最終負荷実験がついに始まります。人界軍 VS ダークテリトリー軍の戦いは、守備と侵略の戦いです。アンダーワールド全体を舞台にした全面戦争は、ダークテリトリー軍による一方的な虐殺になるのでしょうか。アドミニストレータがソードゴーレムを作ったのは整合騎士だけではダークテリトリー軍に対抗できないからです。それほど彼我の力の差があると考えていました。
アドミニストレータの死は人界の敗北を意味することと同義だと思われます。一方的な戦いになってもおかしくない。人界軍の限られた軍勢と圧倒的な物量のダークテリトリー軍の戦いは勝負にならないかもしれません。
整合騎士長ベルクーリも、一整合騎士に過ぎません。スーパーアカウントでダイブしたガブリエル(闇神ベクタ)に対抗できるとは考え難い。人工フラクトライトが現実世界の人間より劣っていると考えたくはありませんが。
ダークテリトリー軍も人工フラクトライトですが、彼らは命令に従い行動するだけです。一方、人界軍は個々がそれぞれに役割を果たそうとします。ダークテリトリー軍50,000は駒に過ぎませんが、人界軍はそれぞれに使命を抱きます。二つの勢力の行動原理は根本的に違います。人界軍5,000 VS ダークテリトリー軍50,000の戦いの緒戦は一進一退で推移することになります。
「ソードアート・オンライン16」の内容
暗黒神ベクタことガブリエル・ミラー率いる侵略軍50,000に対するは、整合騎士ベルクーリ率いる人界守備軍5,000。“天穿剣”ファナティオをはじめとする整合騎士は、数的劣勢を跳ね返すべく奮闘を続けるが、敵軍・山ゴブリン族は奸計を用いて防衛線をすり抜け、彼方の補給部隊を狙う。心神喪失状態のキリトを守る少女練士ロニエとティーゼに危機が迫る。更に、侵略軍一の奸智を誇る暗黒術師ギルド総長ディー・アイ・エルもまた、恐るべき大規模術式によって守備軍の殱滅を図っていた…。そしてアンダーワールドへログインしたアスナの行方は―!【引用:「BOOK」データベース】
「ソードアート・オンライン16」の感想
開戦
最終負荷実験は、東の大門の崩壊から始まります。劇的な崩壊の仕方は大戦の始まりに相応しい。崩壊(開戦)までのカウントダウンが緊迫感を増します。ダークテリトリー軍は一枚岩ではありません。闇神ベクタの存在が、仮の一枚岩を作っているに過ぎません。ベクタという絶対的な強さを誇る存在がダークテリトリー軍を掌握し、行動させています。
人界軍は、騎士長ベルクーリとともに迎え撃つことになります。恐怖によって掌握された軍ではありません。各々が最大限の役割を果たすことを考え行動します。崩壊の瞬間が分かっているだけに、それぞれが役割を自覚し対応することが重要です。物量で勝るダークテリトリー軍の押し出しに対し、人界軍は作戦で対抗します。役割を理解し行動するためにも自身の力を最大限に引き出します。命令に従うだけでは最大限の力を発揮できないでしょう。
崩壊に至るまでの時間の使い方で、開戦後の趨勢が決すると言えます。あくまでも開戦後の第一陣の趨勢であり、その後の展開は読めません。
- アリスの存在
- ベルクーリの時穿剣
人界軍の戦いは開戦前に始まっています。5,000 VS 50,000を拮抗させるには、開戦前の作戦次第です。開戦前の緊張感と開戦直後の混乱の対比に引き込まれます。
戦いの中の成長
整合騎士は上位整合騎士と下位整合騎士に区分されています。同じ整合騎士でありながら、四旋剣の扱いが低かったことに納得します。下位整合騎士が戦死していくことで、整合騎士の強さも完全なものではないと分かります。逆に、ダークテリトリー軍の強さも示されます。
- ファナティオ・シンセシス・ツー
- デュソルバート・シンセシス・セブン
- エルドリエ・シンセシス・サーティワン
上位整合騎士である3人も苦戦を強いられます。1 対 多の戦いは、彼らの強さを発揮できません。また、新たに登場した上位整合騎士レンリ・シンセシス・トゥエニセブンの精神的な弱さはあまりに人間的です。整合騎士だからと言って、全員が精神的な強さを誇る訳ではない。
彼は整合騎士として失敗作なのでしょうか。彼は戦いの中で成長していきます。成長することが、本来人間であった証拠かもしれません。エルドリエの行動も人間だからです。情勢は優位でも劣勢でもなく拮抗しています。だからこそ紙一重の差で戦局が動いていき、戦いに参加するものに成長を促します。
ダークテリトリー軍の分裂
ベクタがダークテリトリー軍を統率し維持しています。人界への侵略は全種族の望みですが、究極的には自種族だけが利益を得られればいいと考えています。山ゴブリンと平地ゴブリンの確執は、このことを表しています。暗黒術師ディー・アイ・エルの策略で犠牲となるオーク族を見ていても、ダークテリトリー軍全体の利益のために行動している者は見当たらない。ベクタの存在で表面上は統率されていますが、内実はいつ崩壊するか分からない状態です。オーク族の憎悪は人界でなく暗黒術師へ向かい、命令を下したベクタへと行き着きます。
一方、拳闘士ギルド イスカーンのように侵略の手段である闘い自体が目的の者もいます。闘いの中に自身の価値を求める彼にとって、ベクタの命令は闘い自体を愚弄し、彼らの存在価値を否定します。イスカーンもベクタに対し憎悪を抱き始めます。暗黒騎士も拳闘士ギルドと同じ扱いを受けることによって、ベクタへの忠誠心は薄まります。
ベクタにとって駒にしか過ぎないダークテリトリー軍は、個々の命と精神を踏みにじられます。彼らも人工フラクトライトであり魂を持っています。人界軍と変わらないし、現実世界の人間とも変わらないかもしれません。ベクタが統率しているダークテリトリー軍が、ベクタの命令によって分裂し崩壊していきます。
現実世界とアンダーワールド
ガブリエルとヴァサゴに続き、アスナもアンダーワールドにダイブします。アンダーワールド大戦は、ガブリエルとヴァサゴの動向で大きく動いてきました。アスナが参戦することで、どのように戦況が変わるのでしょうか。キリトは当分復帰しそうにありません。
スーパーアカウントのガブリエルと同様に、アスナもスーパーアカウント「創世神ステイシア」でダイブします。圧倒的な力を持つスーパーアカウントですが制限も多い。制限なしではバランスが保てないのでしょうが、スーパーアカウントにしては物足りない気もします。ベクタの本当の力はまだ明かされていません。創世神ステイシア以上の力を持つスーパーアカウントなのかもしれません。アスナの力を見ても動揺しないベクタに不気味さを感じます。
ガブリエルにとってアンダーワールド大戦は、作戦の一側面に過ぎません。目的はアリスを奪取することであり、そのためにアンダーワールドにダイブしています。アスナたちは、アリスの保護・アンダーワールド人の保護・キリトの復活とやるべきことがあります。目的が多いことが後手に回ってしまう理由かもしれません。
アスナのスーパーアカウントで一時的に戦況は拮抗します。現実世界の遅れが、アンダーワールドでの危機を招きます。戦況は芳しくありません。
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