ガリレオシリーズの中でも、「探偵ガリレオ」「予知夢」「ガリレオの苦悩」の短編3冊の感想です。長編とこれ以降の短編は、またいずれ。
探偵ガリレオと言えば福山雅治、というくらいイメージが定着しています。私は、ドラマより先に小説を読みました。小説が映像化されると、自分が抱いていたイメージとかけ離れていてがっかりすることがあります。ガリレオに関して言えば、とてつもなくかけ離れている訳ではなく、だからと言ってピッタリでもない。
小説が短編集(後に長編も執筆されてますが)なので、湯川の人物像として語られるエピソードや説明が深くないからかもしれません。読み手によって、イメージする湯川に幅が出来るのでしょう。
ドラマの話は置いといて、小説の感想です。短編で構成された初期のガリレオシリーズ3冊です。「探偵ガリレオ」が5話。「予知夢」が5話。「ガリレオの苦悩」が5話。合計15話なので、個別の感想ではなく全体の感想です。
「ガリレオ」の内容
突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪れる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む。【引用:探偵ガリレオ「BOOK」データベース】
「ガリレオ」の感想
読みやすさ
短編なのでサクサク読めますし、あっという間に終わってしまう印象です。文章が分かりやすく、読み取りにくい表現や言い回しがなく、状況が頭にイメージしやすい。謎解きの軸に物理学を利用している割には、あまり難解さを感じさせません。淡々と進むストーリーはテンポの良さがあります。
反面、人物設定においても謎解きにおいても、物足りなさを感じるのは否めません。限られたボリュームの中で、事件発生から解決までを繋げていきます。どうしても複雑な仕掛けを施すような展開は望めず、事件解決へ向けストレートに物語が進みます。
決して、謎が浅いと言う訳ではないのですが、都合の良い展開に頼らざるを得ない部分もあります。
ミステリーとして
湯川の力で、謎解きはあっさりと終わってしまいます。事件に関する謎は、結構難しい。犯人は一体どんなトリックを使ったのか。事件が起こった段階では想像がつきません。一般人、特に文系人間にトリックを見破ることは困難です。だからこそ、刑事の草薙は、湯川に助力を求めるのですが。
湯川が登場して謎解きをするのはいいのですが、当然、物理学の専門知識をもって事件のからくりを解明します。なので、伏線として仕込まれているヒントがあったとしても、文系人間の私は気付けない。湯川の説明があって初めて納得できるというところです。読者がトリックを解明するというよりは、湯川の能力に感嘆するストーリーです。
ただ、物理学の専門知識を使ったトリックでありながら、湯川の説明は分かりやすい。物理学の知識がなくても理解できます。文系人間の草薙が、読者を代表しているのでしょう。彼に理解できるように説明するということは、同時に読者にも理解できるということです。
登場人物
主要登場人物は、3人。
湯川学
帝都大学物理学准教授で、理工学部物理学科第十三研究室に所属。天才的な物理学知識を持ち、物理学以外にもかなりの専門的知識を持つ。
草薙俊平
警視庁捜査一課所属の警部補。湯川学とはかつて帝都大学バドミントン部で一緒だった。突然人体が燃え上がるという事件で、マスコミが唱えたプラズマ説を検証するために湯川の第十三研究室を訪ねて以来、難事件が起こると湯川の協力を求めてる。
内海薫
真相究明に全力を注ぐ、正義感の強い女性刑事。
小説を読んだ後でドラマを見ました。小説の主人公は草薙の印象でしたが、ドラマでは完全に湯川(福山雅治)でした。
湯川学は、ほぼ小説の人物設定でしたが、草薙、内海は全くの別人に設定されていました。また、ドラマでは湯川と内海のペアで話が進み、草薙は脇役扱いでした。ドラマとしては、女性を前面に押し出したい気持ちも分かります。
終わりに
作者の東野圭吾さんは、某新聞の人気作家のアンケートで1位になっていました(いつ頃の記事か覚えていませんが)。確かに、このガリレオシリーズについては、万人受けするだろうなと思います。小説を読み、ドラマを見た感想を言うと、ドラマの方が面白かった。ドラマのキャスティングと作り方が上手かったのでしょう。
気軽に読めて楽しめるシリーズですが、ストーリー展開は、毎回ほぼ同じです。
事件発生 →湯川に協力依頼(ここで湯川が渋る場面が多々あり)→謎を解明し、草薙と内海が事件解決(湯川がそのまま解決することも多々あり)
続けて読むとだんだん飽きが来ます。短編なので、構成に変化を持たせるのが難しい。同じガリレオでも、長編だと印象は変わると思います。
- 作者: 東野圭吾
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