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『アクセル・ワールド 03・04』:川原 礫【感想】

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 こんにちは。本日は、川原 礫氏の「アクセル・ワールド3、4」の感想です。

 

 3巻と4巻を通じて描かれるのは、春雪たちと略奪者ダスク・テイカーの戦いです。両者は、現実世界と仮想世界の両方で戦います。その過程で加速世界の隠された真実も明かされます。

 黒雪姫ことブラック・ロータスの出番はあまりありません。春雪と拓武、そして千百合の幼なじみ三人が中心です。黒雪姫は結末でいいところを見せますが。

 2冊分のボリュームがあるので盛り沢山だし、展開は二転三転します。ただ、最終決戦で決着がつくまで、春雪たちは圧倒的不利です。ここまで追い詰められる必要があるのかと思うほどです。なので、ひたすらフラストレーションが溜まります。だからこそ、結末に爽快感があるのですが。 

「アクセル・ワールド3 ―夕闇の略奪者―」の内容

「ゲームオーバーです、有田先輩…いえ、シルバー・クロウ」

学内一の美少女・黒雪姫との出会いによって人生が一変した少年、ハルユキ。デブでいじめられっ子だった彼も、立派な“騎士”として成長していた。季節は春。二年生となったハルユキたちの前に、奇妙な新入生が現れる。“ブレイン・バースト”のマッチングリストに現れず、しかし日常では“ブレイン・バースト”を巧みに使いこなす謎の一年生。黒雪姫が修学旅行で不在の中、“ダスク・テイカー”と呼ばれる歪なデュエル・アバターを出現させた一年生は、圧倒的な力でハルユキから『大切なもの』を奪っていく。再び中学内格差最底辺に堕ちたハルユキ。絶体絶命の彼がその時とった行動とは…。【引用」「BOOK」データベース】

 

「アクセル・ワールド4 ―蒼空への飛翔―」の内容

日常で“ブレイン・バースト”を巧みに使いこなし、中学内格差の頂点に君臨する謎の新入生・能美征二。ハルユキは、能美の狡猾な策略によって自身の“翼”を奪われ、完全敗北を喫した。―しかし、ハルユキは、再び立ち上がる…。

 

「アクセル・ワールド3、4」の感想 

システム「心意」

 ブレイン・バーストプログラムに隠されたシステム「心意」が登場します。隠されたというよりは、王たちを含むハイレベルバーストリンカーによって秘匿されてきた禁断のシステムというべきだろうか。

 春雪がそれを知ったのは偶然だが、それを引き寄せるのが主人公たる所以だろう。圧倒的な力を持つ心意に対抗するには心意の習得が不可欠だから、予想できた展開ですが。

 心意システムのロジックはスカイ・レイカーやスカーレット・レインから語られます。その危険性についても。ただ、システム的ロジックを説明されてもあまりに都合の良い力です。心意をマスターすれば、対戦で負けることはないように見える。同じ心意使いは別にしてですが。

 また、物語の展開のために都合よく使われていく可能性も否定できません。心意使いとそれ以外の力の差が、今後の展開を二極化するだろう。その他大勢のバースト・リンカーは物語に参加できなくなるかもしれない。

 それを防ぐために心意を使うことに様々な制限を加えていますが、二極化を防げないだろう。心意がブレイン・バーストの秘密に迫る力であるならなおさらです。心意は今後の物語の重要な鍵になるのは明らかですが、展開を狭める足枷にもなりかねないと感じます。 

 

害と無償

 春雪たちが正義で、能美が悪。明確に立ち位置が違います。著者の悪意を感じるほど、能美は悪役に描かれています。現実世界で有利に生きるためにブレイン・バースト使うことはフェアでありません。努力でカバーできる範囲を簡単に飛び越えるからです。

 しかし、使うこと自体が悪かどうかというと微妙です。春雪たちは否定的に捉えていますが、手に入れた力を有効に使うことを考えるのは自然だろう。後ろめたさを感じるかどうかはありますが。

 能美が悪役として際立った理由は、他人から多くのものを奪ったからです。奪うために罠に嵌めるのも卑怯な人間性が出ています。なので、能美の行動全てが醜く見えます。逆に、春雪たちが正義に見えてきます。

 正義と悪は相対的に見るほど、お互いが際立ちます。利害で他人と繋がろうとする能美。無償の友情や愛情で繋がろうとする春雪たち。正義の味方がどちらかは一目瞭然です。分かりやすいだけに、結末は簡単に予想できてしまいます。 

 

終わりに

 重要な役割を果たしたスカイ・レイカーは、今後は主要なメンバーになっていくのだろう。また、心意システムも欠かせない存在になるだろう。ただ、心意システムがあれば何でもありになってしまいそうな気もします。また、黒雪姫の親(ブレインバーストの)は、謎めいた存在として会話に登場します。次作の展開を期待させる終り方です。