晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

ーおすすめ記事ー
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2018-01-01から1年間の記事一覧

『空飛ぶタイヤ』:池井戸 潤|巨大な企業に戦いを挑む

物語の発端となる事故。事件と言ってもいいかもしれません。走行中のトラックのタイヤが外れ、そのタイヤの直撃を受け母親が死亡し子供が軽傷を負う。この事故を聞き、多くの人がある事故を思い浮かべるはずです。2002年1月10日に横浜で起きた痛ましい事故で…

映画「ハーモニー」を観た

こんにちは。本日は、伊藤計劃氏原作小説の映画「ハーモニー」の感想です。 小説が映画化された時、最も頭を悩ませるのがどちらを先に読む(観る)べきか。ハーモニーは、その悩みをずっと引きずっていました。小説も映画もかなり前から所持していましたが、…

『i』:西 加奈子|この世にアイは存在しません。

読後には、何とも表現し難い感情が心に残りました。感動と一言で言えるほど、単純な気持ちではない気がします。では、感動でなければ何なのか。結末に対する喜びでもなく、納得でもなく、考えさせられるということでもない。主人公のアイに対する純粋な共感…

『夢見る黄金地球儀』:海堂 尊|黄金地球儀を巡るドタバタ劇

海堂尊と言えば「医療ミステリー」を思い浮かべます。現役医師である海堂尊だからこそ描ける作品です。「夢見る黄金地球儀」は、医療から離れ、黄金地球儀を盗むドタバタコメディ劇と言ったところでしょうか。ドタバタ感とコメディ感が、やたらと目立ちます…

『すべての教育は「洗脳」である』:堀江貴文

過激で挑戦的なタイトルが、いかにも堀江貴文らしい。ホリエモンが「教育」とりわけ「学校教育」について、独自の視点と考え方を書いています。内容に共感するかどうかは別にして、とても面白い。こういった考え方や背景があったのか。ホリエモンの言葉は、…

定期「2018年5月(皐月)」の読書本

GWから始まった5月。過ごしやすい季節から、徐々に蒸し暑くなっていく予感を感じる日々でした。5月の読書本は、8作品です。GWは遊んでばかりいたので、あまり読書せず。中旬以降から、本格的に読み始めた印象です。それでは、5月の自分勝手なおすすめ度…

『ハーモニー』:伊藤計劃【感想】|理想郷に倦んだ少女たちは、世界の終わりを夢見た

こんにちは。本日は、伊藤計劃氏の「ハーモニー」の感想です。 数少ない伊藤計劃の長編のひとつです。「屍者の帝国」を彼の長編にカウントしなければ、「ハーモニー」が最後の長編作品ということになります。彼独自の世界観により設定された近未来を舞台に、…

2010年本屋大賞の受賞作

2009年11月〜2010年4月にかけて実施された第7回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『天地明察』冲方丁 【得点:384.5点】 2位 『神様のカルテ』夏川草介 【得点:294.0点】 3位 『横道世之介』吉田修一 【得点:270.0点】 4位 『神去なあなあ日常』三浦し…

『SOSの猿』:伊坂幸太郎【感想】|サルが跳び、アクマが笑う。

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「SOSの猿」の感想です。 「私の話」と「猿の話」のふたつの物語で構成されています。共通点もなく、交わらないふたつの物語が最終的にどのように関係していくのか。きっと意表を突きながらも、納得できる結末を用意して…

『ブラックペアン1988』:海堂 尊|医者の資質とは何なのか

嵐の二宮和也主演でドラマが放映されています。過去に読んだことがあるのですが、ドラマ放映をきっかけに再読しました。何故なら、残っていた小説の記憶とドラマでは、登場人物たちにかなり違いがあるなとおぼろげに感じたからです。何となく違和感を感じて…

『螺鈿迷宮』:海堂 尊|桜宮一族が抱く闇とは何なのか

「螺鈿迷宮」では、終末期医療と死亡時医学検索がテーマです。死亡時医学検索は、著者にとって重要なテーマです。現在の日本は死因不明社会だと断言しているからです。死因究明を果たさせない医療システムに未来はない。著者が抱いている危惧でしょう。ミス…

『深夜特急6 南ヨーロッパ・ロンドン』:沢木耕太郎|ワレ到着セズ

旅は、イタリアに入ります。ヨーロッパに入り、いよいよ旅の終わりを実感しつつ先へ進んでいきます。第5巻でアジアの旅に思いを馳せ、二度同じ旅が出来ない喪失感を感じています。旅の目的地ロンドンが近づくにつれ、達成感からは程遠い感情が襲ってくる。…

『冷たい校舎の時は止まる』:辻村深月|誰かの意識(頭)の中に閉じ込められる

今、最も注目されている作家の一人である辻村深月のデビュー作。文庫で上下巻、1,000ページ以上の長編です。デビュー作とは思えないくらいの完成度の高いミステリー小説だと思います。 雪が降りしきる学校の中に閉じ込められた8人の生徒。閉じられた世界の…

『仕事は楽しいかね?』:デイル・ドーテン

「仕事は楽しいかね?」 こう問われれば、多くの社会人がドキッとする。そんなタイトルです。だから目を引き、読んでみようと思いました。私は、仕事を楽しいと感じていません。かと言って、辛くて仕方がないと感じている訳ではありません。朝起きて、仕事に…

映画「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」を観た

ツィッターを見ていると、かなりの確率で高評価されている「フロリダ・プロジェクト」。高評価というよりも超高評価ばかりな気がします。そこまで評価されている映画なので、あまり事前情報はなかったのですが見に行きました。 アメリカの貧困層にいる母子の…

