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『テロリストのパラソル』:藤原伊織【感想】|ハードボイルドな生き様がここにある

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 史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のW受賞作品です。藤原伊織さんはすでに死去されています。ミステリーなので、ネタバレなしを心掛けます。

「テロリストのパラソル」の内容

ある土曜日の朝、アル中のバーテンダー・島村は、新宿の公園で1日の最初のウイスキーを口にしていた。そのとき、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。全共闘運動に身を投じ、脛に傷を持つ島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。後日、テロの犠牲者の中には“同志"だった学生時代の恋人と、ともに指名手配された男が含まれていたことが判明した。島村は容疑者として追われながら、事件の真相に迫ろうとする――。【引用:「BOOK」データベース】  

「テロリストのパラソル」の感想

ードボイルド小説

  ミステリー作品として読み始めましたが、ミステリーとハードボイルドが共存している印象です。どちらかと言えばハードボイルドの要素が強い。ハードボイルドの定義を、精神的・肉体的に強靭で感傷や恐怖などの感情に流されない行動的な人物の眼で物語を語ることだとすればですが。もちろん、ミステリーの要素もあります。ただ、ミステリーとして読み始めるとかなり違和感を感じます。登場人物の生き様が主軸であり、事件はあくまでハードボイルド小説のためのツールに過ぎません。なので、事件の構成と筋書きはミステリーとしては甘く感じます。 

界が狭い

 事件は数十人の死者を出す大掛かりな爆弾テロです。それにも関わらず、登場人物は非常に限られた狭い地域にいる数人の人間だけです。舞台となる行動範囲も狭い。事件の大きさの割にはせせこましい印象を受けてしまいます。また、島村は事件の犯人を捕まえたいのか、それとも事件の目的を知りたいのかはっきりしません。物語の組み立ても、島村を無理やり事件に関わらせようとしていて不自然です。

 現在はアル中のバーテンダーに過ぎない島村にしては、鋭い推察と行動力で警察より先んじて事件の真相を掴んでいきます。シャーロックホームズ顔負けの推理と行動力です。ちょっと無理があるのではないか。 

ウトローたち

  主要登場人物は、全共闘闘争の生き残りでアル中の島村とヤクザの浅井です。アウトローな人物を活躍させることで、人物の価値は世間ではなく自分の行動で決めるものだと描いているのでしょう。と言っても、アル中とヤクザなんですが。登場する人物のほとんどが自分の生きる道を自覚し、そのためならばどんな犠牲も払う気概を持っています。まさしくハードボイルド満載です。 

 ミステリーとして読めば都合の良すぎる話ですが、ハードボイルド小説として読めば登場人物のセリフ・行動は読み応えがあります。生きるということは、こういうことなんだな、と思わせてくれます。

終わりに

 ハードボイルド好きは必読。ミステリーを目的とするならば「・・・」です。いろいろ書きましたが読み応えはありますし、登場人物は魅力的な人物ばかりです。ただ、ミステリーとしてはご都合主義だな、と感じました。 

テロリストのパラソル (文春文庫)

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