苦労した末に味わうあの充実感は、今のゲームにはなかなかないものかもしれません。

 

最後に ― ファミコンらしい地味に良作

「ハイウェイスター」は、派手さよりも丁寧さが光ります。

当時のファミコンの性能では、3D的なスピード感を表現するのは非常に難しかったはず。

それでも、背景の流れや坂道の表現を工夫することで、プレイヤーに走っている気持ちよさを伝えることに成功しています。これは本当にすごいことです。

確かに、「アウトラン」のような華やかな演出や音楽、分岐ルートなどはありません。けれど、限られた容量の中で純粋に走る楽しさを形にしたこの作品には、どこか職人的な誠実さを感じます。

一度エンディングまでたどり着くと、再プレイしたくなるかどうかは微妙です。しかし、ファミコンの3Dレースゲームとしてはよくできていると胸を張って言える出来です。

走る気持ちよさ、スピード感、そしてちょっとした緊張感。どれも当時の記憶を思い出させてくれます。


「ハイウェイスター」は、地味ながら確かな完成度を持った一作です。今あらためて遊んでみると、1980年代のゲームづくりの情熱と工夫が感じられる、そんな温かみのあるタイトルでした。