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『だれでも書ける最高の読書感想文』:斎藤 孝【感想】

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 魅力的なタイトルです。読書感想文が苦手で避けて通りたいと考えている人も多いでしょう。読書感想文について考える時、「読書が好きかどうか」「文章を書けるかどうか」の二つの段階を考える必要があります。

 感想文は宿題や課題として書く機会が多い。書くことに対し主体性はなく、やらされている感が満載です。そもそも本を読む人が減っています。本書は、本を読むが書けない人に対する心構えとテクニックが中心になっています。第5章で本の選び方も指南していますので、読書の習慣のない人に対するメッセージも含まれていますが。

 本を読んで何も感じない人はいません。問題は読解力と表現力です。プロの作家ではないのだから気負わないことが重要です。本書は語り掛けるような文章で書かれているので読みやすい。 

「だれでも書ける最高の読書感想文」の内容

宿題、試験、レポートなどで、読書感想文に頭を悩ませている人は少なくない。本選びで迷ってしまう、そもそも読書がきらい、文章を書くのが苦手―理由はさまざま。でも、感想文はコツさえつかめば、どんな人でもスイスイ書けてしまうのである!身近な話題の活用法から、「もしも」ではじめる発想法、NGワード、タイプ別お薦めの本までやさしく丁寧にレクチャー。「読む」「書く」前に必読の指南書。【引用:「BOOK」データベース】  

「だれでも書ける最高の読書感想文」の内容

第1章 きみにも「最高の読書感想文」が書ける!

 読書感想文と言えば、夏休みの宿題を連想します。宿題の中で最も嫌なもののひとつでした。興味を引かれる課題図書がなかったことも原因です。やらされている感が消えません。そんな状況で人に伝わる感想文を書けるでしょうか。

 読書の習慣がないので、読書自体に興味を持てないという根本的な問題もあります。数冊から十数冊の課題図書から選ぶにしても、興味がなければ選べません。何とか読み終えたとしても、宿題のための読書で面白い感想など持てるはずがありません。

 著者は、やらされている感ミッションにすり替えることが重要だと主張しています。同じことをするにしても気持ちの持ち方次第だということです。ただ言葉で言うほど簡単ではない。宿題は宿題に過ぎません。気持ち次第で見え方が変わるのは理解できますが相当に難しい。やらされている感があったとしても、気楽(簡単)に受け止める方が現実的だと思います。

 読書感想文に正解はありません。だからこそ一番難しいと言えます。正解がないから向かうべき道が分かりません。完璧なものを書こうと思わないことが重要だが、何が完璧なものなのかもよく分からないから悩みます。

 読書感想文は自己表現のひとつだと考えれば、ハードルは下がるでしょうか。昔と比べ、自己表現の上手い人が増えています。SNSやyoutubeで情報を発信することに慣れているからでしょう。読書感想文もその中のひとつだと考えれば、あとはテクニックと作法と経験があればいい。主体性を持ってすれば形になるのでしょう。ただ、宿題になっている時点でスタートラインに立ちにくい。 

第2章 もう悩まない!スラスラ書けるようになる方法

 感想文を書くためには、読むから書くへ繋げる一連の流れが重要です。読んでから書く内容を考えるのではなく、書くことを考えながら読みます。書くためには本の内容を十分理解し、記憶に残す必要があります。

 著者の手法として、本に書き込むことを紹介しています。慣れの問題かもしれませんが、なかなか本に書き込むのは躊躇してしまいます。本を読む目的が内容を理解することならば、大事に扱うことが綺麗に扱うことでないのは理解できますが。図書館や借り物の本に書き込みをできないのは当然ですが、自分で購入した本でも私には無理そうです。せめてふせんを使うことくらいでしょうか。方法は人それぞれだし、ふせんでも同様の効果は得られると思います。

 感想文は書き出しが一番難しい。逆に、書き出せば意外と文章は続いていくものです。本を読んで気になったところや心に響いた言葉を箇条書きなどで書き出していくためにも、本に書き込む必要があるのでしょう。何も記録していなければ、どれだけ心に響いても、読み進めれば記憶がぼやけるのはよく分かります。本書は書き出すための作業の仕方が具体的で分かりやすい。箇条書きが多ければ伝えたいことが多いし、逆に少なければ伝えたいことがあまりない。伝えたいことがあるかどうかは感想文を書くのに重要なことです。伝えたいことがない感想文を書くのは難しいし、読むのは苦痛です。

 書き出しのテクニックはこれが全てでないでしょう。ただ、最も導入しやすいことは分かります。大事なことや何故と思うことは、興味のある本なら必ずあるはずです。感想文の入り口が分かれば、あとは組み立てていくだけです。読書感想文の最も難しいところは、最初の一文字です。乗り越えられれば、読書感想文の難関の半分は過ぎたと言えます。

 本を読んで自身の変化を感じたり視点を変えたりすることは、感想文を彩る更なる表現を生み出します。第一歩が最も重要で難しい。書き出しの難しさが、読書感想文嫌いを生み出すのかもしれません。 

第3章 押さえておきたい文章作法と表現のツボ

 人に伝えるためにはテクニックが必要です。人に伝えたいことを伝えるのは難しい。文章に限ったことではなく会話でも同様ですが。美しい文章でなおかつ読みやすい。適切な表現と分かりやすく組み立てられた文章でないと伝わりません。そのための技術を磨くためには経験が必要です。

