晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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2021-01-01から1年間の記事一覧

『犬がいた季節』:伊吹 有喜【感想】|18歳。その迷いも覚悟も希望も。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、伊吹 有喜さんの「犬がいた季節」の読書感想です。 2021年本屋大賞第3位。6つの物語で構成される連作短編集です。 八稜高校に飼われることになった白い犬「コーシロー」の目を通して描かれる高校生たちが主人公…

『一人称単数』:村上 春樹【感想】|世界は流れていく 物語が光景をとどめる

ご覧いただきありがとうございます。今回は、村上 春樹氏の「一人称単数」の読書感想です。 八編の短編集です。表題作「一人称単数」のみ書き下ろしであり、他は文學界で発表された作品です。各短編に関連性はなく、完全に独立しています。なので、それぞれ…

『パズル・パレス』:ダン・ブラウン【感想】|史上最大の諜報機関にして、暗号学の最高峰

ご覧いただきありがとうございます。今回は、ダン・ブラウン氏の「パズル・パレス」の読書感想です。 ダン・ブラウンのデビュー作品です。その後の「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード」で一気に世界中で人気の小説家になります。 本作はフィクションの…

『悪と仮面のルール』:中村 文則【感想】|悪とは何か

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中村 文則さんの「悪と仮面のルール」の読書感想です。 玉木宏主演で映画化されていますが、あくまで小説についての感想です。 タイトルを見ると、人間の負の側面を描き出している作品だと想像します。悪と言って…

『アクセル・ワールド 3~4(略奪者編)』:川原 礫【感想】

ご覧いただきありがとうございます。今回は、川原 礫さんの「アクセルワールド3~4」の読書感想です。 3巻と4巻を通じて描かれるのは、春雪たちと略奪者ダスク・テイカーの戦いです。両者は、現実世界と仮想世界の両方で戦います。その過程で加速世界の…

『アルルカンと道化師』:池井戸 潤【感想】|探偵半沢、絵画の謎に挑む。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、池井戸 潤さんの「アルルカンと道化師」の読書感想です。 2020年9月17日に発刊された半沢直樹シリーズの五作目です。半沢が東京中央銀行大阪西支店に転勤した直後が舞台なので、第一作「オレたちバブル入行組」の…

『お探し物は図書室まで』:青山 美智子【感想】|本ですか?仕事ですか?人生ですか?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、青山 美智子さんの「お探し物は図書室まで」の読書感想です。 2021年本屋大賞第2位。五つの短編で構成されていて、それぞれが独立した物語です。 物語の鍵となるのは区のコミュニティセンター内にある図書室と、…

『わたし、定時で帰ります。』:朱野 帰子【感想】|いつまで残業するつもり?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、朱野 帰子さんの「わたし、定時で帰ります。」の読書感想です。 働き方改革は、どのくらい進んだのでしょうか。ワークライフバランスという言葉もよく聞きます。これらの言葉が無くならないのは、まだまだ達成さ…

『麦本三歩の好きなもの』:住野 よる【感想】|好きなものがたくさんあるから、毎日はきっと楽しい。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、住野 よるさんの「麦本三歩の好きなもの」の読書感想です。 社会人になったばかりの麦本三歩の生活を描いた日常小説です。図書館勤務をする彼女の日常は普通の日々で、取り立ててドラマチックな出来事や大きなア…

『生きてさえいれば』:小坂 流加【感想】|きっといつか幸せが待っている

こんにちは。本日は、小坂 流加さんの「生きてさえいれば」の感想です。 「余命10年」は、著者自身の人生を投影した作品でした。だからこそ読者の心に響くものがあったのだろう。残念ながら文庫が発刊される前に他界されてしまいましたが。本作は著者が他界…

『となり町戦争』:三崎 亜記【感想】|見えない戦争

こんにちは。本日は、三崎 亜記さんの「となり町戦争」の感想です。 第17回小説すばる新人賞受賞作。著者のデビュー作でありながら、直木賞候補にもなっています。 タイトルどおり、となり町との戦争を描いています。現在の日本を舞台に自治体同士が戦争をす…

『この本を盗む者は』:深緑 野分【感想】|ああ、読まなければよかった!

こんにちは。本日は、深緑 野分さんの「この本を盗む者は」の感想です。 以前読んだ「ベルリンは晴れているか」とは全く作風が違います。ミステリーの要素を含むのは同じですが、「ベルリンは晴れているか」は史実を舞台にした現実的な物語です。一方、本作…

『オリンピックの身代金』:奥田 英朗【感想】|日本を強請れ!

こんにちは。本日は、奥田英朗氏の「オリンピックの身代金」の感想です 時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。東京オリンピックが人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人…

『ハケンアニメ!』:辻村 深月【感想】|”いい仕事”がしたい!

こんにちは。本日は、辻村 深月さんの「ハケンアニメ!」の感想です。 2015年本屋大賞第3位。アニメ制作を舞台にした職業小説です。読んだ印象は、有川浩さんの小説の雰囲気を感じます。どこがと言われると答えに困りますが。 制作されるアニメが減った訳で…

『R帝国』:中村 文則【感想】|朝、目が覚めると戦争が始まっていた。

こんにちは。本日は、中村 文則氏の「R帝国」の感想です。 表紙は「教団X」を彷彿とさせる白黒の印象的な絵柄です。内容は直接的に関係していません。あくまでも別の物語です。 架空の国「R帝国」が舞台です。他国も世界情勢もあくまで架空です。しかし、…

