普段、宗教について意識することは少ない。「家の宗教は?」って聞かれると、仏教と答えます。「宗派は?」と聞かれれば、檀家となっているお寺の宗派を答えます。ちなみに、私は西山浄土宗です。檀家と言っても法事やお盆や葬式の時にお世話になり、毎年会費(?)のようなものを支払っているだけです。宗派の教義や成り立ちは知識として知っていますが、信仰しているかどうかと聞かれると疑問符が付きます。
この本では、第一章で仏教の誕生から発展の過程を解説しています。ブッダが開いた仏教が、どのようにして広がっていったのか。その過程で、仏教がどのように変化していったのか。日本において仏教がどのように受け入れられ、どのように変化していったのかと言った歴史的な事実を軸に分かりやすく解説しています。現在の日本が、葬式仏教と揶揄されるに至った歴史的な過程も書かれています。ただ、そのこと自体を否定的に捉えている訳ではないようです。
第二章では、インドのダライ・ラマ14世との対談について書かれています。ダライ・ラマ14世と言うと遠い世界の人という印象があります。池上彰は、ダライ・ラマ14世に日本の現状を踏まえながら分かりやすい質問をしています。また、ダライ・ラマ14世も分かりやすい回答をしています。かなり身近な存在として認識出来る気がします。
第三章では、日本の仏教が進むべき道について。また、仏教に関わる我々の意識について書かれています。日本の未来に向けた仏教の在り方についての提言に近いかもしれません。
「池上彰と考える、仏教って何ですか?」の内容
仏教の誕生、日本への伝来から、葬式や戒名の意味、新興宗教まで―。仏教にまつわる疑問をわかりやすく解説。【引用:「BOOK」データベース】
「池上彰と考える、仏教って何ですか?」の感想
第一章 仏教って何ですか?
第一章の前半は、ブッダが悟りを開き仏教が誕生した話です。ブッダが教えた仏教の中身。その後、上座部仏教と大乗仏教への分離から、中国を経由して日本への伝播。仏教の教義の解説と仏教の広がりの歴史的事実を分かりやすく解説しています。仏教関係の本を読んだことのある人なら、だいたい聞いたことのある話だと思います。取り立てて目新しいことはないですが、分かりやすく書かれていることは間違いありません。
後半は、日本に伝わった仏教が現在の仏教へと至った道筋について解説しています。多くの宗派へと分派した過程。仏教徒と葬式が結びついた理由。仏教やお寺から、人が離れていった現状と理由。カルト教団の台頭と仏教の関係。仏教と社会的な要素を絡ませながら解説しています。
第二章 仏教発祥の地インドへ
中国を経由していない仏教。すなわちブッダが説いた原始仏教を色濃く受け継いだ地へと仏教を訪ねます。その目的は、ダライ・ラマ14世との対談です。この対談で、
- 仏教の考え方について
- 現在の日本における仏教について
- 東日本大震災後の日本人について
- エネルギー問題について
などを質問しています。仏教に関わることから、およそ仏教からかけ離れていることまで様々なことをダライ・ラマ14世に尋ねています。そしてダライ・ラマ14世の回答は、実に論理的で明確で分かりやすい。雲を掴むような曖昧な仏教観で答えるのでなく、心理学から仏教を眺めてみたり、科学的見地から回答を提示したり。
池上彰の質問が分かりやすいということもあるでしょうが、ダライ・ラマ14世の回答も、我々一般人にとって分かりやすい言葉で説明されています。そして、慈愛も伴っている気もします。この章は、是非、読んでみてください。
第三章 仏教で人は救われるのか?
サブタイトルは「日本人にとっての仏教とは?」です。宗教に対し無関心とまではいかないまでも、日常生活でほとんど意識することのない日本人。その日本人に対し仏教はどのように働きかけ、どのような役割を担っていくべきなのか。
仏教は、積極的に布教する宗教ではありません。仏教とは何かについて、我々の方から知っていく必要があります。だからと言って、仏教界は何もしなくていいという訳でもないでしょう。お寺や僧侶も、仏教が果たす役割を認識していかなければならないと思います。日本人にとって、仏教が果たす役割は決して小さいものではありません。仏教について知ることは、有意義なことだと感じました。