 我々が書く読書感想文は、プロの作家が書く作品とは違います。かと言って適当に書いていいものではありません。人に読んでもらうという点では同じであり、日記と違い外に向かって発信するものです。感じたことを偽る必要はありませんが、マナーを守らないと人に読んでもらう価値すらなくなってしまいます。どれだけ素晴らしい感想を抱いていたとしても、出来上がった感想文は読むに値しないものになるかもしれません。

 マナーや文体や表現力は、普段から多くの本を読むことで培われます。思いを文章に乗せるためには気持ちだけでは駄目です。表現力がなければ伝わりません。加えて年齢に応じた表現力もあります。年齢を重ねれば表現力が上がるのは経験から来るのでしょう。読書数や今まで書いた文章の量、これまでの他人の評価などが経験になります。

 文章力や表現力は感想文だけに役立つ訳ではありません。社会人になった時の方が必要なスキルです。本を読むことや書くことは、宿題であると同時に人生にとって必須です。それならば楽しまないと損でしょう。 

第4章 キラリと光る感想文の書き方

 人に伝えるためには、相手を惹きつける必要があります。感想文に限ったことでなく、小説やノンフィクションなどの文章や会話も同様です。そのためには表現力が必要であり、それに優れた人は魅力的な人物に映ります。第4章では、そのための方策を具体的に説明しています。感想文を書く上で必須な技術ではありません。あくまで人を惹きつける文章を書くためです。人に読んでもらうからには魅力的な文章を書きたいと思うのは当然です。ただ、使いこなすには経験が必要だと感じます。年に一度本を読み、感想文を書くだけでは決して身に付きません。

 技術も大切ですが、最も重要なのは気持ちです。人に伝えたいという気持ちを持つには、自らが受けた影響も重要な要素です。自分が受けた影響が大きいほど、光る文章を書けるのでしょう。自分がつまらないと感じた本を、人に面白く伝えることはできません。

 自身の考え方、場合によっては生き方すら変える本に出合うことが必要です。そのためには、普段から身の回り・社会に対して意識を向ける必要があります。好奇心を抱き、本と現実を結び付ける。そうすれば、本に書いてあることは生きた血肉になります。伝えたい気持ちが大きくなっていき、光る文章を書きたくなる。そのために提示されている方法は単なるテクニックに過ぎないかもしれません。しかし重要な要素です。

 テクニックだけで人の心は動かせません。しかし、思いだけでも動かせない。両者は光る文章を書く上で分かちがたい要素です。車の両輪のように。第1章から第3までを実践してから、第4章に踏み込むべきだと思います。 

第5章 読書感想文を書くための、失敗しない本選びのコツ

 本を選ぶことは、感想文を書く以前の話ですが重要なことです。まず本(読書)を好きにならなければ感想文を書けません。本を好きになるにはきっかけが必要です。それは自分にとっての良書と出会うことです。ジャンルは関係ありません。運が良ければ1冊目で出会うかもしれない。何冊も読む必要があるかもしれない。ただ読み続ければ必ず出会えると信じることが重要です。

 私は学生の頃はほとんど本を読んでいません。社会人になってからも仕事が忙しく、本を読む時間はありませんでした。ただ、部署が変わったり、会社の環境整備などがあり、残業が減り自由な時間が増えました。お金がかからず時間をつぶせるものとして読書を選びました。ゲームはお金がかかるので。結果として読書が趣味になった訳です。

 これらは言い訳に過ぎないかもしれません。自分にとって読書に使う時間の優先順位が低かっただけです。単に興味がなかっただけ。とてももったいなかったと思っています。

 私が本を読み始めるきっかけになったのは、伊坂幸太郎の「陽気なギャングが地球を回す」です。伊坂幸太郎は有名ですし、彼の作品はとても評価が高い。引き込まれて一気に読みました。そこから芋づる式読書(本書で説明されています)で伊坂作品を読み漁りました。ただ、いくら好きだからと言って同じ作家ばかり読めば、微妙に飽きてきます。そこで他の作家へと対象を広げていくことになりました。

 本を選ぶ時の方法は様々です。映画化やドラマ化された作品などを探せば、興味の沸くものは転がっています。選択肢は星の数ほどあります。ネット環境が充実している現在は、恵まれている環境です。何かきっかけがあれば、誰でも読書好きになれる。

 本を読む=感想文を書く=受験のため 

 そういう数式を刷り込まれて、読書自体の楽しみを知らなかった訳です。まずは読書に対する意識を変える必要があります。本を楽しめれば伝えたくなります。人に勧めたくなります。そして、感想文に繋がっていきます。 

終わりに

 いい感想か悪い感想か別にして、誰でも本を読めば何らかの感想を持ちます。作者が伝えたいことを感じたり、また違う考え方をすることもあるでしょう。読書は不自由なものではありません。そうだとすれば感想文も自由なものです。

 感想文は自己表現のひとつであり伝える手段です。会話のように気楽に考えることもできます。考えすぎると身動きが取れなくなる可能性があります。経験の積み重ねと考え過ぎない気楽さが必要です。

 本書を読んだからと言って、すぐに感想文が上手になるというものではないでしょう。ただ感想文に対する考え方、向き合い方、意識は変わるはずです。有意義な一冊だったと思います。