『心淋し川』:西條 奈加【感想】|誰の心にも淀みはある。

こんにちは。本日は、西條 奈加さんの「心淋し川」の感想です。 第164回直木賞受賞作。六つの短編から成る連作短編集です。 貧乏長屋が立ち並ぶ千駄木町の一角が舞台です。心町(うらまち)と呼ばれ、そこにある心淋し川(うらさびしがわ)は流れが滞り、淀んで…

『星の子』:今村 夏子【感想】|一緒に信じることが、できるだろうか。

こんにちは。本日は、今村 夏子さんの「星の子」の感想です。 第157回芥川賞候補であり、2018年本屋大賞第7位の小説です。主人公「ちひろ」の視点を通じて、家族の在り方・新興宗教・友人関係の中で、彼女自身の変化が描かれています。 小学生から中学三年…

『鹿の王』:上橋 菜穂子【感想】|命をつなげ

こんにちは。本日は、上橋 菜穂子氏の「鹿の王」の感想です。 2015年本屋大賞を受賞したファンタジー小説です。かなりの長編作品ですが、一気に読みきってしまうほど引き込まれます。架空の世界を舞台にしたファンタジーですが、国家と個人・支配と従属とい…

『罪の声』:塩田武士【感想】|逃げ続けることが、人生だった。

こんにちは。本日は、塩田武士氏の「罪の声」の感想です。 1985年から86年にかけて発生した「グリコ・森永事件」をベースに執筆された小説です。当時、私はまだ子供でしたが、今でもきつね目の男の顔を思い浮かべることができます。 未解決事件なので犯人は…

『さざなみのよる』:木皿 泉【感想】|宿り、去って、やがてまたやって来る

こんにちは。本日は、木皿 泉氏の「さざなみのよる」の感想です。 木皿泉氏の小説を読むのは初めてです。夫婦脚本家のペンネームだと知り、二人で小説を執筆していくのはどんな作業なのか興味の抱くところです。 本作は死を扱っています。生きている限り、死…

『コンタクト』:カール・セーガン【感想】|どこかの惑星に必ず知的な生物がいる

こんにちは。本日は、カール・セーガン氏の「コンタクト」の感想です。 1986年に日本語訳の文庫が発刊されました。地球外知的生命体とのファーストコンタクトを描いており、天文学者でもあるカール・セーガンの中でも知られた作品です。 地球外知的生命体探…

2021年本屋大賞の受賞作

2020年12月〜2021年4月にかけて実施された第18回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『52ヘルツのクジラたち』町田 そのこ 【得点:365.5点】 2位 『お探し物は図書室まで』青山 美智子 【得点:287.5点】 3位 『犬がいた季節』伊吹 有喜 【得点:286.5点】 …

『私が彼を殺した』:東野 圭吾【感想】|容疑者は三人。真相はどこにあるのか。

こんにちは。本日は、東野圭吾氏の「私が彼を殺した」の感想です。 加賀恭一郎シリーズの第5作目です。殺人事件に関わる神林貴弘、駿河直之、雪笹香織の三人の視点で描かれます。 三人に共通するのは、被害者の穂高誠に対する不満です。殺意に変化してもお…

『推し、燃ゆ』:宇佐見 りん【感想】|推しが炎上した。

こんにちは。本日は、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」の感想です。 第164回芥川賞受賞作。2021年本屋大賞にもノミネートされています。最終的にプロの作家に選ばれる純文学の芥川賞作品が、一般人の書店員の支持を受けたのは意外に感じます。純文学は読みづ…

『三体Ⅱ 黒暗森林』:劉慈欣【感想】|人類の命運は四人の面壁者の手に委ねられた

こんにちは。本日は、劉 慈欣氏の「三体Ⅱ 黒暗森林」の感想です。 劉慈欣氏の「三体」三部作の第2作目です。前作は、地球外知的生命体とのファーストコンタクトが描かれました。彼らとのコンタクトは地球を存亡の危機に陥れます。三体星人が地球に訪れるの…

『三体』:劉 慈欣【感想】|VRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

こんにちは。本日は、劉慈欣氏の「三体」の感想です。 中国人作家による中国で出版されたSF小説を読むのは初めてです。かなりのボリュームの小説ですが、一気に読みきるほど面白い。三体三部作は中国で2100万部を売り上げています。中国の人口を考慮しても発…

『まほろ駅前狂騒曲』:三浦しをん【感想】|まほろシリーズ大団円

こんにちは。本日は、三浦しをんさんの「まほろ駅前狂騒曲」の感想です。 行天が多田便利件に転がり込んでから2年が経過しています。相変わらず順風満帆な関係とは言えません。 二人には重い過去があります。消えない心の傷です。「まほろ駅前多田便利軒」…

『騙し絵の牙』:塩田武士【感想】|騙されるな。真実を、疑え。

こんにちは。本日は、 塩田武士氏の「騙し絵の牙」の感想です。 大泉洋の写真が表紙を飾ります。作中にも彼の写真が挿入されている。塩田武士氏が大泉洋をイメージしてあてがきをしているのだから、読み進めれば大泉洋が頭に常に浮かびます。だからと言って…

『少年と犬』:馳 星周【感想】|神が遣わした贈り物

こんにちは。本日は、第163回直木賞受賞作、馳 星周氏の「少年と犬」の感想です。 犬(多聞)を中心にした連作短編集です。関わる人たちの人生を描いています。犬との関係ははるか昔から続いていて、人間にはかけがえのない存在です。犬が何をもたらすかは、…

『アクロイド殺し』:アガサ・クリスティ【感想】|誰がアクロイド氏を殺したか

こんにちは。本日は、アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」の感想です。 1925年に連載小説として発表されたポワロシリーズの三作目。アガサ・クリスティの作品全体でも人気のある作品です。100年近く前の作品ながら、今でも十分読み応えがあります。 本作…