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『ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット』:川原 礫|過去に囚われた三人が向かう先は・・・

 ファントム・バレットの後半で、物語の終結です。キリトとデス・ガンの過去の因縁。シノンの心の闇。仮想世界と現実世界は必ずしも別の世界でなく、深く繋がりあっていて、それぞれに影響を及ぼしている。そのことがとてもよく伝わってきます。それは、心の問題において顕著に描かれています。

 自分の心とどう向き合うか。

 アインクラッド、フェアリィ・ダンスに比べ、登場人物たちの心の機微が詳細に描かれている気がします。物語は、デス・ガンとの決着をつける舞台「バレット・オブ・バレッツ」の本大会へと突入していきます。 

「ソードアート・オンライン6」の内容

銃と鋼鉄のVRMMO“ガンゲイル・オンライン”で発生した“死銃”事件を調査するため、“GGO”へとログインしたキリト。一見超美少女キャラと見間違えるアバターにコンバートされるトラブルに遭った彼だったが、スナイパーの少女・シノンのナビゲートにより、全ガンナーの頂点たる対人トーナメント“BoB”に無事参戦を果たす。キリトは、銃が支配するこのゲームで唯一“光剣”を駆使、“BoB”を勝ち進む。その奇抜な戦闘スタイルが話題となり、徐々にゲーム内での知名度は上がっていった。そして“BoB”決勝。数多の強敵がひしめく“バトルロイヤル”の中、ついに“死銃”が姿を現す。果たして“死銃”とは何者なのか。本当に“仮想世界”から“現実世界”へ影響を及ぼすことができるのか…キリトは単身、“死銃”へと挑む!!【引用:「BOOK」データベース】 

「ソードアート・オンライン6」の感想

レット・オブ・バレッツ

 VRMMOゲーム内の戦いが舞台になるので、この戦い自体が面白くないと白けてしまいます。総勢30人のバトルロイヤル。キリトとシノンとデス・ガンがメインだからと言って他の参加者を描かなかったら、バレット・オブ・バレッツ自体が盛り上がらなく感じてしまいます。かと言って、30人の戦いを描くと焦点がぼやけてしまいかねません。

 数人の参加者に絞り、彼らの戦いを描く。そして、その戦いにデス・ガンを絡ませてくる。不必要な戦闘を描くことなく、大会自体の派手さも伝わってきます。目に見える戦闘の裏で、デス・ガンの脅威が伝わります。戦闘自体の緊張感に、デス・ガンの緊張感。相乗効果が出ているかな、と感じます。 

リトとデス・ガン

 物語の当初には発生していなかったキリトとデス・ガンの過去の因縁。その因縁が惹起されてからは、物語の大きな軸になっています。キリトにとっては、変死とデス・ガンの関係を調査することから始まったに過ぎない物語が、彼の過去に大きな影を落としていく。キリトの苦悩と戦いが、単なる表層的なゲームの戦いでなく自らの存在を懸けて戦っているように感じてきます。

 デス・ガンの正体を探ろうとしながらも、どんどん追い詰められていく。そのジリジリと詰め寄ってくる圧迫感が伝わってきます。予選で圧倒的な実力を発揮したキリトを、軽々と追い詰めていくデス・ガン。アインクラッドから抜け出せず生き続けてきたデス・ガンと、アインクラッドの闇を忘れようとして生きてきたキリト。その違いが、力の差となっているとうことなのでしょうか。 

ス・ガンの正体

 デス・ガンがアインクラッドでの殺人者と言うのは、既に分かっています。

  • それが誰なのか。
  • 現実の変死事件と関係しているのか。
  • 関係しているならば、方法は。

 キリトが看破することになるのですが、ちょっと勘が良すぎる気もします。名探偵さながらの推理力です。しかも、当たっている。その推理があるからこそ、シノンのゲーム内の死=現実の死に繋がり、彼女の恐怖が増していくのですが。現実に殺人を行う方法としては、荒唐無稽ですぐに捕まりそうですが。  

ノンの心の闇

 デス・ガンはキリトだけでなく、シノンの心の闇も増幅させていきます。デス・ガンが標的にしているのはシノンですし、実質、追い詰められているのはシノンです。キリトが倒れることはシノン自身の死にもなるわけですから、キリト以上の恐怖を感じるのは当然です。

 彼女が対峙すべき過去の闇とデス・ガンが重なり、言いようのない圧迫感を与えてきます。ゲーム内での殺し合いの緊張感だけでなく、現実の生死を懸けた緊張感。アインクラッド以来の緊張感と緊迫感があります。 

最後に

 キリトがデス・ガンを倒し、現実世界での変死事件も解決するのは当然の帰結です。変死事件を解決して、デス・ガン事件は終結です。しかし、解決すべき問題はまだあります。シノンの過去の闇です。彼女の心の闇を解放して、ようやく事件は解決するのでしょう。過去と決別するのではなく、向き合う。その辛さから逃げていては、何も始まらないということです。ただ、キリトたちは高校生なんですが、あまりに達観しすぎている気もします。