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終の住処:磯﨑憲一郎【感想】|言いたいことは何だったのか。よく分からない。

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 第141回芥川賞受賞作です。30歳を過ぎて結婚した夫婦の20年間を描いた作品。20年間という長い期間を描きながら、あまり時間の経過を感じませんでした。何だか時間が一定のスピードで進んでいないと感じる小説です。

「終の住処」の内容

結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ―。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた…。【引用:「BOOK」データベース】  

「終の住処」の感想 

点の不安定さ

 30歳を過ぎて仕方なく結婚した夫婦の20年間の人生を描いています。結婚自体が前向きな意思で始まったわけではないので、終始、妻との関係に悩みを抱いている様子が描かれます。

 この小説は三人称で書かれています。主人公は、夫でありながら「彼」と表現されています。そして、妻は「妻」です。夫に対しては違う視点から描いているのに、妻に対しては夫からの視点です。視点が一定せずに統一感のない文章です。 

果関係の不明さ 

 成り行きで結婚した夫が、妻に対して抱く不安。「どうして妻は、自分の理解の範疇外にいるのだろう」ということに悩み続けています。夫の理解の範疇外にいることで、妻が普通でないように印象付けられています。しかし、夫も平均的な夫からは外れています。11年間の間に8人の女性と不倫をしたり、勤める製薬会社では結構な役職で出世したり。そんな生活を送りながら、11年間も妻と会話がなかったことを妻が原因のように描かれています。

 物事の因果関係がよく分かりません。11年間の理由も分かりませんし、普通に会話し始めることになった理由もよく分かりません。そして、夫がある日「家を建てる」と宣言した理由もよく分かりません。

終わりに 

 自分の読解力の問題なのか。何もかもが唐突に起こり、過ぎ去っていきます。娘が家を出て、夫が建てた家に死ぬまで夫婦二人で済むことになることに気付きます。それは家を建てる時から純然と立ちはだかる現実であり、今更気付くことでもないと思いますが。平凡(夫はそれほど平凡ではありませんが)な日々を淡々と綴っていきつつ、それの積み重ねが人生だと表現しているのでしょう。その平凡さには、理解できない事柄の積み重ねも含まれているということなのでしょう。

 三人称でありながら視点は彼なので、彼の心象は良く表現されています。しかし、妻の心象は全くと言っていいくらい分かりません。一方通行の心象風景なので、消化不良感が残りました。あまり、心に残るような物語ではないように感じました。