読書LIFE ~毎日が読書日和~

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

『本日は、お日柄もよく』:原田マハ【感想】|職業小説でなく、お仕事「サクセス」小説

以前から気になっていた1冊です。タイトルと装丁が印象深く、書店で見かけてから頭の片隅に引っかかっていました。スピーチライターという職業を焦点を当て、そこに関わる様々な人生を描いた作品です。 職業としてスピーチライターがあることは知っています…

定期「2018年10月(神無月)」の読書本

10月に入り、朝晩が肌寒くなってきました。秋の夜長、読書の季節ですがあまり読めていません。10月に読んだ本は8冊でした。それでは10月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ マリアビートル 伊坂幸太郎 おすすめ度★★★★ 一瞬の風になれ 佐藤多佳子 …

『蜜蜂と遠雷』:恩田陸【感想】|文字から音楽が溢れ出る

史上初の直木賞・本屋大賞のW受賞作。ピアノコンクールの物語なので、引き込まれるかどうか疑問を感じながら読み始めました。何故なら、私はクラシックが詳しくありません。正直、ほぼ知らないと言っていい。曲のタイトルを聞いてもイメージできない。単行…

『みかづき』:森 絵都【感想】|学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になる

第14回本屋大賞第2位受賞作。単行本で460頁超の長編作品です。著者の作品は、「カラフル」と「風に舞いあがるビニールシート」の2作品しか読んだことがありません。「カラフル」は中高生向けですし、「風に舞いあがるビニールシート」は短編集なので、読み…

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』:リリー・フランキー【感想】|大切な人を失うことは誰もが経験する

第3回本屋大賞。リリー・フランキーが、母親との半生を描いた自伝的小説です。ドラマ・映画・舞台と映像化されています。私は映像化された作品を見ていませんし、小説も初読です。小説の帯には、福山雅治・みうらじゅんなどの著名人が感想を寄せています。…

オリンピックの身代金:奥田英朗【感想】|逃れられない貧富の差

時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。その東京オリンピック自体が人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人。国の威信を懸けたオリンピックの開催を成し遂げるために、全…

映画「虐殺器官」を観た

伊藤計劃の同名小説の映像化。デビュー作であるとともに、彼の名を一気にメジャーにした作品です。伊藤計劃のオリジナル長編は3編しかありません。「虐殺器官」「ハーモニー」「屍者の帝国」です。「屍者の帝国」は執筆中にガンで早逝したため、ほとんどの…

よるのばけもの:住野よる【感想】|昼の俺と夜の僕。本当のばけものはどっちなのだろうか。

主人公の安達は、夜になると8つの眼・足が6本・4つの尾がある真っ黒なばけものになる。物語としては完全なフィクションであり、非現実的な設定が前提になっています。夜の学校に忍び込む同級生の矢野さつきについても、どうやって忍び込んでいるのか明確…

消滅:恩田 陸【感想】|閉じ込められた空港。果たしてテロリストは?

単行本500ページ超に及ぶ長編です。入国を拒否された11人が、閉じ込められた日本の国際空港の別室で繰り広げるテロリスト探し。クローズド・サークルを舞台にしたミステリーです。11人の中に高度なヒューマノイドロボットのキャスリンが登場し、SF的要素も加…

一瞬の風になれ:佐藤多佳子【感想】|仲間を信じて、バトンをつなぐ

第4回本屋大賞受賞作。中学校までサッカーをしていた「神谷新二」が主人公。彼の一人称で描かれる春野台高校陸上部が舞台の青春物語です。 序章は、新二と彼の友人「一ノ瀬連」の生い立ちと、彼らの関係性の紹介のための章です。物語は、高校一年生から三年…

ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ:川原 礫【感想】|ユウキとの邂逅がアスナの現実を変える

前作「ファントム・バレット」の数週間後。アスナを主人公にしたスピンオフ作品です。前作はキリトとシノンの物語であったことから、アスナを始め旧アインクラッドの面々の影は薄かった。全く出番がなかった訳ではないですが。そもそも物語の視点がキリト以…

定期「2018年9月(長月)」の読書本

9月に入り、日が短くなってきた実感があります。台風が猛威を振るい多くの被害が出ました。 9月に読んだ本は7冊でした。それでは9月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ かがみの孤城 辻村深月 横道世之介 吉田修一 おすすめ度★★★★ 氷菓 米澤穂…

容疑者Xの献身:東野圭吾【感想】|論理と感情。どちらに従うことが正しいのか。

第134回直木賞受賞作。ガリレオシリーズの第三作目で初の長編です。「探偵ガリレオ」「予知夢」は短編集なので、トリックに様々な仕掛けが施されていますが流れは一直線です。登場人物たちも立ち位置が明確で、あまり予想外の動きをしません。トリックは予想…

マリアビートル:伊坂幸太郎【感想】|東北新幹線に集結した殺し屋たちの運命は・・・

位置付けとしては「グラスホッパー」の続編です。続編と言っても、直接的なストーリーの繋がりはあまりありません。グラスホッパーで登場した人物が数人登場していますが、前作を読んでいなくてもストーリーを理解する上で支障はないでしょう。「マリアビー…

Twelve Y.O.:福井晴敏【感想】|日本は国家として大人になれないのか

福井晴敏のデビュー作。本作より先に「川の深さは」を執筆しています。ただ発刊されたのは本作が先なので、世間的なデビュー作ということになります。次作「亡国のイージス」も含めたところだと、発刊順は「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」「川の深さは」。…

コンビニ人間:村田沙耶香【感想】|自分と社会にとって「普通」とは何か?

