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『アーサー王と円卓の騎士』:ローズマリ・サトクリフ【感想】

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 こんにちは。本日は、ローズマリ・サトクリフの「アーサー王と円卓の騎士」の感想です。

 

 アーサー王物語として知られるものは民間伝承や創作によるものがほとんどです。一般的にアーサー王物語として知られているのは、中世後期に完成したトマス・マロリーがまとめたアーサー王を中心とする騎士道物語です。 アーサー王は6世紀初めにローマン・ケルトのブリトン人を率いてサクソン人の侵攻を撃退した人物とされますが、アーサー王が本当に実在したかについては議論が続いています。

 アーサー王の物語は多くの本が出版されていますが、いろいろと悩んだ末にサトクリフ版を選びました。 アーサー王の入門として読みやすいと評価されているのが理由です。それでも、三冊にも及ぶ大長編ですが。

 最初に感じたのは、アーサー王の物語と同時にアーサー王に仕える円卓の騎士の物語だということです。騎士たちのそれぞれのエピソードが物語を構成しています。個性豊かな騎士たちが織り成すエピソードに引き込まれます。 

「アーサー王と円卓の騎士」の内容

ブリテン王アーサーと、円卓の騎士、魔術師マリーン、そして、ブリテンの善と栄光を求める彼らの終わりなき戦い、その伝説的な活躍のかずかずを描いた、生き生きとして、忘れがたい「アーサー王」の登場である。【引用:「BOOK」データベース】  

 

「アーサー王と円卓の騎士」の感想

ーサー王と魔術師マーリン

 マーリンが導き、アーサー王は誕生します。マーリンの役割は大きい。まずは、マーリンがどのような人物かを描きます。彼の生誕、ルーツ、少年時代の出来事。マーリンが偉大な魔術師であり、大きな力を持っていることが分かります。マーリンが魅力的すぎて、アーサー王が霞んでしまう気もします。

 アーサーを王にすることは、マーリンの使命だろう。子供のアーサーが石に刺さった剣を抜いた時、彼をブリテンの王だと人々に認めさせたのもマーリンです。アーサーは運命によってブリテンの王になることが決まっていたが、マーリンによって仕組まれていたように感じます。アーサーが王になってからも、マーリンは後見人のように側にいます。

 アーサー王の元には騎士たちが集まり、忠誠を誓います。アーサーはブリテンの王に相応しく成長していく。定められた王だとしても成長の過程は重要です。だからこそマーリンが側にいるのだろう。

 もちろんマーリンがいても、アーサー王が物語の主です。ブリテン王としてブリテンを守り、敵を打ち破っていきます。武勇の高さと実績と民の信があり、騎士が集います。マーリンには見えていた未来だから当然の結果だろう。彼は国の行く末まで見えているのだから。

 マーリンは自身の運命を背負い、アーサーの元を去ります。マーリンがいなくても、アーサーが王としてやっていける時期なのだろう。それでもマーリンがいなくなる不安は計り知れないはずですが、マーリンの役割はとりあえず終わった。先々に再びマーリンが登場することがあるのかは分からないが。マーリンが去りアーサー王自身の物語は一区切りし、円卓の騎士たちの物語へと移っていきます。

  

卓の騎士たち

 第6章から第13章までは、円卓の騎士たちの物語です。円卓の騎士たちの中でも最も誉れ高い騎士「サー・ランスロット」から始まり、「サー・ガウェイン」、台所の騎士「ボーマン」と続き、聖杯探索で最も有名な一人「パーシヴァル」で本書は終わります。

 それぞれの騎士は個性的です。生まれも育ちも様々ですが、誇り高さは同じです。アーサー王の円卓の騎士になることを望み、なることで名誉を手に入れます。騎士になるためにも騎士道を踏み出すことはできません。

 騎士たちを駆り立てるものは冒険です。冒険こそが、彼らを騎士として高みに導くのだろう。円卓の騎士だからといって、必ずしも至高の神のような存在ではありません。ひどく人間的な部分もあります。例えば、

  • 醜い貴婦人を見れば目を逸らす。
  • ランスロットとグウィネヴィアの関係
  • イーニッドに対するジェレイントの仕打ち(最後には理解し合うが)

