晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト
タイトルのテキスト

ヒューマンドラマ

『Phantom』:羽田 圭介【感想】|自分たちが、追いかけてくる。自分たちに、のみこまれる。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、羽田圭介さんの「Phantom」の読書感想です。 羽田圭介さんの小説は、芥川賞受賞作「スクラップ・アンド・ビルド」以来です。芥川賞受賞作でありながら、読みやすくて面白かった。又吉直樹さんの「火花」とのダブ…

『わたしの美しい庭』:凪良 ゆう【感想】|生きづらさを抱えた人たちと、わたしの物語

ご覧いただきありがとうございます。今回は、凪良 ゆうさんの「わたしの美しい庭」の読書感想です。 五編の物語で構成されている連作短編集です。性別も年齢も立場も違う四人の視点(第一話と第五話は同じ視点)で、物語は描かれています。 物語の中心にいる…

『自転しながら公転する』:山本 文緒【感想】|全部やらなきゃダメですか?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、山本文緒さんの「自転しながら公転する」の読書感想です。 山本文緒さんの7年ぶりの長編小説で、2021年本屋大賞第5位に選ばれています。 主人公「与野 都」が、恋愛・仕事・家庭に悩みながら生きていく様子を描…

『八月の銀の雪』:伊与原 新【感想】|自然科学が人の心を癒す

ご覧いただきありがとうございます。今回は、伊与原 新さんの「八月の銀の雪」の読書感想です。 五篇から成る短編集で、2021年本屋大賞第6位を受賞。第164回直木賞候補作にも選ばれています。 各短編の主人公は性別も年齢も悩みも全く違いますが、皆、現状…

『滅びの前のシャングリラ』:凪良 ゆう【感想】|もう少し生きてみてもよかった。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、凪良 ゆうさんの「滅びの前のシャングリラ」の読書感想です。 2021年本屋大賞第7位。本屋大賞を受賞した「流浪の月」に続き、本作も本屋大賞にノミネートされました。 1か月後に小惑星が地球に衝突し、人類が滅…

『羊は安らかに草を食み』:宇佐美まこと【感想】|それでも消せない”秘密の絆”があった

ご覧いただきありがとうございます。今回は、宇佐美まことさんの「羊は安らかに草を食み」の読書感想です。 穏やかなタイトルから想像できないくらい重い内容でした。認知症、太平洋戦争敗戦後の満州の混乱、家族の在り方。人生を振り返る重厚な内容に加えて…

『麦本三歩の好きなもの 第二集』:住野 よる【感想】|あいかわらずだけど、ちょっと新しい日々

ご覧いただきありがとうございます。今回は、住野 よるさんの「麦本三歩の好きなもの 第二集」の読書感想です。 前作に引き続き、主人公「麦本三歩」の好きなものを描いた短編集です。12の短編があるので、各短編はかなり短い。なので気楽に読めます。 図書…

『52ヘルツのクジラたち』:町田 そのこ【感想】|何も届かない、何も届けられない

ご覧いただきありがとうございます。今回は、町田 そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」の読書感想です。 2021年本屋大賞受賞作。最初に気になるのがタイトルです。「52ヘルツのクジラ」とは何なのでしょうか。 物語の早い段階で、意味するところは語られま…

『クスノキの番人』:東野 圭吾【感想】|その木に祈れば、願いが叶う

ご覧いただきありがとうございます。今回は、東野 圭吾さんの「クスノキの番人」の読書感想です。 クスノキに秘められた謎が重要な要素ですが、ミステリーでははなくヒューマンドラマの印象が強い。登場人物の心の機微が丁寧に描かれているからでしょう。読…

『犬がいた季節』:伊吹 有喜【感想】|18歳。その迷いも覚悟も希望も。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、伊吹 有喜さんの「犬がいた季節」の読書感想です。 2021年本屋大賞第3位。6つの物語で構成される連作短編集です。 八稜高校に飼われることになった白い犬「コーシロー」の目を通して描かれる高校生たちが主人公…

