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ソードアート・オンライン2 アインクラッド:川原 礫【感想】|キリトは何故、ソロで挑むのか

  「ソードアート・オンライン」第2巻は、4つの短編エピソードで構成されています。第1巻でアインクラッドはゲームクリアされ、一応の終結を迎えています。そこでこのような形になったのでしょう。本筋の続編は、第3巻以降です。   

 第1巻は74層からゲームクリアまでが描かれています。74層以前のエピソードについては、回想や登場人物の台詞などで表現されていました。著者は、それだけでは満足できなかったのかもしれません。74層以前のエピソードを書きたかったのでしょう。短編のエピソードなので、第1巻ほどの読み応えはありません。第1巻の背景にはこんなことがあったのか、という程度の感覚で読めばいいくらいです。

 4編ともキリトを中心とした物語で、それぞれ別の女性がキリトの相手役として登場します。4番目の「サチ」以外の登場人物は、今後も登場し続ける人物です。その紹介も兼ねているような感じです。 

各エピソードについて 

「黒の剣士」  

アイテムの分配を巡り、パーティーメンバーと対立した末に脱退してしまった《ビーストテイマー》のシリカ。モンスターとの遭遇戦を切り抜けられず、すんでのところでキリトに救われるものの、身を挺して主人を守った使い魔のピナを死なせてしまう。

肩を落とし涙に暮れるシリカを放ってはおけず、キリトは使い魔を蘇生させるための方法を教えるだけでなく、その手助けと装備の援助まで申し出る。一度は「レベルを上げて自力で何とかする」と辞退したシリカだったが、使い魔の蘇生には厳しい時間制限があり……。

ピナを蘇生させるべく通称《フラワーガーデン》と呼ばれる第47層《フローリア》へと向かった二人の背後には、不穏な影が忍び寄っていた。 

「心の温度」  

2024年06月24日、第48層《リンダース》にあるリズベット武具店を訪れたキリトは、所有する魔剣《エリュシデータ》と同等以上かつ現在製作可能な最高の剣を作ってほしいと依頼する。それも、予算不問で。

キリトの地味な身なりを一瞥するなり支払い能力に不安を覚えたリズベットは、ひとまず自身の最高傑作を提示。ところが、キリトが耐久力試しとして剣同士を打ち合わせた瞬間、リズベット自慢の剣は修復不可能なレベルにまで砕けてしまった。

キリトの言葉に鍛冶師としての腕を低く見られたと感じて激昂したリズベットは、材料さえあればキリトの剣が「ポッキポキ」折れるような剣をいくらでも作れると啖呵を切ってしまい――売り言葉に買い言葉の成り行きで、半ば強引に危険な素材収集に同行する。   

「朝露の少女」  

クラディールによる暗殺事件を機に、キリトとアスナは《血盟騎士団》からの一時脱退を申請、団長・ヒースクリフはこれを承認。二人は美しい風景の広がる第22層にある湖畔のログハウスを手に入れ、束の間、そこで穏やかな時間を過ごす。

ある日、幽霊が出ると噂の森にアスナを連れ出したキリトは、そこで思いがけず本当に幽霊と遭遇してしまった……と思いきや、それは《SAO》のシステム的には「相当に妙」な、プレイヤーと思しき少女だった。

記憶を失っていた少女を保護した二人は、親のように慕ってくれる彼女に対して情を抱き始めながらも、どこかで心配しているはずの家族を捜し出すことに決める。  

「赤鼻のトナカイ」  

偶然助けたギルド《月夜の黒猫団》の勧誘を受けたキリトは、最前線で戦う殺伐とした《攻略組》とは異なる和やかな雰囲気に惹かれ、本当のレベルを隠して加入を決める。

キリトの加入によってギルドは順調に成長、いずれは《攻略組》の一員になりたいと語るギルドマスターのケイタ。いつか成長したケイタの理想が前線の閉鎖的な空気を変えてくれるのでは、とキリトも期待を寄せていく。

笑って、泣いて……死の恐怖に怯えながらも必死にこの世界を生きる彼らを目の当たりにしたキリトは、《月夜の黒猫団》に深い愛着を抱くようになっていく。そんな中、念願だったギルドハウスの購入に出かけたケイタの不在中、ギルドは悲劇的な事故に見舞われる。 

全体の印象 

 エピソードごとで完結しますので、それほど深いストーリー展開になっている訳ではありません。どちらかと言えば、第1巻のキリトの人物設定を補完している印象です。ストーリー自体は簡潔で分かりやすい。その分、読み応えが薄い。あくまでサイドストーリーとしての位置づけといったところでしょう。「朝露の少女」のユイを別にすれば、登場する女の子全員がキリトに好意を抱くところが、いかにもラノベの主人公らしいと言えばらしいです。キリトの圧倒的な強さばかりが目立ってちょっと白ける部分もあります。 

新しい登場人物と、キリトの人物背景の説明。そのことに重点が置かれているように感じます。 

 「赤鼻のトナカイ」は、キリトが過去に全滅させたギルドの話です。キリトがソロで攻略する理由のひとつがエピソードとして描かれています。 

  • 「はじまりの街」でクラインを置いていったこと
  • 所属ギルドを全滅させたこと

 これがキリトがソロで攻略に挑む大きな理由です。クラインの件は第1巻で語られていますが、もうひとつの理由が「赤鼻のトナカイ」で語られています。キリトの苦悩の理由が明らかにされます。第1巻に比べれば、全体的に軽い感じがしますが、短編なので読みやすく、第1巻を補足する部分もあるので読んで損はありません。