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『「もっと読みたい」と思わせる文章を書く(読まれるエッセイの書き方)』加藤 明【感想】|あなたの作品が見違える

ご覧いただきありがとうございます。今回は、加藤 明氏の「「もっと読みたい」と思わせる文章を書く(読まれるエッセイの書き方)」の読書感想です。

文章を書く機会は意外と多い。仕事ではもちろん、SNSやブログでもそうです。人に何かを伝える時に文章は不可欠です。youtubeなど映像で伝える方法が隆盛を極めても、文章を使うことは無くなりません。

しかし、文章は身近でありながらも、いざ書くとなればなかなか難しい。子供の頃に書いた読書感想文もなかなか辛い作業でした。人に読んでもらうとなればなおさらです。この文章を書きながらも、果たして最後まで読んでもらえるのか自信がありません。

一体、どんな文章を書けば読んでもらえるのか。文章を書く人の共通の悩みです。答えのひとつが本書でしょう。実践的に書かれています。具体例も多い。自身の文章を見直し、問題点を見つけ出す一助になるはずです。

『「もっと読みたい」と思わせる文章を書く』の内容

「起承転結」の組み立てと「素材」の切り口で、あなたの作品が見違える。週刊朝日編集長・朝日新聞論説委員を歴任。文章指導のプロがチェックしている表現力、語彙力よりも大切なこと。【引用:「BOOK」データベース】

 

『「もっと読みたい」と思わせる文章を書く』の感想

ッセイとは

副題は「読まれるエッセイの書き方」です。本書は、文章の中でもエッセイの書き方を説明しています。エッセイとは、書き手が思ったことや感じたこと、考えたことを思うがままに書き記した文章のことです。特定の文学的な形式は持っていません。簡単に言えば、日記みたいなものでしょうか。

個人的な出来事や思いを書くのだから、誰かに読んでもらうのはなかなか難しいジャンルでしょう。面白みや読者の共感を引き出さないと最後まで読んでもらうことはできません。どんな文章にも言えることですが。

正直なところ、エッセイを読んだことはありません。私は小説を読むのは好きですが、エッセイにあまり興味がない。そもそもエッセイがどういうものなのかもよく知りません。

著名な作家や芸能人や文化人など、様々なジャンルの人がエッセイを出版しています。自身の経験を基に書いているのでしょう。考えようによっては、誰でも書こうと思えば書けるジャンルがエッセイなのかもしれません。書けることと読んでもらえることは別ですが。

テーマも、旅や食・日常の出来事など様々です。考えようによっては、自分が興味のあるテーマのエッセイが存在するということです。すなわち、読み手にもなれるし、書き手にもなれる。身近な存在がエッセイなのです。

エッセイには特定の文学的な形式が存在しないと最初に書きました。エッセイを書くことのハードルを下げる要素になりますが、逆にハードルを上げる要素にもなります。

形式がないということは、どんな風にも書けるということです。書くための道しるべがありません。どのように書いていけばいいのか迷ってしまいます。選択肢が多ければ多いほど、人は迷って進めなくなってしまうものです。エッセイには気軽さとともに奥深さもあるのでしょう。

 

が重要なのか

人に読んでもらうのに必要なのは、当然、内容だと考えます。つまらない文章は誰も読んでくれません。しかし、面白い内容であったとしても、必ず読んでもらえるとは限らないようです。

著者が最も重要視するのは内容ではありません。形式です。先ほど、エッセイには特定の形式はないと書きました。しかし、人に読んでもらう文章にするには、最低限必要な文章の形式があります。「起承転結」です。本書はまず「起承転結」の重要性について詳しく説明しています。

「起承転結」と聞くと、子供の頃の授業を思い出します。文章構成のひとつの手法です。元々は、四行からなる漢詩の構成を指します。起句・承句・転句・結句です。

語源はともかく、起承転結で文章を組み立てることが重要です。エッセイを書く上で、最も重視すべきことらしい。秩序正しく組み立てることができ、なおかつそれぞれの箇所で果たす役割を理解した上で書かれた文章は分かりやすいということです。

