晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト

早逝のSF作家 『伊藤計劃』 作品紹介

f:id:dokusho-suki:20200620200006j:plain

 伊藤計劃の「虐殺器官」を読んだ時の衝撃は、今でも鮮やかに記憶に残っています。彼の描いた世界に引き込まれ一気に読みきってしまった。

 私は評論家でも批評家でもないので、「どこが?」「どのように?」と問われると返答に困ってしまいます。ただ、読んだ時に感じたものが自身の感覚に鋭く突き刺さったということだろう。

 私が「虐殺器官」と出会った時には、彼はすでにこの世にはいませんでした。34歳という早すぎる死に驚くとともに悲しみを覚えました。オリジナル長編小説は二作品だけです。ノベライズの「メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット」と、円城塔が未完の原稿を引き継いだ「屍者の帝国」を含めても四作品です。

 新しい作品が生み出されない喪失感はありますが、彼の作品は色褪せることはないと思います。著作は、映像化され、漫画にもなり、海外でも発刊されています。多くの賞も受賞しています。多くの人を魅了し、今なお存在感を残し続けています。

 彼の著作は多岐にわたります。小説はもちろん、エッセイ、映画評論、雑誌掲載の短編など。現在でも入手が容易なものを紹介していきます。 

作家「伊藤計劃」 経歴

 1974年10月東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。

 2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。同書は「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。

 2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギアソリッドガンズオブザパトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞。

 2009年3月没。享年34。2011年、英訳版『ハーモニー』でフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞した。 

 

長編小説

『虐殺器官』:2007年発表

 伊藤計劃のデビュー作品。第7回小松左京賞最終候補に残る。「ベストSF2007」国内篇第1位。「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位。

 

9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。

 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう.....。彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?【「BOOK」データベース】  

 

 

 

『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット 』:2008年発表 

 ゲーム「メタルギアソリッド4」のノベライズ作品。ゲームデザイナーの小島秀夫が新作「メタルギアソリッド4」のノベライズを伊藤に依頼します。伊藤は小島の熱狂的なファンであり、単なるノベライズ以上の作品とするべく執筆した作品である。

 

暗号名ソリッド・スネーク。

悪魔の核兵器「メタルギア」を幾度となく破壊し、世界を破滅から救ってきた伝説の男の肉体は急速な老化に蝕まれていた。戦争もまた、ナノマシンとネットワークで管理・制御され、利潤追求の経済行為に変化した。中東、南米、東欧―見知らぬ戦場に老いたスネークは赴く。

「全世界的な戦争状況」の実現という悪夢に囚われた宿命の兄弟リキッド・スネークを葬るため、そして自らの呪われた血を断つために。 【「BOOK」データベース】 

 

 

 

『ハーモニー』:2008年発表

  第40回星雲賞(日本長編部門)、第30回日本SF大賞を受賞する。「ベストSF2009」国内篇第1位。2011年、英訳版『ハーモニー』でフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞。

 

21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―

それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見る―【「BOOK」データベース】 

 

 

 

『屍者の帝国』:2012年発表

 伊藤がガンで早逝したため、約30枚の未完の原稿をもって絶筆。遺族から承諾を得て円城塔が引き継ぎ、2012年8月に『屍者の帝国』として完成させ発表した。

 

屍者復活の技術が全欧に普及した十九世紀末、医学生ワトソンは大英帝国の諜報員となり、アフガニスタンに潜入。その奥地で彼を待ち受けていた屍者の国の王カラマーゾフより渾身の依頼を受け、「ヴィクターの手記」と最初の屍者ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける。【「BOOK」データベース】 

 

 

 

短編集

『The Indifference Engine』:2012年発表

  「伊藤計劃記録」「伊藤計劃記録 第弐位相」に収録された作品から、主に小説作品を再編して刊行。

 

