晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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ヒューマンドラマ

『チルドレン』:伊坂幸太郎【感想】|俺たちは奇跡を起こすんだ

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「チルドレン」の感想です。 各話は独立した物語として完結しています。しかし、どの話にも登場する人物が一人います。彼は、各話において主人公ではないのですが最も重要な人物です。 それが「陣内」です。 彼が、大学生…

『また、同じ夢を見ていた』:住野よる【感想】|心が満たされて温かい気持ちが溢れだす

読後に感じるのは、「心が何かに満たされて温かい気持ちになる」ということです。主人公の小学生・小柳奈ノ花が、授業の宿題である「幸せと何か」を考える物語です。 「また、同じ夢を見ていた」の内容 「また、同じ夢を見ていた」の感想 奈ノ花 奈ノ花の口…

『銀翼のイカロス』:池井戸 潤|シリーズ史上、最大最強の敵に挑む

「半沢直樹」シリーズの第4作目です。今までのシリーズの中では一番スケールが大きく、手に汗握る展開に引き込まれました。前作の「ロスジェネの逆襲」では、バブル世代の半沢とロスジェネ世代の森山の両方の活躍を描いていました。そのため半沢の存在が薄…

『ロスジェネの逆襲』:池井戸 潤|失われた世代とバブル世代が世代間の確執を乗り越える

「半沢直樹」シリーズの第3弾です。前作「俺たち花のバブル組」の最後で出向させられた半沢の活躍を描いた作品です。3作目になると、どうしてもマンネリ化を隠し切れない感じがします。この小説の基本的なスタンスは「勧善懲悪」です。敵や戦いの舞台が変…

『終の住処』:磯﨑憲一郎|言いたいことは何だったのか。よく分からない。

第141回芥川賞受賞作です。30歳を過ぎて結婚した夫婦の20年間を描いた作品。20年間という長い期間を描きながら、あまり時間の経過を感じませんでした。何だか時間が一定のスピードで進んでいないと感じる小説です。 「終の住処」の内容 「終の住処」の感想 …

『下町ロケット』:池井戸 潤|最後まで諦めなければ夢は叶う

読み始めると止まらない。一気読みでした。ドラマを先に見ていたので、ストーリーは分かっていました。それでも面白い。ドラマは、ほぼ原作に忠実に再現されていたように感じます。 同じ池井戸潤の作品でも、半沢直樹と比べられることが多いです。半沢直樹の…

『影裏』:沼田真佑|色彩豊かな自然が現実の切なさを際立たせる

第157回芥川賞受賞作です。主人公である今野の日常を、時間の経過とともに淡々と綴っていく。そんな小説です。淡々と語っているに過ぎないような小説であったとしても、著者には明確な意図があって作られた小説であることには間違いありません。ただ、多くの…

『ちょっと今から仕事やめてくる』:北川恵海【感想】|追い詰められた時、逃げると言う選択肢を選べるだろうか

ブラック企業に勤める青山 隆が主人公。タイトルが「ちょっと今から仕事やめてくる」。タイトル通りの内容で、特に意外性もなく、淡々と読み進み、あっという間に読み終わってしまいました。テーマは、とても深いです。社会問題となっているブラック企業で働…

『異類婚姻譚』:本谷有希子|オカルトのような結末に、理解が追い付かない

主人公の「サンちゃん(妻)」が、夫とそっくりの顔になっていくところから始まります。夫婦間の関係性を描いた作品なのかな、と思いつつ読み進めていきました。結末に至ると「もしかしてオカルト?」なのかな、と感じます。読後は、ボンヤリとした気持ち悪…

『1973年のピンボール』:村上春樹【感想】|僕は探す。3フリッパーのスペースシップを。

前作「風の歌を聴け」の続編です。この後に発表される「羊をめぐる冒険」と併せて鼠3部作とも呼ばれています。前作は、1970年の夏が舞台でした。「1973年のピンボール」は、タイトルどおり1973年の9月から11月までの物語です。 登場人物は「僕」と「鼠」の…

『告白』:湊かなえ|一体、誰が救われたのか。そこに救いはあったのだろうか?

ひとつの事件を、5人の視点から描く小説です。この手法は、宮部みゆき氏の「模倣犯」を思い出させます。「模倣犯」と同じく、事件の概要と犯人は最初に語られます。犯人捜しのミステリーではなく、復讐劇とそれに関わった人々の心象の物語です。被害者と加…

『風の歌を聴け』:村上春樹|「僕」と「鼠」の物語が始まる

村上春樹氏が、1979年に発表したデビュー作です。村上氏は独特の感性や文章表現で、他の作家とは一線を画しています。その感性が、このデビュー作において既に確立されているように感じました。ただ、著者は、「自身が未熟な時代の作品」と評価しているよう…