起承転結のためには、文章の役割を四つに分割する必要があります。文章構成が明確になり、自分自身が書こうとしていることが頭の中で整理されます。整理された文章は、読み手にも分かりやすい。

著者は、起承転結の文章を作ればいいと言っているだけではありません。それだけではあまりに抽象的過ぎるし、どうしていいか分かりません。具体的なやり方を説明してくれないと、読者はいざ書こうと思ってもペンが進まないでしょう。

本書は、具体的な書き方や事例を紹介しています。「起・承・転・結」のそれぞれが果たす役割はもちろんのこと、文章量の配分や最も伝えたいことをどこに置くか。実際に書かれたエッセイを基に、良い点や悪い点を解説しています。どのようにすれば、人が読んでくれるような文章構成になるのかが非常に分かりやすい。

文章を書く時、誰もが頭を悩ませるのが何を書けばいいのかということです。しかし、いいアイデアが思いついたとしても、それを形にする技法が身に付いていなければ誰にも伝わりません。伝わらなければ、どれほど魅力的なテーマであったとしても読んでもらえません。

起承転結が一般的な文章構成として認知されているのは、それだけの効果があるからです。起承転結で書かれた文章には、読みやすさを感じます。逆に言えば、それに則っていない文章は読みにくいということです。

敢えて、起承転結から外れた文章を書くことで読者を引き込むこともできるかもしれません。しかし、そんな手法を取れるのは文章のプロだけです。起承転結の効果を十分理解しているプロだからできる技です。文章を書き始めた書き手には難しい。

起承転結の重要性と書き方を身に付ければ、かなりの前進になります。身に付けなければ、文章を書くスタートラインにも立てません。

 

み手に向けて

日記とエッセイの違いは読者がいるかどうかです。それに尽きるでしょう。誰かに読んでもらうための文章と、自分だけが読む文章では全く意味合いが違います。

日記を読み返すのは自分だけであり、目的は記録のためであったり情景を思い出したりするためです。自分に向けて書くだけです。

一方、エッセイは日常の出来事を書くとしても、読み手に向けて書かなければなりません。独りよがりの文章では誰も最後まで読んでくれない。読み手が理解できる内容かつ引き込む魅力が必要です。常に読者を意識して書かないと上達しません。

著者が「起承転結」を重視しているのも、読者が読みやすく理解しやすい文章構成だからです。ただ、「起承転結」ばかりに意識が行き過ぎると、読者を忘れてしまう可能性もあります。起承転結の文章を作ることばかり考え、その先にいる読者が見えなくなってしまいます。結果、文章構成はそれなりの形になっても、中身が全く伴わないエッセイになってしまいます。それでは本末転倒です。

何のために文章を書くのか。誰のために文章を書くのか。最も基本的なことです。自分が伝えたいことがある。誰かに共感してもらいたいことがある。文章を通じて、読者と繋がりを持ちたいという気持ちがあるからこそ書き始めるのでしょう。

その気持ちがありながらも、書き始めると技術的なことに意識が向いてしまいます。もちろん、技術的なことは重要です。文章の基本ができていないと読んでもらうことができません。しかし、技術ばかりに目が行き、本来の目的である誰かに伝えたいという気持ちがどこかに消えてしまうと中身のないスカスカの文章になってしまいます。

常に読み手を意識する。それがあるからこそ、魅力的な文章を書くことができるのだと思います。

 

終わりに

小説を読んでいると、自分も小説を書いてみたいという気持ちを抱くことがあります。多かれ少なかれ、本を読む人は自分も書いてみたいと思うものではないでしょうか。

本書はエッセイに特化していますが、汎用性はあると思います。具体的かつ実践的な内容であり、著者が主宰しているエッセイ塾の生徒の作品も多数掲載しています。塾生の作品の方が、プロのエッセイより参考になります。また、良い点だけでなく、悪い点についても解説しているので分かりやすい。

本書を参考に、一度文章を書いてみるのもいいかもしれません。果たして、どんな文章になるのか楽しみになるでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。