『桜風堂ものがたり』:村山早紀【感想】|本と読み手を繋ぐ書店員の物語

読後は、とても優しく満たされた気分になります。書店と書店員の物語。しかし、単なる職業小説ではありません。本に向き合う書店員たちの暖かくひたむきな思いと、彼らの心の交流を描いています。彼らが本を愛する気持ちが、ひしひしと伝わってきます。本を…

『あるキング』:伊坂幸太郎【感想】|Fair is foul , and foul is fair

こんにちは。本日は、伊坂幸太郎氏の「あるキング」の感想です。 著者は、作品が文庫化する時に加筆・修正することがあります。前回読んだ「モダンタイムス」もそうでした。「あるキング」も、雑誌連載時・単行本・文庫とそれぞれに加筆修正されてます。 単…

定期「2018年4月(卯月)」の読書本

桜の季節。入学や就職などで、多くの人の環境が変わる慌ただしい時期です。4月の読書本は、8作品でした。春の暖かさの中、のんびりと読書していた気がします。ラノベ・時代物など、いろいろです。それでは、私の勝手なおすすめを。 おすすめ度★★★★★ つばさ…

『謎解きはディナーのあとで』:東川篤哉|執事が解き明かす事件の謎

2011年の本屋大賞受賞作。1話完結の短篇集で、第6話まであります。殺人事件を捜査するミステリー物ですが、本格的なミステリーを期待して読むと肩透かしを食らいます。 主要登場人物は「宝生麗子」と上司の「風祭警部」、麗子の執事兼運転手「影山」です。…

2009年本屋大賞の受賞作

2008年11月〜2009年4月にかけて実施された第6回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『告白』湊かなえ 【得点:411.0点】 2位 『のぼうの城』和田竜 【得点:328.0点】 3位 『ジョーカー・ゲーム』柳広司 【得点:243.5点】 4位 『テンペスト』池上永一 【得…

『世界を変えた10冊の本』:池上 彰

テレビで見ている池上彰さんの解説は分かりやすい。分かりやすい上に物腰が柔らかく上品で、それでいて主張すべきことはきちんとする。今、最も充実しているジャーナリストの一人だと思います。その池上彰さんの本を読むのは初めてです。 本のタイトルの通り…

『忘れられた巨人』:カズオ・イシグロ|記憶を取り戻した二人を待ち受けるものは・・・

カズオ・イシグロ氏の小説を読むのは、「日の名残り」に続き2作目となります。舞台は「日の名残り」と同じくイギリスですが、時代も背景も全く違います。この作品はファンタジーの要素が強い。 時は6世紀頃。伝説のアーサー王の死後のイギリス。まだ、彼の…

『将棋の子』:大崎善生|将棋は彼らに何を与え、何を奪うのか。

藤井聡太棋士の影響で注目を集めている将棋界。光の当たる表舞台で活躍する棋士たちの陰には、多くの夢破れた若者たちがいます。奨励会というプロ棋士になるための競争の中で敗れ去り、消えていった若者たちの闘いとその後の人生を描いたノンフィクション小…

映画「レディ・プレイヤー1」を観た

原作の「ゲームウォーズ」は未読です。原作との比較は出来ないので、純粋に映画だけの感想です。ネットやツイッターなどでは、この映画を高く評価している人が多いように感じました。高評価の上、スピルバーグ作品ということもあり期待度は大きい。 VRワール…

『甲賀忍法帖』:山田風太郎|伊賀と甲賀。闇に蠢く忍術の数々。

以前から読みたい本の一冊でした。初出が1958年と言うのが信じられないほど、面白い。60年近く経っていても、色褪せない。 伊賀と甲賀の忍者の戦い。 10対10の団体戦。 忍者同士の戦いで想像するのは、お互い鍛え上げた忍法を駆使し、その技量を持って勝敗を…

2008年本屋大賞の受賞作

2007年11月〜2008年4月にかけて実施された第5回本屋大賞の受賞作一覧です。 大賞 『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎 【得点:509.5点】 2位 『サクリファイス』近藤史恵 【得点:312.0点】 3位 『有頂天家族』森見登美彦 【得点:280.5点】 4位 『悪人…

『深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海』:沢木耕太郎|旅の終わり方を考え始めなければならない

第4巻「シルクロード」は、とにかく移動に次ぐ移動ばかりでした。その国々の深層にまで踏み込むほどの熱意や興味をあまり感じていないようでした。著者の比較対象は、香港になってしまっているようです。香港のような興奮を感じさせてくれない場所には惹き…

『つばさものがたり』:雫井脩介|レイの翼が小麦に届く

久しぶりに泣きそうになった一冊でした。天使と妖精のハーフの「レイ」。レイの姿が見え会話ができる叶夢。ファンタジー小説かなと思わせます。しかし、主人公の君川小麦に降りかかるのは、乳がんという現実的な苦しみ。夢であったケーキ屋を開店するも客足…

『ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット』:川原 礫|過去に囚われた三人が向かう先は・・・

ファントム・バレットの後半で、物語の終結です。キリトとデス・ガンの過去の因縁。シノンの心の闇。仮想世界と現実世界は必ずしも別の世界でなく、深く繋がりあっていて、それぞれに影響を及ぼしている。そのことがとてもよく伝わってきます。それは、心の…

『ソードアート・オンライン5 ファントム・バレット』:川原 礫|仮想の弾丸が現実の死をもたらす

第1巻から第4巻まで続いた「剣の世界」。第4巻で、アインクラッドから続く一連の事件に終止符が打たれました。アインクラッドからフェアリィ・ダンスへと話が進むにつれ、緊迫度が下がった印象があります。以前も書きましたが、「ログアウトできない」「…