『一人称単数』:村上 春樹【感想】|世界は流れていく 物語が光景をとどめる

ご覧いただきありがとうございます。今回は、村上 春樹氏の「一人称単数」の読書感想です。 八編の短編集です。表題作「一人称単数」のみ書き下ろしであり、他は文學界で発表された作品です。各短編に関連性はなく、完全に独立しています。なので、それぞれ…

『悪と仮面のルール』:中村 文則【感想】|悪とは何か

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中村 文則さんの「悪と仮面のルール」の読書感想です。 玉木宏主演で映画化されていますが、あくまで小説についての感想です。 タイトルを見ると、人間の負の側面を描き出している作品だと想像します。悪と言って…

『アルルカンと道化師』:池井戸 潤【感想】|探偵半沢、絵画の謎に挑む。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、池井戸 潤さんの「アルルカンと道化師」の読書感想です。 2020年9月17日に発刊された半沢直樹シリーズの五作目です。半沢が東京中央銀行大阪西支店に転勤した直後が舞台なので、第一作「オレたちバブル入行組」の…

『お探し物は図書室まで』:青山 美智子【感想】|本ですか?仕事ですか?人生ですか?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、青山 美智子さんの「お探し物は図書室まで」の読書感想です。 2021年本屋大賞第2位。五つの短編で構成されていて、それぞれが独立した物語です。 物語の鍵となるのは区のコミュニティセンター内にある図書室と、…

『わたし、定時で帰ります。』:朱野 帰子【感想】|いつまで残業するつもり?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、朱野 帰子さんの「わたし、定時で帰ります。」の読書感想です。 働き方改革は、どのくらい進んだのでしょうか。ワークライフバランスという言葉もよく聞きます。これらの言葉が無くならないのは、まだまだ達成さ…

『麦本三歩の好きなもの』:住野 よる【感想】|好きなものがたくさんあるから、毎日はきっと楽しい。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、住野 よるさんの「麦本三歩の好きなもの」の読書感想です。 社会人になったばかりの麦本三歩の生活を描いた日常小説です。図書館勤務をする彼女の日常は普通の日々で、取り立ててドラマチックな出来事や大きなア…

『となり町戦争』:三崎 亜記【感想】|見えない戦争

こんにちは。本日は、三崎 亜記さんの「となり町戦争」の感想です。 第17回小説すばる新人賞受賞作。著者のデビュー作でありながら、直木賞候補にもなっています。 タイトルどおり、となり町との戦争を描いています。現在の日本を舞台に自治体同士が戦争をす…

『ハケンアニメ!』:辻村 深月【感想】|”いい仕事”がしたい!

こんにちは。本日は、辻村 深月さんの「ハケンアニメ!」の感想です。 2015年本屋大賞第3位。アニメ制作を舞台にした職業小説です。読んだ印象は、有川浩さんの小説の雰囲気を感じます。どこがと言われると答えに困りますが。 制作されるアニメが減った訳で…

『星の子』:今村 夏子【感想】|一緒に信じることが、できるだろうか。

こんにちは。本日は、今村 夏子さんの「星の子」の感想です。 第157回芥川賞候補であり、2018年本屋大賞第7位の小説です。主人公「ちひろ」の視点を通じて、家族の在り方・新興宗教・友人関係の中で、彼女自身の変化が描かれています。 小学生から中学三年…

『さざなみのよる』:木皿 泉【感想】|宿り、去って、やがてまたやって来る

こんにちは。本日は、木皿 泉氏の「さざなみのよる」の感想です。 木皿泉氏の小説を読むのは初めてです。夫婦脚本家のペンネームだと知り、二人で小説を執筆していくのはどんな作業なのか興味の抱くところです。 本作は死を扱っています。生きている限り、死…

