小説の海

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト

ヒューマンドラマ

『推し、燃ゆ』:宇佐見 りん【感想】|推しが炎上した。

こんにちは。本日は、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」の感想です。 第164回芥川賞受賞作。2021年本屋大賞にもノミネートされています。最終的にプロの作家に選ばれる純文学の芥川賞作品が、一般人の書店員の支持を受けたのは意外に感じます。純文学は読みづ…

『まほろ駅前狂騒曲』:三浦しをん【感想】|まほろシリーズ大団円

こんにちは。本日は、三浦しをんさんの「まほろ駅前狂騒曲」の感想です。 行天が多田便利件に転がり込んでから2年が経過しています。相変わらず順風満帆な関係とは言えません。 二人には重い過去があります。消えない心の傷です。「まほろ駅前多田便利軒」…

『少年と犬』:馳 星周【感想】|神が遣わした贈り物

こんにちは。本日は、第163回直木賞受賞作、馳 星周氏の「少年と犬」の感想です。 犬(多聞)を中心にした連作短編集です。関わる人たちの人生を描いています。犬との関係ははるか昔から続いていて、人間にはかけがえのない存在です。犬が何をもたらすかは、…

『逆ソクラテス』:伊坂幸太郎【感想】|敵は、先入観。世界をひっくり返せ!

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「逆ソクラテス」の感想です。 伊坂幸太郎の作家デビュー20周年に発刊された5編の短編集です。各短編に直接的な関係性は薄い。共通する登場人物もいますが、連作短編集とは言えないだろう。それぞれの短編はそれぞれで完…

『不祥事』:池井戸 潤【感想】|銀行にあるもの「カネと謎」。ないもの「情と常識」。

こんにちは。本日は、池井戸 潤氏の「不祥事」の感想です。 爽快感の中に人生の悲哀も描かれます。舞台は東京第一銀行です。言うまでもなく、半沢直樹の舞台になった東京中央銀行の合併前の銀行のひとつです。ちなみに、もうひとつは産業中央銀行です。 八編…

『ライオンのおやつ』:小川 糸【感想】|人生の最後に食べたい”おやつ”は、なんですか

こんにちは。本日は、小川 糸さんの「ライオンのおやつ」の感想です。 2020年本屋大賞第2位。余命僅かながん患者「海野雫」の人生の終末を描いた物語です。タイトルからは全く想像できなかった内容でした。 舞台はホスピスです。積極的な治療では治らない患…

『何もかも憂鬱な夜に』:中村文則【感想】

こんにちは。本日は、中村文則氏の「何もかも憂鬱な夜に」の感想です。 タイトルから想像するのは暗く重い小説です。実際、全編を通じて重く苦しい。死をテーマにした小説に明るさを求めるのは難しいのかもしれない。しかし、死だけに焦点を当てている訳では…

『月と蟹』:道尾秀介【感想】|世界は大きくて理不尽だから、僕たちは神様を創ることにした

こんにちは。本日は、道尾秀介氏の「月と蟹」の感想です。 第144回直木賞受賞作です。直木賞は大衆小説のイメージがあるので気軽な気持ちで読み始めたが結構重い内容でした。登場人物の心象に焦点を当てているからだろう。 道尾秀介氏の作品を読むのは初めて…

『ペスト』:アルベール・カミュ【感想】|人はどう振る舞うのか?

