晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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ミステリー・サスペンス

『ハーメルンの誘拐魔』:中山 七里【感想】|身代金は70億

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山 七里さんの「ハーメルンの誘拐魔」の読書感想です。 警視庁捜査一課の刑事「犬養隼人」シリーズの第三作目です。タイトルどおり、彼が追うのは誘拐犯ですが、そこには深いテーマが描かれています。 犬養隼人…

『七色の毒』:中山 七里【感想】|善人は、たちまち悪人になりえる

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山 七里さんの「七色の毒」の読書感想です。 犬養隼人シリーズの第二作目。七つの短編で構成された短編集です。犬養の活躍もあるのですが、それ以上に人間に潜む闇の部分を浮かび上がらせる構成です。その闇を…

『切り裂きジャックの告白』:中山 七里【感想】|命を奪う者と命を守る者

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山 七里さんの「切り裂きジャックの告白」の読書感想です。 犬養隼人シリーズの記念すべき第一作。警視庁捜査一課の警部補「犬養隼人」を主人公にしたミステリー作品です。 捜査一課の中でも検挙率が高く優秀な…

『リボルバー』:原田 マハ【感想】|誰が引き金を引いたのか?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、原田 マハさんの「リボルバー」の読書感想です。 ゴッホの死の真相を描くミステリー小説で、史実をベースにしたフィクションです。 小さなオークション会社CDC(キャビネ・ド・キュリオジテ)に勤務している高遠…

『テスカトリポカ』:佐藤 究【感想】|われらは彼の奴隷

ご覧いただきありがとうございます。今回は、佐藤 究さんの「テスカトリポカ」の読書感想です。 第165回直木賞受賞作。麻薬や臓器売買など生々しい犯罪を描いたクライムノベルです。しかし、クライムノベルと一言で言い表せるほど単純ではありません。その理…

『戦場のコックたち』:深緑 野分【感想】|生き残ったら、明日は何が食べたい?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、深緑 野分さんの「戦場のコックたち」の読書感想です。 2016年本屋大賞7位で、第154回直木賞候補にもなっています。物語の舞台は、第二次世界大戦のヨーロッパです。ノルマンディー上陸作戦からドイツ降伏に至る…

『黒牢城』:米澤 穂信【感想】|戦国×ミステリ

ご覧いただきありがとうございます。今回は、米澤 穂信さんの「黒牢城」の読書感想です。 第166回直木賞受賞作で、2022年本屋大賞第9位です。 舞台が有岡城で、主人公は荒木村重です。謀反を起こした荒木村重を、小寺孝高(黒田官兵衛の方が分かりがいいと…

『ラスプーチンの庭』:中山 七里【感想】|先進医療は、最愛の人を奪っていった

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山七里さんの「ラスプーチンの庭」の読書感想です。 犬養隼人シリーズの六作目です。命をテーマにしたミステリーは謎解きだけでなく、生きることについて考えさせられます。生と死は人間にとって答えの出ない永…

『元彼の遺言状』:新川 帆立【感想】|僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る

ご覧いただきありがとうございます。今回は、新川 帆立さんの「元彼の遺言状」の読書感想です。 第19回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作です。新川帆立さんのデビュー作でもあります。新川さんは弁護士で、元プロ雀士です。興味を抱く経歴です…

『同志少女よ、敵を撃て』:逢坂 冬馬【感想】|独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、逢坂 冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」の読書感想です。 第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作です。全選考委員が最高点を付け、満場一致で受賞しました。直木賞候補にも選ばれ、2022年本屋大賞も大賞を受…

『神の悪手』:芦沢 央【感想】|この手を選びたい。たとえ破滅するとしても

ご覧いただきありがとうございます。今回は、芦沢 央さんの「神の悪手」の読書感想です。 将棋を軸にした五つの短編で構成されています。将棋の勝負を描くというよりも、将棋に関わる人たちの人生を描いています。全ての短編ではないですが、全体的に重く暗…

『闇祓』:辻村 深月【感想】|あいつらが来ると、人が死ぬ。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、辻村深月さんの「闇祓」の読書感想です。 辻村深月さんの初の本格ホラーミステリー長編作品です。インタビュー記事によると、短編ホラーは「ふちなしのかがみ」と「きのうの影踏み」の2作品がありますが、長編ホ…

『ブラック・チェンバー・ミュージック』:阿部 和重【感想】|分断された世界に抗う男女の怒濤のラブストーリー

ご覧いただきありがとうございます。今回は、阿部 和重さんの「ブラック・チェンバー・ミュージック」の読書感想です。 かなりの長編作品ですが、一気読みしてしまうほど引き込まれてしまいます。重厚でありながら軽快で軽妙。登場人物たちの個性も際立ち、…

『硝子の塔の殺人』:知念 実希人【感想】|謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、知念 実希人さんの「硝子の塔の殺人」の読書感想です。 本格ミステリーを意識した作品です。クローズドサークルで起こる連続殺人や様々な職業の招待客。巻頭に掲載されている建物の構造や平面図、登場人物一覧な…

『invert 城塚翡翠倒叙集』:相沢 沙呼【感想】|すべてが、反転。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、相沢 沙呼さんの「invert 城塚翡翠倒叙集」の読書感想です。 2020年本屋大賞第6位に選ばれた「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編です。中編の倒叙ミステリー集で、3編の物語で構成されています。倒叙ミステリー…

『ドクター・デスの遺産』:中山 七里【感想】|生きる権利と死ぬ権利が平等にある

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山 七里さんの「ドクター・デスの遺産」の読書感想です。 犬養隼人シリーズの第4作目です。刑事もののミステリーですが、本作では安楽死をテーマに生きる権利と死ぬ権利について深く踏み込んでいます。 姿の見…

『パズル・パレス』:ダン・ブラウン【感想】|史上最大の諜報機関にして、暗号学の最高峰

ご覧いただきありがとうございます。今回は、ダン・ブラウン氏の「パズル・パレス」の読書感想です。 ダン・ブラウンのデビュー作品です。その後の「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード」で一気に世界中で人気の小説家になります。 本作はフィクションの…

『この本を盗む者は』:深緑 野分【感想】|ああ、読まなければよかった!