ぼくは、ぼく自身の戦争をどう終わらせたらいいのだろう―

戦争が残した傷跡から回復できないアフリカの少年兵の姿を生々しく描き出した表題作をはじめ、盟友である芥川賞作家・円城塔が書き継ぐことを公表した『屍者の帝国』の冒頭部分、影響を受けた小島秀夫監督にオマージュを捧げた2短篇、そして漫画や、円城塔と合作した「解説」にいたるまで、ゼロ年代最高の作家が短い活動期間に遺したフィクションを集成。 【「BOOK」データベース】 

 

 

 

映画化

『屍者の帝国』:2015年10月公開

 

Project Itoh公開第1作。

“死者蘇生技術”が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末。ロンドンの医学生ジョン・H・ワトソンは、親友フライデーとの生前の約束どおり、自らの手で彼を違法に屍者化を試みる。その行為は、諜報機関「ウォルシンガム機関」の知るところとなるが、ワトソンはその技術と魂の再生への野心を見込まれてある任務を命じられる…。【「Oricon」データベース】

 

 

『ハーモニー』:2015年11月公開

 

Project Itoh公開第2作。

近未来、世界は“大災禍”と呼ばれる混沌から復興し、健康志向は極限まで追求され、ほとんどの病気や健康リスクは未然に防がれるようになっていた。しかしカリスマ的美少女・御冷ミァハは、そんな思いやりにあふれた優しすぎる世界を拒絶し、2人の少女とともに自殺を企てる…。【「Oricon」データベース】

 

 

 

『虐殺器官』:2017年2月公開

 

Project Itoh公開第3作。

9.11以降、テロとの戦いを経験した先進諸国は、徹底的なセキュリティ管理体制に移行することを選択し、一方で後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。そんな中、暗殺を請け負う部隊に属するクラヴィス・シェパードは、謎のアメリカ人言語学者ジョン・ポールを追っており…。【「Oricon」データベース】

 

 

 

その他作品

『伊藤計劃記録 Ⅰ』:2015年発刊

 

個人ブログ「伊藤計劃:第弐位相」を中心に、SF、映画、ゲーム、さらに自らの病について綴られた数々の文章。その独特の語りと、冷静かつユーモアを湛えた世界への視線で、作家デビュー以前から類まれな才能をうかがわせた2001~2005年までの文章を収録する全記録第1弾。 【「BOOK」データベース】 

 

 

『伊藤計劃記録 Ⅱ』:2015年発刊

 

『虐殺器官』による衝撃のデビュー直後のロング・インタビュー、円城塔との対談、そしてデヴィッド・フィンチャーや「ダークナイト」、『ディファレンス・エンジン』などについて、死の直前まで書き続けられた個人ブログ「伊藤計劃:第弐位相」―2006~2009年までに作家・伊藤計劃が著したフィクション以外の文章、インタビューを集成する全記録第2弾。 【「BOOK」データベース】 

 

 

『Running Pictures―伊藤計劃映画時評集1』:2013年発刊

 

「マトリックス」「シックス・センス」「ファイト・クラブ」「トゥルーマン・ショー」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」―

デビュー以前に著者が運営していたウェブサイト「スプークテール」で書き続けられていた映画時評67本+αを、2分冊で完全集成。数々の名作とほんの少しの「トンでもない」作品が、伊藤計劃のあらたな視点と映画に対する大いなる愛情をもって語り直される。 【「BOOK」データベース】 

 

 

『Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2 』:2013年発刊

 

「アヴァロン」「ハンニバル」「ブラックホーク・ダウン」「ボーン・アイデンティティー」「マトリックスリローデッド」「イノセンス」―

デビュー以前に運営していたホームページ「スプークテール」で書き続けられていた映画時評を完全集成する第2巻。どんな「困った」作品にも、おもわず涙をこぼしてしまいそうになる作品にも、変わらず注がれる伊藤計劃の映画への愛情が、さらなる深化を見せる。 【「BOOK」データベース】