こんにちは。本日は、アルベール・カミュの「ペスト」の感想です。 新型コロナウィルスの世界的流行により、カミュのペストが俄かに注目を浴びています。発行部数は100万部を超えました。新型コロナとペストを繋ぎ合わせてしまうほど、コロナに対する不安は…

『熱源』:川越宗一【感想】|降りかかる理不尽は「文明」を名乗っていた

こんにちは。本日は、 川越宗一氏の「熱源」の感想です。 第162回直木賞受賞作。2020年本屋大賞第5位。 民族・文明・国家など多くの要素を含んだ重厚な作品です。樺太アイヌという国を持たない民族が、国家や文明に翻弄されていきます。人として、また民族…

『帰ってきたヒトラー』:ティムール・ヴェルメシュ【感想】|おたくはアドルフ・ヒトラーに見えるよ

こんにちは。本日は、ティムール・ヴェルメシュ氏の「帰ってきたヒトラー」の感想です。 ドイツで250万部を売り上げ、映画では240万人を動員しています。好意的な評価ばかりではないにしても、それだけ人々の関心を引いた。 ドイツ人にとってヒトラーとはど…

『サブマリン』:伊坂幸太郎【感想】|偶然なのか、運命か?暗い深海からの声を見つけたい。

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「サブマリン」の感想です。 「チルドレン」から12年振りに「陣内」が戻ってきました。伊坂作品の中でも、陣内は魅力的なキャラクターです。破天荒で無茶な人物ですが、言葉や行動には人生の真理を感じることがあります。…

『まほろ駅前番外地』:三浦しをん【感想】|愉快な奴らが帰ってきた

こんにちは。本日は、三浦しをん氏の「まほろ駅前番外地」の感想です。 「まほろ駅前多田便利軒」の続編ですが、続編というよりは番外編の印象です。スピンアウトストーリーを含む七つの短編で構成されています。主要登場人物の日常や人生が描き出されます。…

『流浪の月』:凪良 ゆう【感想】|せっかくの善意を、わたしは捨てていく。

こんにちは。本日は、2020年本屋大賞"大賞"受賞作、凪良 ゆう氏の「流浪の月」の感想です。 読み始めると一気に最後まで読み切ってしまうほど引き込まれます。一体、何に引き込まれるのだろうか。主人公たちの生き方に共感したのではなく、人間同士の関わり…

『夏物語』:川上未映子【感想】|生まれてくることの意味は・・・

こんにちは。本日は、2020年本屋大賞第7位、川上未映子さんの「夏物語」の感想です。 一部と二部から構成されています。一部は、2008年芥川賞受賞作の「乳と卵」を再構築しています。「乳と卵」は未読なので本作との関係性については言及できませんが、描き…

『店長がバカすぎて』:早見 和真【感想】|マジ、辞めてやる!

こんにちは。本日は、2020年本屋大賞第9位、早見 和真氏「店長がバカすぎて」の感想です。 書店を舞台にした書店員の物語で、契約社員「谷原京子」の一人称で描かれます。第一話から最終話(第六話)までの短編六話で構成され、全てを通じてひとつの物語に…

『クローズド・ノート』:雫井脩介【感想】|そのノートが開かれたとき・・・

こんにちは。本日は、雫井脩介氏の「クローズド・ノート」の感想です。 携帯電話サイトで配信されていた作品のようです。私にとってはあまり馴染みのない媒体です。映画化もされています。 タイトルを聞いて思い浮かべるのは映画の初日舞台挨拶です。沢尻エ…

『わたしを離さないで』:カズオ・イシグロ【感想】|彼女たちの人生の意味は・・・

カズオ・イシグロの作品を読むのは3作目になります。綾瀬はるか主演でドラマ化されており、映画化もされています。内容は何となく知っていましたが、読んでみると登場人物の心の内が想像以上に奥深い。原文でなく日本語訳なので、カズオ・イシグロの文体・…

『ひと』:小野寺 史宜【感想】|たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。

こんにちは。本日は、小野寺 史宜氏の「ひと」の感想です。 2019年本屋大賞第2位。人との繋がりを描いた作品です。生きていく上で大事なものはいろいろありますが、人との繋がりもそのうちの一つです。誰にも関わらず、たった一人で生きていくことは難しい…

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ【感想】|家族よりも大切な家族

こんにちは。本日は、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」の感想です。 2019年本屋大賞受賞作です。帯は「家族よりも大切な家族」。家族という同じ言葉で比較される家族とは、一体何でしょうか。家族はいくつもあるのでしょうか。 主人公の森宮優…