第155回芥川賞受賞作。日常生活のどの場面でも「普通」は存在します。「普通」の圏内にいる人々にとっては意識しないことでも、そこからはみ出した人にとっては意識せざるを得ません。無言の圧力に止まらず、面と向かって「普通」を強制する。本作を読めば、…

君にさよならを言わない2:七月隆文【感想】|幽霊たちとの出会いが切なさと温かさを溢れさせる

「君にさよならを言わない」の続編。続編なので登場人物や設定は引き継いでいますが、短編集なので前作を読んでいないと理解できないということはありません。ただ、前作を読んでいるのといないのとでは、受け止め方が変わってくるはずです。前作を未読の方…

愚者のエンドロール:米澤穂信【感想】|「古典部」がビデオ映画の謎に迫る

「古典部」シリーズの第二弾。前作「氷菓」は高校1年の入学から夏休みくらい(最終章は夏休み後、文化祭直前になってますが)までです。本作は、夏休みの終盤を舞台に描かれています。「古典部」シリーズは、高校生の学内ミステリー小説です。「愚者のエンド…

氷菓:米澤穂信【感想】|古典部シリーズの原点。登場人物の個性が溢れ出す

「古典部」シリーズの第一作。高校一年の折木奉太郎を主人公にした学園推理小説です。当初、角川スニーカー文庫から刊行されていますので、ライトノベル系のミステリー小説という位置付けなのでしょう。推理小説と言っても、高校が舞台なので人が死ぬことは…

君にさよならを言わない:七月隆文【感想】|願いを叶えた時、切なさとともに暖かい感情が心を満たす

「ぼくには、幽霊が視える。」 心残りのある幽霊の願いを叶え、成仏させる。物語の設定としては有りがちです。ありふれた設定で、オリジナリティ溢れたストーリーを作り出すのは難しい。本作もストーリーの組み立て自体に、それほど目新しいものはありません…

定期「2018年8月(葉月)」の読書本

8月も後半になると、朝晩は少し暑さも和らいだ気もします。昼間は相変わらずの暑さでしたが。台風などの自然災害も平年よりも多い印象でした。 8月に読んだ本は8冊でした。それでは8月の読書本のおすすめ評価を。 おすすめ度★★★★★ ジェノサイド 高野和明…

横道世之介:吉田修一【感想】|過ぎ去った大学生活をふと思い出す。そこにあるものは・・・

読みやすい文章に、軽快でテンポの良いストーリー展開。笑えるシーンが多くありながら、最後には心に響くエンディングが用意されています。主人公「世之介」は、取り立てて特徴のない大学生です。周りに流され、自分の意見を押し通すほど強気な部分はありま…

崩れる脳を抱きしめて:知念実希人【感想】|彼女と一緒に過ごした時間は幻だったのか

2018年本屋大賞第8位の作品です。医療現場を舞台にしたミステリー作品。現役医師の著者だからこそ描けると言っても過言ではありません。また、医療現場だけで物語が完結する訳ではありません。ミステリーの主軸は病院内から、病院外へと移っていきます。 恋…

かがみの孤城:辻村深月【感想】|居場所はひとつではない。どこにでも・・・

2018年本屋大賞受賞作です。 「かがみの孤城」は本屋大賞を受賞し、様々なメディアで高い評価を受けています。もともと彼女の作品は注目されますし、その分、世間の評価のハードルは高くなります。そのハードルの高さを一気に飛び越えるほどの素晴らしい作品…

銀河鉄道の父:門井慶喜【感想】|父でありすぎる政次郎と息子でありすぎる賢治

宮沢賢治の著作で思い浮かぶのは、「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「雨ニモマケズ」と言ったところです。「注文の多い料理店」は学校の教科書で読んだ記憶があります。タイトル「銀河鉄道の父」から想像していたのは、宮沢賢治の伝記です。確かに彼の…

余命10年:小坂流加【感想】|死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯、生きてみるよ

余命10年。 医者から宣告されたら、どうなるだろうか。自分に置き換えてみても実感出来ません。生まれたからには、誰にでも等しく訪れるのが「死」です。誰も逃れることは出来ません。私たちはいずれ死ぬことを頭で理解していても、普段、現実的なものとして…

バイバイ、ブラックバード:伊坂幸太郎【感想】|五つの別れのストーリー

6話から成る連作短編集。5人の女性と付き合っていた主人公 星野一彦が、ある事情から、その女性たちに別れを告げに回ります。太宰治の「グッド・バイ」の内容をオマージュした作品。と言っても、私は「グッド・バイ」を読んでいませんが。伊坂幸太郎が太宰…

暗幕のゲルニカ:原田マハ【感想】|ゲルニカに込めたピカソの思い

原田マハの小説を読むのは、「たゆたえども沈まず」に続いて2作品目です。私は美術史に詳しくありません。アートに対する造詣も深くありません。ピカソの知識も教科書レベルです。それでも「ゲルニカ」は知っていますし、彼が美術界に大きな影響を与えたこ…

ジェノサイド:高野和明【感想】|未知の存在が表れた時、人類は果たして。

読み始めたら止まらないくらい、面白く読み応えがある作品です。出来の良いハリウッド映画を観ているようです。もっと言えば、それ以上の奥行きがあります。小説なので視覚的な迫力はありません。その代わり、文章を読んで想像する世界は限りなく広がります…

夜行:森見登美彦【感想】|解釈はひとつではない

2017年本屋大賞の8位にランキングされてます。ファンタジーの要素を軸にしていますが、ホラーに近い部分もある。単行本の表紙からは想像出来ない怖さを含んだ小説です。徐々に空気が重くなり、圧迫されていくような息苦しさを感じます。「第一夜 尾道」から…