『死んでいない者』:滝口悠生|通夜の一晩が永遠のようでありながらも淡々と過ぎ去っていく。

第154回芥川賞受賞作です。「死んでいない 者」は、生きている人のことを言うのだろうか。それなら、この小説の中では通夜に集まった人々のことになります。「死んで いない者」と読むと、85歳で大往生を遂げた故人ということになります。 おそらく両方の意…

『Op.ローズダスト』:福井晴敏|臨海副都心で交錯する彼らの宿命

福井晴敏は好きな作家ですし、文庫3冊に及ぶ長編なので期待して読み始めました。読み終わった感想は「とにかく長かった」(どちらかと言うとあまりいい意味ではなく)というものでした。超長編を最後まで読み込ませるには、余程の力量が必要だと実感しまし…

『空中ブランコ』:奥田英朗|あの伊良部一郎が再び!相変わらずのムチャクチャ精神科医

伊良部一郎シリーズの第2弾です。前作の「イン・ザ・プール」は、かなり笑わせていただきました。この「空中ブランコ」も前作に負けず面白かった。伊良部一郎は、前作よりもかなり活動的になっていました。今回は診察室から飛び出して、周りを振り回します…

『スクラップ・アンド・ビルド』:羽田圭介|コミカルに描いているが老人介護を真剣に考えざるを得なくなる

第153回芥川賞受賞作です。又吉直樹氏「火花」と同時受賞により、ちょっと影が薄くなってしまった気がします。 「超高齢化社会」と「老人介護」という現代社会の喫緊の課題を扱った小説でありながら、あまり悲壮感漂う作品ではありません。どちらかと言えば…

『しんせかい』:山下澄人|淡々と描かれる日記のような小説。芥川賞の理由はどこに?

第156回芥川賞受賞作。著者である山下澄人氏は、倉本 聰氏主宰の富良野塾の第2期生です。「しんせかい」は、山下澄人氏が富良野塾第2期生として過ごした1年間を記した自伝的小説と位置付けられるでしょう。 「しんせかい」の内容 「しんせかい」の感想 小…

『流』:東山彰良|青年の成長と家族のルーツが交錯する

第153回直木賞受賞作です。芥川賞を受賞したピース又吉さんに注目が集まってしまい、羽田圭介さんとともにちょっと印象が薄くなってしまった感じがします。しかし、「流」は重厚で読み応えがあり心に響きます。読後に、表紙カバーの山東省の荒涼とした風景を…

『イン・ザ・プール』:奥田英朗|ハチャメチャ伊良部に振り回される?

とにかく面白かった。通勤中の電車の中で読んでいたのですが、顔が笑っていたかもしれません。変な人に思われたかも・・・。 5つの短編からなる物語で、一話完結で読みやすい。悩みを抱えた5人の患者と、とんでもなく変な精神科医のドタバタ劇に引き込まれ…

『沈まぬ太陽(会長室篇)』:山崎豊子|恩地の果てなき闘いが終わる・・・

「沈まぬ太陽(会長室篇)」の内容 「沈まぬ太陽(会長室篇)」の感想 善と悪 単純に区分していいのか 終わりに 「沈まぬ太陽(会長室篇)」の内容 「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営。御巣鷹山の墜落は、起こるべくして起きた事故だ…

『沈まぬ太陽(御巣鷹山篇)』:山崎豊子|決して風化させてはいけない

「沈まぬ太陽」は、取材に基づいた事実と創作が入り混じった小説です。「御巣鷹山篇」は、昭和60年に起こった日本航空123便墜落事故であることは明らかです。主人公の恩地のモデルとなった小倉寛太郎は、この墜落事故には関わっていません。彼をモデルにした…

『沈まぬ太陽(アフリカ篇)』:山崎豊子|果てに流され続けても、屈せず耐え抜く男

「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、 各機関・組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである」 「事実に基づき、小説的に」という言い方が微妙です。事実に基づいているが、創作されている部分もあるということでしょうか。た…

『希望の国のエクソダス』:村上 龍|もはや日本に希望はないのか。そして、これが希望の国なのか。

「希望の国のエクソダス」の内容 「希望の国のエクソダス」の感想 時代背景が重要 期待度は高かった 終わりに 「希望の国のエクソダス」の内容 2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使…

『オレたち花のバブル組』:池井戸 潤|敵が強大だからこそ、倍返しが冴える

「オレたち花のバブル組」の内容 「オレたち花のバブル組」の感想 善と悪の明確化 交錯する思惑 隠された陰謀 終わりに 「オレたち花のバブル組」の内容 「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。巨額損失を出した一族経営の老舗ホテルの再建を押し…

『オレたちバブル入行組』:池井戸 潤|銀行内の闘争は凄まじい

「オレたちバブル入行組」の内容 「オレたちバブル入行組」の感想 ドラマと重なる 爽快感とともに 終わりに 「オレたちバブル入行組」の内容 大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が…

『神々の山領』:夢枕 獏|未踏に命を懸ける男

「神々の山領」の内容 カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と…