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下町ロケット:池井戸 潤【感想】|最後まで諦めなければ夢は叶う

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 読み始めると止まらない。一気読みでした。ドラマを先に見ていたので、ストーリーは分かっていました。それでも面白い。ドラマは、ほぼ原作に忠実に再現されていたように感じます。 

  同じ池井戸潤の作品でも、半沢直樹と比べられることが多いです。半沢直樹の後にドラマ化された影響もあるでしょう。半沢直樹が銀行内の権力闘争や追い落としなどドロドロした感じだったのに比べ、モノづくりに人生を賭けるストーリーは大人の青春物語です。どちらが面白いということもないのですが、下町ロケットは「陽」、半沢直樹は「陰」だなと勝手に思っています。 

「下町ロケット」の内容

研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた―。【引用:「BOOK」データベース】  

「下町ロケット」の感想 

小企業の弱さ

 ストーリーは大きく二つに分かれます。前半のナカシマ工業による特許侵害訴訟と後半の帝国重工への部品供給です。そして、このふたつは微妙に絡み合っています。 

 主人公の佃航平が社長を務める佃製作所は中小企業です。町工場という表現を物語中でよくされていますが、従業員数名の町工場ではありません。それなりの従業員を抱えている中堅企業というイメージで捉えました。それでも一部上場の大企業から比べれば、不安定な存在です。巨大企業に挑むにはあまりに弱い存在なのです。その弱い佃製作所が大企業に蹂躙されようとする。日本人の判官びいきをくすぐります。弱い方を応援したくなるのは、日本人の特性かもしれません。  

ノづくりに懸ける

 物語の根底にあるのは、通じてモノづくりです。それを「特許」というキーワードを軸に描いています。「特許」には、金・プライド・誇り。様々な思惑が纏わりついています。ナカシマ工業は「特許」を金儲けの手段に。帝国重工は「特許」を面子のために。そして、佃製作所は「特許」をプライドと誇りと夢のために使おうとします。ナカシマ工業と帝国重工が特許を奪うため、佃製作所を狙います。卑怯なやり方に対し、佃製作所とその社員が闘います。その姿に共感を覚えていくのです。 

カシマ工業との戦い

 ナカシマ工業との戦いは、後の帝国重工との闘いのプロローグのような印象を受けます。ナカシマ工業と佃製作所との戦いが、帝国重工との闘いのきっかけを作ることにもなりますし、裁判の結果が佃製作所内の不協和音の源ともなるからです。

 ナカシマ工業との戦いは分かりやすい構図です。ナカシマ工業は「悪」として描かれているからです。その大きな悪にあらゆる手立てを講じて立ち向かっていきます。その中で、物語の中核を成していく人物たちが描かれていくのです。佃航平はもちろんですが、経理部長の殿村直弘がとてもいい味を出しています。開発部長の山崎光彦。営業第一部長の津野薫。営業第二部長の唐木田篤と要所を締める人物はたくさんいるのですが、殿村の存在は非常に大きい。特に前半部分においては。

 そして一発逆転の火蓋を切る弁護士「神谷修一」との出会い。圧倒的に不利な闘いをひっくり返していく爽快感は読んでいて気持ちいい。 

国重工の登場

 ナカシマ工業との闘いが終わると、帝国重工が表舞台に出てきます。ナカシマ工業と比べても圧倒的に巨大な企業です。それに比べれば、佃製作所はまさしく吹けば飛ぶような存在です。裁判の結果発生した佃製作所内での不協和音は、この巨大な敵の登場により顕著なものになってきます。簡単に言えば、夢を取るか現実を取るかということなのですが、生きていく上での永遠のテーマのような気もします。

 様々な出来事を経て佃製作所はひとつになり、大きな困難を乗り越えていくことになります。佃製作所のモノづくりに懸ける情熱は、帝国重工を動かしていくのです。特に帝国重工の財前部長は、佃航平より格好いいかもしれません。

終わりに 

 この小説は最初から最後まで、とてもテンポがいいです。内容もあまり複雑でなく分かりやすいし、文章も読みやすく引っかかる部分がありません。最後はハッピーエンドと出来すぎな気もしますが、それが青春小説というものでしょう。最初に言いましたが、これは大人の青春小説です。諦めなければ夢が叶うというドラマです。

 現実の中小企業にも、世界品質の製品を作り出しているところもあるでしょう。そういう企業がこの小説のように世間に適正に評価されるようになれば、日本のモノづくりも夢のあるものになります。

 

 

TVドラマについて 

 冒頭にも書きましたが、TVドラマを先に見ました。半沢直樹の「倍返しだ」くらいの社会現象にはなりませんでしたが、ドラマとしては、決して見劣るものではなかったと感じます。原作に忠実に製作されていたのも良かった。ドラマだからと言って余計な手を加えると、うまくいくことよりも失敗することの方が多いので。

 それと、今回小説を読んでいて、ドラマのキャスティングは完璧だったなと感じました。佃航平役の阿部寛。開発部長の山崎光彦役の安田顕。経理部長の殿村直弘役の立川談春は、特にイメージどおりです。殿様バッタのような四角い顔と小説内で表現されていますが、その通りに感じました。

 加えて、神谷弁護士役の恵俊彰。そして、何よりも財前部長を演じた吉川晃司は、ハマり過ぎでした。もう一度、ドラマを見てみたくなりました。