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『ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジング』:川原 礫【感想】|セントラル・カセドラルを駆け上がる

 エルドリエ・シンセシス・サーティワンを退け、デュソルバート・シンセシス・セブンの矢から何とか逃れたキリトたちが飛び込んだ大図書室。大図書室に住まう少女「カーディナル」との邂逅で前巻は終わりました。彼女の正体は少しだけ明かされています。

 本巻の前半は、カーディナルから告げられる現在のアンダーワールドの姿です。後半は、大図書室からセントラルカセドラルの最上階へ向け、駆け上がります。立ち塞がる整合騎士たちと剣を交え、闘い続ける戦闘シーンが続きます。これまで描かれてきた戦いとは次元が違います。整合騎士とキリトたちの戦力の差は圧倒的なのですが、その差を埋められるのかどうか。都合の良い展開も溢れだしそうですが。 

「ソードアート・オンライン12」の内容

幼少の頃から追い求めた少女・アリスとついに再会したユージオ。しかし、そのアリスに、昔の―“ルーリッドの村”時代の面影は無かった。禁忌目録を破ったキリトとユージオを捕らえるために来たというアリス。彼女に幼少の記憶は無く、そして自身を“整合騎士”と名乗った。“公理教会”の象徴“セントラル・カセドラル”の地下牢に繋がれたキリトとユージオだが、キリトの機転でどうにか脱出を果たす。キリトが“外部”の人間であることを見抜いた謎の少女・カーディナルの助けをかり、二人はアリスを“本当の姿”に戻すため、塔の頂点を目指す!しかし、“シンセサイズの秘儀”により生まれた最強の戦士たちが、キリトとユージオの前に立ちはだかる―。【引用:「BOOK」データベース】

「ソードアート・オンライン12」の感想

ーディナルと現実世界  

 前巻の最後に登場したカーディナルと名乗る少女。カーディナルという名前に懐かしさを感じます。アインクラッドで世界を支配していたプログラムです。茅場が作り出したシステムなので、キリトたちの敵として描かれていました。アインクラッドでユイを消去しようとしたのもカーディナルシステムです。

 それが少女の外見を伴い登場してきます。自身のことを調整者としてのプログラムと言い、存在意義はアインクラッドでのカーディナルと同じなのでしょう。違うのは調整する世界の違いです。世界の違いがカーディナルの立場を変えます。アドミニストレータを敵(悪)と位置付けるなら、カーディナルは味方(善)になります。味方だから少女という外見を伴い、いかにも味方らしい存在にしてしまう。安直な設定に感じてしまう部分もありますが。

 少女と言えど、キリトの周りには女性が付き纏います。カーディナルが女性である必要性は感じませんが、少女を使うのが著者らしいしラノベらしい。クィネラが自身の記憶の複写のために呼び寄せたのが少女だったからですが。

 カーディナルは単なるプログラムです。組まれたプログラムに従い行動する。アドミニストレータを倒すことも、カーディナルのプログラムから発生した目的です。その目的がキリトたちの目的と重なる部分があるので、カーディナルとキリトたちが同列になり人間的に見えてきます。人間の感情を知りたいという欲求を抱えたことも人間的に見せる要因です。人間的欲求と単に知りたい欲求の境目を曖昧にし、カーディナルを人間として見せています。単なる調整プログラムに感情的要素を見せることで、人工フラクトライトの人間性を更に際立たせる意図もあるのかもしれません。

ージオとキリトの目的

  キリトの目的は、セントラル・カセドラルの最上階にあるであろう端末から現実世界にコンタクトを取りログアウトすることです。そのために2年間の旅路を続けています。明確な目的ですが、方法論としては曖昧です。最上階にあるであろう端末を求めてなので、他に取るべき方法がないというところです。カーディナルとの邂逅でアンダーワールドの未来を知り、新しい明確な目的が加わります。アドミニストレータを倒すことです。

 カーディナルの目的は、更にアンダーワールドを無に帰すこと。キリトはアンダーワールドを平和に存続させることを望みます。カーディナル以上の使命を自らに課すことになります。ただ、目的がはっきりしたことでキリトの行動は分かりやすくなった。やるべきことが分かった時の彼の行動は素早い。ようやく仮想世界のキリトらしい雰囲気を纏ってきた気がします。

 一方、ユージオの目的が揺らぐことはありません。アリスをルーリッドに連れ戻すことにブレはありません。整合騎士として記憶のないアリスが登場しても、彼は諦めない。記憶を取り戻す必要が加わったため、連れ戻すための難易度は上がっています。ただ、アリスが記憶を失った理由を知った時、ユージオの感情に憎しみが生まれます。公理協会と最高司祭に不信を持ち、整合騎士に憎しみを持って戦いを挑みます。憎しみを覚え禁忌目録に縛られないユージオは、菊岡たちが求めた人工フラクトライトの姿かもしれません。アリスよりも求められる存在に見えます。キリトがユージオたちに人間性を求めることは、人間の負の部分を求めることになるのだろうか。 

合騎士と対等?