『アイネクライネナハトムジーク』:伊坂幸太郎【感想】|ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「アイネクライネナハトムジーク」の感想です。 6つの物語で構成される短編集です。それぞれの物語の登場人物が時空を超えて繋がります。各短編が深く関わり合っています。「出会い」をテーマにしていながら、伊坂幸太郎…

『宝島』:真藤順丈【感想】|沖縄のルーツがここに

第160回直木賞受賞作。サンフランシスコ講和条約から沖縄返還協定までのアメリカ施政権下の沖縄が舞台です。基地の島と言われている現在の沖縄のルーツが描かれています。沖縄戦の悲劇と20年に及ぶアメリカの施政権下に置かれた沖縄は過酷な運命を辿っていま…

『まほろ駅前多田便利軒』:三浦しをん【感想】|戻らない過去を抱き、未来へ向けて

三浦しをんの作品は「舟を編む」以来2作目です。瑛太と松田龍平で映像化されていますが、読後の印象としてはキャスティングに違和感はありません。 便利屋という職業は、それほど特殊ではありません。便利屋で検索すれば、星の数ほどの検索結果が出ます。掃…

『下町ロケット ガウディ計画』:池井戸 潤【感想】|小さな宇宙「人体」への挑戦

前作は、続編を意識させる終わり方でした。というより続編ありきの終わり方です。「ガウディ計画」も著者の定番「勧善懲悪」を感じさせる作品です。前作から引き続き登場している人物は、本作においても生き方に全くブレがありません。ドラマの影響で阿部寛…

『ワイルド・ソウル』:垣根涼介【感想】|棄民政策の果てに・・・

第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞の三賞を受賞した垣根涼介の代表作です。戦後の南米移民政策をベースに、ハードボイルド・ミステリー・ヒューマンドラマと言ったあらゆる要素を含んだ作品です。スピード感溢れる展開に…

『海辺のカフカ』:村上春樹【感想】|「僕」が立ち向かう先にあるものは・・・

少年カフカとナカタさんの2つのパートが交互に語られていきます。奇数章は一人称で少年カフカが描かれ、偶数章が三人称でナカタさんが描かれています。ふたつの世界が交互に描かれているのは「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を想起させます…

『共喰い』:田中慎弥【感想】|淀んだ川縁で描かれる鬱屈した心象風景

第146回芥川賞受賞作。円城塔氏の「道化師の蝶」との同時受賞です。全体を通して、暗く鬱屈したねっとりと纏わりつくような不快感というか気持ち悪さを感じざるを得ない作品でした。読みたくなくなるというものではなく、人間の負の部分だけを抽出し表現して…

『百貨の魔法』:村山早紀【感想】|心が柔らかくなっていく

第15回本屋大賞で9位になった作品。「桜風堂ものがたり」に登場した星野百貨店と、そこで働く従業員が織りなす美しい物語です。幕間を含めれば6章から構成されていて、それぞれの章で視点が変わる群像劇です。 百貨店に現れるという魔法を使う子猫をストー…

『リップヴァンウィンクルの花嫁』:岩井俊二【感想】|ネットと現実の狭間で・・・

映像化を念頭に置きながら執筆した作品なのでしょう。読み進めていくほどに、自然と映像が頭に浮かんできます。それだけ風景描写が上手い。難しい言葉や表現を用いずに、それでいながら明確に状況がイメージ出来ます。映画監督だからこそ出来る文章表現力で…

『星をつなぐ手 ー桜風堂ものがたりー』:村山早紀【感想】|町の書店が消えた時、失ったものの大きさに気付くのだろうか

第14回本屋大賞5位の「桜風堂ものがたり」の続編。桜風堂で働くことになった月原一整のその後だけでなく、銀河堂書店の書店員たちのその後も描かれています。書店員である彼らを描くことで、町の書店が置かれている厳しい現状をテーマにしているのは前作と…