2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『空の中』:有川 浩|与えられる愛情で、頑なな心が溶けていく

「塩の街」「海の底」と並び、自衛隊三部作の航空自衛隊編「空の中」です。三部作の中では、この「空の中」が一番読み応えがありました。ページ数からも分かる通り、一番ボリュームがあったということもあります。 「塩の街」よりは多少ましですが、非現実的…

『異類婚姻譚』:本谷有希子|オカルトのような結末に、理解が追い付かない

主人公の「サンちゃん(妻)」が、夫とそっくりの顔になっていくところから始まります。夫婦間の関係性を描いた作品なのかな、と思いつつ読み進めていきました。結末に至ると「もしかしてオカルト?」なのかな、と感じます。読後は、ボンヤリとした気持ち悪…

『1973年のピンボール』感想・考察|双子・配電盤・ピンボールが示す喪失と孤独:MANPA Blog

『1973年のピンボール』の感想と考察。双子との奇妙な生活、配電盤の象徴、3フリッパーのスペースシップを探す理由などを通して、「僕」と「鼠」が抱える喪失と孤独を読み解きます。

『仏陀を歩く 誕生から涅槃への道』:白石凌海|仏陀の足跡を辿り、仏陀の生涯を知る

以前、キリスト教の書籍の感想を書きました。そこで日本人に一番馴染みのある仏教についても知ろうと思い、この書籍を手に取りました。 日本では、仏教と一口に言っても多くの宗派があります。しかし、その教えを切り開いたのは仏陀です。仏陀と書きましたが…

『重力ピエロ』伊坂幸太郎【感想】|本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだ

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「重力ピエロ」の感想です。 読み終えた時に涙が出そうになりました。伊坂幸太郎の作品は面白いという印象がありましたが、この作品を読んで面白いだけでなくこんなにも感動的な作品もあるんだと思い知らされました。 と…

『告白』:湊かなえ|一体、誰が救われたのか。そこに救いはあったのだろうか?

ひとつの事件を、5人の視点から描く小説です。この手法は、宮部みゆき氏の「模倣犯」を思い出させます。「模倣犯」と同じく、事件の概要と犯人は最初に語られます。犯人捜しのミステリーではなく、復讐劇とそれに関わった人々の心象の物語です。被害者と加…

映画「三度目の殺人」を観た

福山雅治・役所広司のW主演。監督は「そして父になる」で福山雅治と組んだ是枝裕和監督。日本のみならず世界でも評価されている是枝監督作品ということで、期待して観に行きました。役所広司、福山雅治はもとより、出演者全ての圧倒的な演技力に、久しぶりに…

『海の底』:有川 浩|潜水艦の中で交錯する二人の気持ちがもどかしい

「海の底」の内容 「海の底」の感想 非現実の中の現実感 危機管理能力 閉ざされた空間 個性溢れる人物たち 終わりに 「海の底」の内容 4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わってい…

『塩の街』:有川 浩|塩害が愛する二人を引き離していく

有川浩氏のデビュー作で第10回電撃小説大賞“大賞”受賞作です。受賞作は文庫で刊行されましたが、その後、ハードカバーの単行本で再刊行されています。 受賞から文庫、単行本に至る変遷は、単行本のあとがきに著者が書き記しています。私は単行本を読みました…

映画「関ケ原」を観た

私は、司馬遼太郎氏の書いた「関ケ原」を読んでいません。なので原作との比較は出来ませんが、映画の「関ケ原」を観てどうだったか。その感想を記します。 実はかなり期待して見に行きました。予告編もかなり迫力でしたし、岡田准一主演 の作品は「永遠の0…

『風の歌を聴け』感想・考察|なぜ「よく分からない」のに心に残るのか【村上春樹デビュー作】:MANPA Blog

村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の感想・考察。18日間の退屈な夏を描いた物語は、なぜ「よく分からない」のに心に残るのか。作品の魅力と読後に残る不思議な感覚を読み解きます。

『死んでいない者』:滝口悠生|通夜の一晩が永遠のようでありながらも淡々と過ぎ去っていく。

第154回芥川賞受賞作です。「死んでいない 者」は、生きている人のことを言うのだろうか。それなら、この小説の中では通夜に集まった人々のことになります。「死んで いない者」と読むと、85歳で大往生を遂げた故人ということになります。 おそらく両方の意…

『小太郎の左腕』を読んで震えた。主役・林半右衛門が「武士の美学」を捨ててまで守りたかったものとは?:MANPA Blog

正々堂々と死ぬのが武士の誉れ。そう信じた猛将・林半右衛門を待っていたのは、美学を捨てるという「地獄」の選択でした。11歳の少年・小太郎との出会いが、男の運命を狂わせていく。読み終えた後、あなたの「正義」が揺らぎ、震えるほど胸が熱くなる一冊で…

『Op.ローズダスト』:福井晴敏|臨海副都心で交錯する彼らの宿命

福井晴敏は好きな作家ですし、文庫3冊に及ぶ長編なので期待して読み始めました。読み終わった感想は「とにかく長かった」(どちらかと言うとあまりいい意味ではなく)というものでした。超長編を最後まで読み込ませるには、余程の力量が必要だと実感しまし…

『空中ブランコ』:奥田英朗|あの伊良部一郎が再び!相変わらずのムチャクチャ精神科医

伊良部一郎シリーズの第2弾です。前作の「イン・ザ・プール」は、かなり笑わせていただきました。この「空中ブランコ」も前作に負けず面白かった。伊良部一郎は、前作よりもかなり活動的になっていました。今回は診察室から飛び出して、周りを振り回します…

『スクラップ・アンド・ビルド』:羽田圭介|コミカルに描いているが老人介護を真剣に考えざるを得なくなる

第153回芥川賞受賞作です。又吉直樹氏「火花」と同時受賞により、ちょっと影が薄くなってしまった気がします。 「超高齢化社会」と「老人介護」という現代社会の喫緊の課題を扱った小説でありながら、あまり悲壮感漂う作品ではありません。どちらかと言えば…