 円卓の騎士たちは騎士道精神を重んじますが、重んじるあまり他人に対して思いやりに欠ける行為を起こすことがあります。だからこそ魅力的なのかもしれません。彼らも人間であり、成長していくものだからです。

 騎士たちのルーツは高貴な者が多い。長年受け継がれているものが騎士道には必要なのだろうか。台所の騎士ボーマンも、正体はオークニーのガレスでした。中世の騎士は生まれも重要だったのだろう。アーサーによって次々に円卓の騎士に任じられていきますが、貴賤を問わずということでもなさそうです。アーサーは誰であっても歓迎しますが、王の面前に行こうと思うこと自体、庶民には考えも及ぼないことなのだろう。

 

世騎士の生き方

 円卓の騎士の冒険譚が、アーサー王物語の大きな魅力です。アーサー王自身の魅力ももちろんですが、個性豊かな騎士たちが集まることで面白みが増します。

 冒険での彼らの行動は様々ですが、根底には騎士道があります。困っている者がいれば助けますが、騎士道はすぐに槍での戦いへと発展してしまいます。敵味方の区分が明確すぎるからだろう。円卓の騎士の敵は騎士道にもとる者であり、同時にアーサー王の敵です。アーサー王はブリテンを支配する者であり、ブリテンを守り平和にする者です。アーサー王に仕えていなければ敵になってしまいます。それにしても問答無用で戦いになる印象です。槍を数回交えて、その後、剣による壮絶な死闘です。楽勝の時もあれば、辛勝の時もあります。

 騎士道の大きな特徴は、慈悲をかけることです。負けた騎士が慈悲を請えば、聞き入れることが騎士道です。円卓の騎士は騎士の中の騎士です。それでありながら、時に慈悲を受け入れないこともある。彼らの成長途上なのだろう。

 騎士道と武士道は似ているように見えるが、様々に違いがあります。一言では言い表せません。武士道は一人の主君に仕え、主君のために命を懸けます。死ぬことも厭わない。円卓の騎士たちはアーサー王に仕えているので、騎士道も似ているように感じます。しかし、彼らはアーサー王の元を離れ、冒険に出ます。常に主君の側にいて、主君のためだけに戦う訳ではありません。騎士道の本質は、自分自身の生き方を高めることなのだろう。忠誠心はありますが、それ以上に重要なものがあるのかもしれません。

 騎士道を知るためには、中世の歴史や文化を紐解かないと分からない。登場する騎士たちの行動が様々なのは、アーサー王が中心ではなく、自身の冒険が中心だからです。自身の信じる道を生きるのであれば、信じるものが違えば生き方は微妙に違ってきます。騎士たちの違いは生き方の違いです。 

 

と魔法

 魔法が登場するので、アーサー王物語はファンタジー色が強い。もし実在の人物をモデルにした伝承だとしても、アーサー王物語はフィクションの物語です。だからこそ、多くの人に読まれるのかもしれない。

 騎士は魔法を使いません。剣で戦うことが騎士の姿であり、誇りです。しかし、騎士たちは魔法の力を軽視している訳でもない。彼らの冒険の中で描かれる魔法は、彼らを陥れることに使われることが多い。どちらかと言えば、良い使われ方をしません。悪気がないこともありますが、だますために使います。正面から戦いを挑む騎士とは相容れないのだろう。

 魔法は、物語に必要不可欠なのだろうか。マーリンがいなければアーサー王は誕生していないかもしれない。魔法がそれぞれの騎士たちに与えた影響も大きい。しかし、ブリテンを揺るがすほどではありません。後に影響を及ぼすことになるのだろう。そのような伏線を感じる部分もあります。 

 

終わりに

 サトクリフのアーサー王物語は三部作です。まだ冒険は始まったばかりであり、本書はそれぞれの騎士のエピソードが連なる短編集のような印象です。

 日本語訳は読みやすく、どちらかと言えば中学生や小学生向きなのかもしれません。次作以降も楽しみです。一気に読み切るにはボリュームが多いのと、飽きが来そうな気がしますが。