『推し、燃ゆ』:宇佐見 りん【感想】|推しが炎上した。

こんにちは。本日は、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」の感想です。 第164回芥川賞受賞作。2021年本屋大賞にもノミネートされています。最終的にプロの作家に選ばれる純文学の芥川賞作品が、一般人の書店員の支持を受けたのは意外に感じます。純文学は読みづ…

『まほろ駅前狂騒曲』:三浦しをん【感想】|まほろシリーズ大団円

こんにちは。本日は、三浦しをんさんの「まほろ駅前狂騒曲」の感想です。 行天が多田便利件に転がり込んでから2年が経過しています。相変わらず順風満帆な関係とは言えません。 二人には重い過去があります。消えない心の傷です。「まほろ駅前多田便利軒」…

『少年と犬』:馳 星周【感想】|神が遣わした贈り物

こんにちは。本日は、第163回直木賞受賞作、馳 星周氏の「少年と犬」の感想です。 犬(多聞)を中心にした連作短編集です。関わる人たちの人生を描いています。犬との関係ははるか昔から続いていて、人間にはかけがえのない存在です。犬が何をもたらすかは、…

『逆ソクラテス』:伊坂幸太郎【感想】|敵は、先入観。世界をひっくり返せ!

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「逆ソクラテス」の感想です。 伊坂幸太郎の作家デビュー20周年に発刊された5編の短編集です。各短編に直接的な関係性は薄い。共通する登場人物もいますが、連作短編集とは言えないだろう。それぞれの短編はそれぞれで完…

『不祥事』:池井戸 潤【感想】|銀行にあるもの「カネと謎」。ないもの「情と常識」。

こんにちは。本日は、池井戸 潤氏の「不祥事」の感想です。 爽快感の中に人生の悲哀も描かれます。舞台は東京第一銀行です。言うまでもなく、半沢直樹の舞台になった東京中央銀行の合併前の銀行のひとつです。ちなみに、もうひとつは産業中央銀行です。 八編…

『ライオンのおやつ』:小川 糸【感想】|人生の最後に食べたい”おやつ”は、なんですか

こんにちは。本日は、小川 糸さんの「ライオンのおやつ」の感想です。 2020年本屋大賞第2位。余命僅かながん患者「海野雫」の人生の終末を描いた物語です。タイトルからは全く想像できなかった内容でした。 舞台はホスピスです。積極的な治療では治らない患…

『何もかも憂鬱な夜に』:中村文則【感想】

こんにちは。本日は、中村文則氏の「何もかも憂鬱な夜に」の感想です。 タイトルから想像するのは暗く重い小説です。実際、全編を通じて重く苦しい。死をテーマにした小説に明るさを求めるのは難しいのかもしれない。しかし、死だけに焦点を当てている訳では…

『月と蟹』:道尾秀介【感想】|世界は大きくて理不尽だから、僕たちは神様を創ることにした

こんにちは。本日は、道尾秀介氏の「月と蟹」の感想です。 第144回直木賞受賞作です。直木賞は大衆小説のイメージがあるので気軽な気持ちで読み始めたが結構重い内容でした。登場人物の心象に焦点を当てているからだろう。 道尾秀介氏の作品を読むのは初めて…

『ペスト』:アルベール・カミュ【感想】|人はどう振る舞うのか?

こんにちは。本日は、アルベール・カミュの「ペスト」の感想です。 新型コロナウィルスの世界的流行により、カミュのペストが俄かに注目を浴びています。発行部数は100万部を超えました。新型コロナとペストを繋ぎ合わせてしまうほど、コロナに対する不安は…

『熱源』:川越宗一【感想】|降りかかる理不尽は「文明」を名乗っていた

こんにちは。本日は、 川越宗一氏の「熱源」の感想です。 第162回直木賞受賞作。2020年本屋大賞第5位。 民族・文明・国家など多くの要素を含んだ重厚な作品です。樺太アイヌという国を持たない民族が、国家や文明に翻弄されていきます。人として、また民族…