 大図書館から出て、整合騎士が待ち受けるセントラル・カセドラルを駆け上がります。アリスとの邂逅までに、8人の整合騎士と戦うことになります。 

  • デュソルバート・シンセシス・セブン
  • リネル・シンセシス・トゥエニエイト
  • フィゼル・シンセシス・トゥエニナイン
  • 四旋剣
  • ファナティオ・シンセシス・ツー 

 8人の整合騎士を打倒しアリスに到達します。リネルとフィゼルは整合騎士ですが、ちょっと毛色が違います。四旋剣は整合騎士ですが個々の名前すら登場していないので影が薄いですが、デュソルバートとファナティオは整合騎士の中でも古参です。最も新米のエルドリエ・シンセシス・サーティワンに全く歯が立たなかった(剣を持っていなかったとは言え)2人が対等に戦えるとは思えない。しかし、苦戦しながらも勝ち続けます。

 武装完全支配術を使っているデュソルバートの攻撃に対し、キリトの神聖術で作った氷の盾が僅かながら勢いを弱める。それだけでも無理がありますが、剣を風車のように回して防ぐのは無理が有り過ぎて唖然とします。通常攻撃ならまだしも、武装完全支配術に対して通常防御で対抗出来るのは違和感があります。キリトの剣が神器級だとしても、当然デュソルバートの弓も神器級です。2対1の戦いとは言え、あっけなく決着がつき過ぎます。

 ファナティオ・四旋剣との戦いも同様です。四旋剣も整合騎士のはずなのに、雑魚キャラ扱いも甚だしい。4人セットでの攻撃をキリトに簡単に躱されてしまいます。しかも、ファナティオとの戦闘が始まると見ているだけです。ファナティオとの連携もありません。ユージオの武装完全支配術で氷漬けにされ、そのまま退場です。ファナティオとの戦いも、相当に苦戦しているが同等以上の戦いを繰り広げています。いつの間にこんな強さを身に付けていたのだろうか。予定外の時期にセントラル・カセドラルに連行されています。準備不足も甚だしいはずです。それにも関わらず勝ち続けます。キリトとユージオの強さの根拠がよく分かりません。彼らが負けると物語は進みませんが。  

ーティなのに特別

  名前からも分かるようにアリスは30番目の整合騎士です。しかし、ファナティオがキリトとの戦いの最中に明かしたように、整合騎士の中でも特別な存在です。その強さは、ファナティオすらも圧倒しているようです。アリスに金木犀の剣が与えられていることからも分かります。

 ただ、アリスがここまでの強さを誇るようになった理由がよく分かりません。アリスが連行されてから8年です。ファナティオが整合騎士として生きてきた年数とは比べ物にならないが、アリスはユージオの武装完全支配術すら容易く破ってしまいます。ファナティオですら相当に苦しめられたはずなのに。一体、何がアリスをそこまでの存在にしたのだろうか。いずれ明かされていくのかもしれないが、現段階では理解し難い。見た目の美しさは持って生まれたものなので構わないですが。

 キリトとアリスはセントラル・カセドラルの外に放り出され、ユージオと別行動になってしまいます。アリスとキリトの2人が距離を縮めていくのは容易に想像出来ます。ユージオとキリトは、アリスを挟んで微妙な関係になるのだろうか。キリトとユージオがいずれ戦うことを匂わせるような文章もあります。 

終わりに

 大図書室の静けさから一転、戦闘シーンの連続です。剣を交え戦う緊張感とスピード感は、SAOの真髄発揮というところでしょうか。キリトのチート級の強さが相変わらず際立ってしまいましたが。

 キリトとユージオが離れてしまったことにより、ふたつの軸で物語が展開していくことになります。どちらの展開も気になるところですが、次作はどうなるのだろうか。

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