こんにちは。本日は、深緑 野分さんの「この本を盗む者は」の感想です。 以前読んだ「ベルリンは晴れているか」とは全く作風が違います。ミステリーの要素を含むのは同じですが、「ベルリンは晴れているか」は史実を舞台にした現実的な物語です。一方、本作…

『オリンピックの身代金』:奥田 英朗【感想】|日本を強請れ!

こんにちは。本日は、奥田英朗氏の「オリンピックの身代金」の感想です 時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。東京オリンピックが人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人…

『R帝国』:中村 文則【感想】|朝、目が覚めると戦争が始まっていた。

こんにちは。本日は、中村 文則氏の「R帝国」の感想です。 表紙は「教団X」を彷彿とさせる白黒の印象的な絵柄です。内容は直接的に関係していません。あくまでも別の物語です。 架空の国「R帝国」が舞台です。他国も世界情勢もあくまで架空です。しかし、…

『罪の声』:塩田武士【感想】|逃げ続けることが、人生だった。

こんにちは。本日は、塩田武士氏の「罪の声」の感想です。 1985年から86年にかけて発生した「グリコ・森永事件」をベースに執筆された小説です。当時、私はまだ子供でしたが、今でもきつね目の男の顔を思い浮かべることができます。 未解決事件なので犯人は…

『私が彼を殺した』:東野 圭吾【感想】|容疑者は三人。真相はどこにあるのか。

こんにちは。本日は、東野圭吾氏の「私が彼を殺した」の感想です。 加賀恭一郎シリーズの第5作目です。殺人事件に関わる神林貴弘、駿河直之、雪笹香織の三人の視点で描かれます。 三人に共通するのは、被害者の穂高誠に対する不満です。殺意に変化してもお…

『騙し絵の牙』:塩田武士【感想】|騙されるな。真実を、疑え。

こんにちは。本日は、 塩田武士氏の「騙し絵の牙」の感想です。 大泉洋の写真が表紙を飾ります。作中にも彼の写真が挿入されている。塩田武士氏が大泉洋をイメージしてあてがきをしているのだから、読み進めれば大泉洋が頭に常に浮かびます。だからと言って…

『アクロイド殺し』:アガサ・クリスティ【感想】|誰がアクロイド氏を殺したか

こんにちは。本日は、アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」の感想です。 1925年に連載小説として発表されたポワロシリーズの三作目。アガサ・クリスティの作品全体でも人気のある作品です。100年近く前の作品ながら、今でも十分読み応えがあります。 本作…

『楽園のカンヴァス』:原田マハ【感想】|カンヴァスに篭めた想いとは

こんにちは。本日は、原田マハさんの「楽園のカンヴァス」の感想です。 普段、美術館や展覧会を訪れることはあまりありません。モダンアートの良さを理解する審美眼も乏しいと感じています。そんな私でも、本作には引き込まれていきます。 主人公は「ティム…

『十字架のカルテ』:知念実希人【感想】|罪を犯した本当の理由とは

こんにちは。本日は、知念実希人氏の「十字架のカルテ」の感想です。 精神疾患と刑法を扱った小説は多々あります。重大犯罪が起きると、刑法39条に焦点が当たります。 心神喪失者の行為は、罰しない。 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。 この条文に当…

『悪意』:東野圭吾【感想】|犯人が決して語らぬ動機

こんにちは。本日は、東野圭吾氏の「悪意」の感想です。 加賀恭一郎シリーズ第4作。ひとつの事件が、加賀と野々口のふたつの視点で描かれます。同じ事件であっても、それぞれの立場では全く違う見え方がします。事件の当事者なら誘導することも可能だろう。…

『さまよう刃』:東野圭吾【感想】|正義とは何か。

こんにちは。本日が、東野圭吾氏の「さまよう刃」の感想です。 娘を陵辱され尊厳を奪われ無惨に殺された父親の復讐劇です。犯人を未成年にすることで少年法についての問題提起も含んでいるのだろう。未成年であることが、復讐を決意する大きな要素にもなって…

『緋色の研究』:アーサー・コナン・ドイル【感想】

こんにちは。本日は、コナン・ドイルの「緋色の研究」の感想です。 シャーロック・ホームズが初めて登場した小説で、ワトソンとの出会いも描かれています。1886年に執筆され、1887年に発表されています。 シャーロック・ホームズは数々の映画になり、ドラマ…

『ホワイトラビット』:伊坂幸太郎【感想】|全てを、疑え!

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「ホワイトラビット」の感想です。 久しぶりに黒澤が登場します。伊坂作品の中でも特に魅力的な人物です。彼がいるだけで先の展開が読めなくなります。また、物語に期待してしまいます。 誘拐ビジネスから始まります。ミ…