読書は素晴らしいものです。成長を促すのはもちろんですが、そもそも楽しいし、難しいことでもありません。本書を読むとハッとさせられることが多い。読書は情報を集めるためだけのものではありません。ネットで情報取集することとは全く違うものなのです。
読み方次第で深くなることもあれば、浅くなることもあります。本書は、すでに読書の習慣がある人にも十分参考になります。読書の効能・効果を最大限に引き出してくれます。習慣がない人にとっては、読書がいかに素晴らしいかが分かります。
著者の文章は読みやすい。平易な言葉と文章と伝え方で、読書の習慣がない人にも読みやすいでしょう。
著者には危機感があります。読書人口の減少です。大学生ですら読書時間が「ゼロ」の者が過半数を超えています。私も大学生のころはあまり本を読みませんでした。時間の使い方の中で、読書の優先順位が低かったのです。今思えば、もったいないことをしたと思います。大学生の時間のある時こそ本を読むべきでした。
「読書する人だけがたどり着ける場所」の内容
「本」を読むからこそ、思考も人間力も深まる―
「ネットで情報をとるから本はいらない」という風潮が広がっていますが、それは本当でしょうか?私たちは日々ネットの情報に触れますが、キーワードだけを拾い、まったく深くなっていない、ということも多いのではないでしょうか?
読書だからこそ、「著者の思考力」「幅広い知識」「人生の機微を感じとる力」が身につきます。ネットの時代にあらためて問いたい「読書の効能」と「本の読み方」を紹介します。 【引用:「BOOK」データベース】
「読書する人だけがたどり着ける場所」の感想
深い人・浅い人
- 本質的に物事を捉える人 ⇒ 深い人
- 表層的にしか捉えられない人 ⇒ 浅い人
どちらが魅力的か一目瞭然です。違いは知識だけではありません。SNSやネットで多くのことを知っているだけでは駄目なのです。本質を捉えて理解する力が必要です。知識を総合的に使いこなし、有機的に深いところで結合させていく。情報にも深みが必要であり、知識を深めるための能力を鍛えるのに読書が有効だということです。
SNSやテレビが全く役立たない訳ではありません。問題は深みを探れるかどうかです。表層の下に隠れた深みを身につけることができるかどうか。その力は読書から得られます。教養のある人生は、無い人生に比べ楽しい。
深くなる・浅くなる
深さは認識力です。本を読むことは作家の認識力を得ることです。一流の作家であれば、一流の認識力が手に入ります。認識が深ければ、違う分野での繋がりにも気付きます。表層的に全く関係のないように見える事柄も、根本では共通しているかもしれません。そのことに気付けるかどうかを具体論を交えながら解説しています。
読書の目的は情報を得るとともに人格を形成することです。情報は単なる事実のみではありません。例えば、歴史の事実の背景には人間が存在します。情報と人間の営みを同時に理解することで深みが増します。
読書は映像化する力、すなわちイマジネーションも高めます。文章で描かれた世界を頭の中で想像します。想像は現実でない分、感情を動かします。受け身でなく自身の中から現れたものだからでしょう。
映像化された作品を観ることは分かりやすい反面、想像力を必要としません。完全に否定している訳ではありませんが。多くの本を読み認識力を持っていれば、映像の背景にある深さに気付きます。
作家の目で見ることも重要です。人は自分の目で世界を見ます。完全に他人の視点に立つことは難しい。それでは自己の視点を抜け出せません。読書は、作家の視点に立つことができます。そうすれば自分の視点と違うことに気付きます。繰り返すことで、多くの視点で物事を見ることができるようになります。文化・思想など、世界には多様な価値観があります。
- 文学
- 思想書
- 歴史書
読むことで多様性を知り、深い場所の共通点(普遍性)を知ることができます。世界の全てを直に見ることはできませんが、読書は作家の視点で見た世界を教えてくれます。しかし、好きな作家の作品ばかりを読むことは悪いことではありませんが、世界が狭くなる可能性もあります。そうなってしまうともったいない。
深める本の読み方
次の四つを深める本の読み方があります。
- 思考力
- 知識
- 人格
- 人生
単に読むだけでなく深めるための読み方があります。読書をするなら深めたいし役立てたい。楽しい以上に得るものがあります。思考力を鍛え、知識を得て、人格を育て、人生を意義あるものにします。系統立てて、読書の効果を最大にするための方法を説明しています。分かりやすく実際的にです。
それぞれの項目において名著を紹介しています。育てるために有効な名著ばかりなのでしょう。名前は知っていますが、読んでいないものも多い。読んだ作品もありますが、それぞれの視点を持って読んでいたとは言い難い。目的を持って読むことで得るものは何でしょうか。それは体験するしかないでしょう。読まなければ始まりません。
思考力で10冊、知識で10冊、人格で4冊、人生で6冊が紹介されています。全てを読めれば一番いいですが、少なくとも興味のあるものから始めればいいと思います。余裕があれば興味のないものも。興味のないものでも読み始めれば興味が湧いてくることもあります。
本との出会いのひとつとして、人から紹介されることも重要です。著者の斎藤氏が勧めるからには自信があるのでしょう。難しそうな本も多いですが、読む前から決めつけては始まりません。理解できなくても読み切ることが重要です。必ず何かを得るはずであり、何度読んでも構いません。
読書は誰でもできることであり、特殊な才能は要りません。能力の高い低いよりも、経験の違いの方が大きい。読む本によって経験値の差は出ますが、生まれ持った能力の差ではありません。難しい本を集中力を持って読み切るのは大変なことですが、集中力も鍛えられます。
本物を選ぶことが重要であり、分からないことがあっても当然なので気にしない。本物に触れることと触れ方が重要です。普及の名作には理由があります。挑戦する価値があります。手は出しづらいですが、読むからには本物を読むべきなのでしょう。
終わりに
本書は読みやすく分かりやすい。一方、紹介されている書籍は難しいものが多いので読書の習慣がない人にとってはハードルが高いかもしれません。著者は読書の効果に期待しています。そのための目的と方法論です。
しかし、読書は単に楽しいものだと認識することも大事だと思います。まずは読むことから始めることが重要であり、それなら読みやすくて楽しいものから始めればいい。読み始めること自体を目的にします。読書の習慣がない人が、本書を読んでくれるかどうかの問題もありますが。